裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

日曜日

腹話術、鬼は外

 4日になって節分ネタか。朝7時15分起床。K子の症状、よくなってはいないが重ってもおらず。朝食はゆうべ残したオジヤの残りを温めて食べさせる。私はハムとパン、デコポン半個。今朝もオジヤをだいぶ残すので心配したが、後で自分でパンを焼いて食べていたから、まあ大丈夫だろう。読売新聞読書欄、紙面デザインが変わってから、ずっと見開きの左上が東浩紀氏の受け持ちだった(ように記憶していた)。今回もそう思ってスティーヴン・カーンの『視線』の書評を何気なく読み始めると、これが冒頭の引き込みのエピソードの工夫から本の内容におよび、ラストのちょっと気取った結び文句まで、いや、お見事な出来。うまくなったなあ、やはり男子三日会ワザレバ刮目シテ待ツベシと大感心して、評者の名前を見たら、東大助教授木下直之とあり、苦笑。

 母から電話。札幌は寒い寒いとのこと。もっとも、家の中は東京の方が冷えるのではないかと思う。なをきの健康のことを心配している。まあ、人間、ときには体をこわすこと覚悟で仕事しなければいけない時期もある。吉本興業のプロデューサーが若手芸人に、“忙しいのはお祭りと思わんけりゃあかん”と言っていた。人間には忙しい々々と思うことで、体と共に精神までスリ減らしていくタイプと、それをお祭りと思って、忙しさを楽しんでしまうタイプの二種類がある。こういう部分の差が結果 の差となって現れてくる、と思う。

 午前中、日記をアップして、週刊アスキー一本(五枚弱)。これは二時間で難なくまとまり、ホッとする。読み返してみるに随分軽いが、軽さがネウチだと思う、ことにする。この原稿書くうち、今日の日記のタイトルを思い付いた。別口で検索してたら、UKの音楽雑誌『VOX』のインタビュー記事を翻訳しているサイトがあった。シャーラタンズのボーカル、ティム・バージェスが“フランク・謎かけ師・ゴーシンのように笑う”という文章がある。謎かけ師とはなかなかいい訳だが、これは原文が“RIDDLER”であることは明白だろう。映画でジム・キャリーが演じた『バットマン』の悪役である。フランク・ゴーシンはテレビ版『怪鳥人バットマン』の、リドラー(日本ではナゾラー)役で有名な俳優。同じ悪役ジョーカーの馬鹿笑いとはまた違った、歯をムキ出した神経症的な笑い声が有名である。最近ではテリー・ギリアムの『12モンキーズ』にも出ていたのがウレシかった。こっちで同じことをするとなるとそうですな、大月“ハスラー教授”ウルフのように笑う、ですか。それにしてもロックミュージシャンのインタビューにまでなんの説明もなく(だから日本の訳者が苦労する)お子さまヒーローものの悪役が、しかも演じた俳優の名前で引用されるとは、アチラのB級文化の根強さよ。

 K子、食欲は大分回復、軽いものなら食べたいというので、シャケワカメチャーハンを作る。私もお相伴。ネギとインゲンの味噌汁もつけて。食べたらやや、回復したらしく仕事場に出かけていった。昨日の日記にブルース・ティムが高野文子を好き、と書いたが、これは一行知識掲示板での高森圭氏の指摘で、アニメバットマンの演出スタッフの一人であるテレコムの増田敏彦氏のこととゴッチャにしていたことに気がついた。訂正&感謝。幸い、原稿にはそこまで書いてなかった。

 本日は読み損ない記念日か、海拓舎用の資料としてずっと読んでいた資料本中に、大変にいい指摘で、しかもこれまで何回も目を通したのに読み飛ばしていたか気がついていなかった部分を発見。ちょっと大幅な書き直しが必要となった。そこをガリガリとやっている最中に、背中がズーンと重くなり、どうしようもなくなる。K子と同時期に風邪が体に入っていて、筋肉全体の力が落ちている。電話して急遽予約し、新宿にて、マッサージ。体重を測ったら、この数日で一キロ半、落ちていた。マッサージの先生が体を揉みながら、“猫背で仕事をするからいけないのです、胸を張っておやりなさい”と言う。胸はってパソコン打っている奴ってあまり見たことねえや。

 揉み込んでもらって大分楽になる。休息室で休みながら資料本読み。帰りに伊勢丹に寄って、晩飯の材料。できあいのもの数品と、魚売り場でホウボウが安かったので買ってくる。帰ってまた仕事。どうしようもなくなって投げ出し、食事の用意。ホウボウは蒸し焼きにする。あと、鯛の笹寿司、ソラマメ。ビデオでこないだの『世界残酷物語』残り。カーゴ・カルト信仰の場面で終わり。カーゴ・カルトは大変興味があるもので、そのうちこれをテーマにして本を書くつもり。ホウボウは淡白で鯛のようで、大変に美味。蒸し焼きという単純な調理法にしたのも正解。日本酒二合半。

 就寝前にネットひとめぐり。CNNで、立川キウイのことが取り上げられていた。師匠・談志の、
「おれの考える落語家の素質はないんです。ただ、違うあり方もあるのかも知れない と最近、思う」
 というコメントがなんともよくて、微笑んでしまう。
http://www.cnn.co.jp/2001/JAPAN/02/04/asahif4001.asahi/index.html

Copyright 2006 Shunichi Karasawa