裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

土曜日

ショーウインドー欲すればまず馬を射よ

 タイトルに意味はない(最近、このフレーズ使った日記が増えたような……)。朝7時半起床。小雨。風邪はさのみ重っておらぬが、気圧のせいで体調極めて悪し。それでも朝食に札幌から送ってきたレバーペーストを塗ったトースト、半熟卵、ミカン(皇室御用達のものだとか)を食べる。クスリは小青竜湯、麻黄附子細辛湯、百草胃腸薬、アリナミンA。

 朝、週刊アスキー一本(五枚弱)書き上げる。書きながらいろいろ発見あり、最初の目論見とはだいぶ異なったものになって面白かった。書き上げて一時、小雨の中を古書会館に出かける。階段を登るとき、左足、ちょっとツる。戦前の狩猟の本でいいものがあったが、いろいろ迷った末、今回は買わず。仕事がらみのものが中心になるのは、気分に余裕がないためか。七千円ほど。子連れ、アベックなどもいた。

 そこからキントト文庫。ここでも仕事関係の本。とはいえ、ここの本は買って楽しいものが多いが。いかにもマニアな顔をした人たちが三々五々、入ってくる。本の扱いで注意受けている人もいた。ここでも古書会館でも、私に対する扱いは非常によくて、何やら申し訳ないような気がした。一万七千円。雨、さらに降り、ここらで今日は神田めぐりを中止。咳もひどく、タクシーの中でくたびれた体を傾げて休む。八○ くらいになったら、毎日こんな調子なのかな、と思う。

 帰ったら鶴岡から電話。意気軒高。人に風邪うつすと元気になるというのは本当だな。話しながら、モチ三片、焼いてノリ巻いて食う。オタクの会話というものについて、かなり面白いエピソードを彼が話すので、なぜそれを対談本のときに話さないかと説教する。自分の中のネタを金になるものとならないものとに分類して、金になる場でいいものを出していく、という風にしないと、いわゆる楽屋名人になってしまって、稼げるライターにはなれない。イジマシい話だが、イジマシいくらいにならないと、書くものに凄みが出て来はすまいと思う。

 電話終えて、しばらく横になる。起きたら、かなり体が回復していた。仕事部屋の窓から空を見ると、星空である。ははあ、天気が回復して気圧が上がったからか、と納得。植木不等式氏からいろいろご教示メール。ニタリクジラは別名トロピカル・ホエールと言うんだとか。なんかオシャレである。ニタリというと存在そのものが誰か の二番煎じみたいに聞こえる。

 実際に馬力をばりばりとかけて、〆切延ばしていたWeb現代(九枚弱)、いともアッサリ片付く。現金なというか、気圧の恐ろしさよというか。前フリ、小ネタ、本ネタ、ひとひねり、オチという構成は、毎回きれいに決まるとは限らないし、あえて崩すことの方が多いが、たまにピタリと決まったときは実に気持がいい。小さな満足だなあ、と思わないでもないが。

 8時半、トウフ料理屋『二合半』にてK子と夕食。湯豆腐、サヨリ刺身、白魚と若筍の鍋。札幌の実家をいつまであのままにしておくか、というような問題、お互いが寝たきりになったらどうするか、というような問題を話す。この年になるとそれがヨソゴトでなくなる。もっとも、かなりマゾヒスティックな笑いと共に語られるのであるが。家に帰って、K子と安達Oさんが企画しているというアイスランド旅行について、アイスランド関係のサイトを探してK子に示す。アイスランド語のサイトをのぞいて、すでにポーランド語やフィンランド語を齧っている彼女、ハナで笑って、大したことないわ、などと仰言る。

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