19日
月曜日
オイラン・キング
パクリはなりんせん。朝6時ころ、自分の咳込みで目がさめる。咳など珍しい。風邪が重ったかと思うとユーウツである。それでも体の調子はそれほど悪くもないので起きて麻黄附子細辛湯、葛根湯など飲んで、これ以上ひどくならないように算段をする。朝食、マフィンとハム、ブラッドオレンジ。通常通り風呂にも入って、様子を見る。ネット回るが情けないところばかり。
午前中にダカーポ一本、二枚強。楽しく書く。それから1時半までかかって、フーゾク魂八枚弱。これも、後半からノッてきてトバし、書き出しのオトナシめな部分を全部書き改めてまとめる。体調すぐれぬ時にいい原稿が書けるというのは皮肉な話である。鶴岡から電話。“全部原稿あげました、あと遅れたらカラサワさんの責任ですから”などと、師匠に風邪うつしておいていい気なもンである。
昼は茶漬けですます。食欲、ないわけではないが慎重を期して軽くすましておく。やや熱っぽく、変わらずノドがいがらっぽくて咳き込むだけで、鼻水もなく、下痢もせず、ん。メディアワークスから電話、次回打ち合わせの件。収入と支出の計算を少し。ううむ、入ってもいるが出てるなあ。
風邪グスリ飲み、さすがにダルいので寝転がって読書、と行きたいが重いものは頭ボーッとして読めず、いつぞや古書目録で注文した『怪物力士伝』(1985、徳間書店刊)1〜4を読む。原作・滝沢解、作画・小森一也コンビの“誰か止めろ”的パワー炸裂の大怪作。『エロトピア』に連載されていた頃からなんじゃこりゃ、と思って愛読していた作品である。戦前の相撲部屋が舞台なのだが、土俵上で相手の腕をネジ切る、脳天逆落しで即死させる、くらい朝飯前、部屋はド貧乏でこれでもか、と悲惨なエピソードが繰り返され、主人公は力が強いだけの能無し力士、ライバルの巨人力士は金の亡者で、二枚目の憲兵中尉は殺人狂、しかも部屋の親方(?)は脳梅で気が狂い、全身ムラサキまだらのバケモノと化しているという凄まじさ。ストーリィの方も、突如日本軍が満州から秘密輸送してきた身長三メートルの生体兵器怪人なんてものが出現する荒唐無稽ぶりで、読んでいて頭がクラクラする。主人公の顔も徹底したブ男なのだが、さすがにそれでは単行本が売れないと判断したか、表紙絵がどれもまるで内容と違う痛快青春相撲マンガ、みたいな絵になっているのが御愛嬌。『漫画地獄変』の中で宇田川岳夫氏がちょっと紹介しているが、とにかく原作者も作画家もどうにかしてたんじゃないか、としか思えない作品。
対談本前書書き出すが、呼吸が苦しくなって何度も投げ出す。編集のNくんが栄養ドリンク持って陣中見舞いに来てくれる。感謝。各担当編集さんたちからも日記を読んで見舞いメール多々。ところでWeb現代、今回初めて、取り上げたサイトの運営者から、引用お断りの返事が来た。別に内容がケシカラナイというのでなく、すでに他社で単行本化が決まっているから、ということ。では間接引用に書き換えるのみである。北海道のファンの方から先日の宗左近作詞の校歌を持つ清凌情報高校の情報が寄せられる。ここ、平成七年の春の甲子園に出場し、一勝でもすれば校歌が聞けるはずだったのだが、初戦で報徳学園に敗退したとか。惜しみても余りあり。
とにかく今日は早寝と思い、短かめの『モノマガジン』五枚強、一時間ほどで書きあげ(これまた軽めで案外いい感じに仕上がった。風邪はエッセイにいいか?)、K子との食事はすがわらで寿司、と思ったら、先に向かったK子から、今日は休みという電話が入る。たぶん風邪だろう。仕方なく『噂の真相』編集部向かいにあるBYSビル地下のロシア料理『チャイカ』で食事。酔っぱらって早く寝ちまおう、というのでウォツカ二ハイ。ニシン酢漬け、ボルシチ、チキンカツ、みな戦前の味という感じのレトロさで、私のような趣味のものにはまことに結構。店員の民族衣装のショボさも妙にあっているんだよなあ。それにしてもこのBYSビルはいろいろ店が入ってそれなりに客もいる割に妙に寒々しい。壁にかかっている、童話の挿絵のような動物画がいい感じで、絵葉書買って帰る。