9日
金曜日
DNAに死す
寺山的遺伝子の死。朝7時半起き。マッサージの効能あらたか、今日はグッスリと心地よく眠れた。朝食、マフィンサンド。デコポン半個。仕事部屋が寒い々々。暖房が全然効かない感じ。やはり2月だなあ、という感じ。浦山明俊大人から、桂文平が柳亭左楽襲名、というニュース届く。この人、出囃子が確か、“キユーピーちゃん”だったはず。左楽というイメージじゃないよな。まあ、今の落語ファンで左楽を知っているような人ぁまずいないだろうから(私も知らない)、首くくるほどの重荷にもなるまい。昨日行けなかった『ビジターQ』の宣伝会社カマラドから、即、ビデオが届く。早い々々。
ギャラ振り込み先確認電話など、雑用数件。これで午前中は終わってしまう。最近はかなり午後遅くまで仕事するのだが、それと反比例して、午前中に仕事が出来なくなっているような気がする。鶴岡から電話。『地球少女アルジュナ』の話。やはりマクロス世代にとっては河森氏は神様みたいな人であり、それが壊れていく、というのはショックであるらしい。私の世代だと、平井和正というスゴい例があったが、あのとき、私はそれほどショックも受けなかったような記憶がある。人間はおかしくなるもの、という認識があったのか。小野の伯父がバブル崩壊時にガシャン、という感じで壊れたときには、身近だけに少々怖くなったものだけど。
Web現代原稿、書きはじめる。ネタふりから、本題にもっていくあたりはスカッと決まったと思うが、そのあと、つまらぬ用事で数度、中断され、イラつく。これはつまらぬどころではない、エンターブレイン本のプロフィールと帯文、書いてメールする。昼飯はパック御飯をあたため、カレー。パック御飯の上蓋シールをはがすときに、うっかり落っことしてしまい、マーフィーの法則通り、御飯の面を下にして床に落ちる。カッとなって、昼飯を抜かそうかと一瞬思ったが、空腹には勝てず、もう一個あたためる。カレーは函館カレーという魚介もの。レトルトでは魚介ものはやはりあまりうまくない。
なんやかんやでWeb現、夕刻までかかってしまう。ロフトに本当は『神様の愛い奴』見にいくつもりがダメになる。一時間に四○○字詰め二枚、という勘定。普通 の作家なら、決して遅い方ではないんだろうが。担当井上くんから即、電話。ネタにしたサイトを見たとのことで、“あほなサイトですねえ!”(褒め言葉である)と大喜び。図版資料受け渡しのことなど打ち合わせる。
6時、時間割。角川春樹事務所Nくんと打ち合わせ。オタクアミーゴス本の図版で必要なものを持っていかねばならぬのだが、一点、どうしても見つからないのがあって、これは後にしようと取りあえず、出かけた。Nくん、携帯でなにやらシビアな表情で話の最中。終わるのを待って、資料を渡そうとすると、“実は”と、口を切る。これが、まだオフレコなのでここでは書けないが、いかにも角川春樹社長(もうそろそろ収監)のやりそうなことで、聞いたとたん、喫茶店に響きわたるような声で、
「うひゃひゃひゃひゃ」
とヨロコんでしまう。いやあ、人生何が起こるかわからん、ということだね。彼自身、まだ自分の身に起こったことをどう受け止めていいのかわからない模様。まことに気の毒ではあるが、しかし笑うしかないでしょう。取りあえず、善後策を急いで立てねばならん。まあ結論として、この本の座談会はむちゃくちゃオモシロいものになりそうだ。ロフトなどの必要経費もらうのが気の毒である。励まして別れる。
そのとき雑談でNくんに聞いた話だが、出版社の××××が倒産したとか。以前に二冊ほど本を出したことがあるが、印税の支払いが極めて悪いところだった。出す前に言ってくるならともかく、本を出して、さて印税の支払い月になって、いきなり社長の名前で葉書が来て、“当方の一方的な事情により、印税支払いを半年延ばしていただくことになりました”とだけ書いてあった。仰天して、すぐ電話して文句を言うと、“じゃあ、なんとかいたしますので”と言って、結局、半月遅れで振り込んできた。で、次の本の企画が持ち込まれたので、それもやり始めたのだが、これも出来上がって(売れた本ですぐ増刷になった)さて支払い月、というときに、まったく同じ文面の葉書が来て、これまた急いで文句を言ったら、分割であったが半月遅れで振り込んできた。どうも、とにかく社長が印税を支払いたがらず、上記のような内容の葉書を全著者に出して、文句を言ってきたところから支払っていたらしい。気の弱い著者がいて、そのまま何にも言ってこなければビンゴ、だったのであろう。ずうずうしいことには、その後でまた編集者がやってきて、続編を書いて欲しい、と言った。書かないというのではないが、と前二冊の件を話し、連続してこれでは私も安心して仕事が出来ない、印税は確実に期日に支払う、という社長の一筆を貰ってくれないか、と頼んだら、なるほど、わかりましたと言って帰って、そのまんまウンだものがツブれたとも言ってこず、それきりになった。たぶん、社長が“印税を遅らせるのはわが社の社是である“とでも言って怒ったのではないか、などと、そこから本を出したモノカキ仲間と言い合って笑っていたものである。裏者として、どうもそういうアヤシイ出版社と仕事をしたがるヘキがあり、困ったものである。
9時半、K子と新宿すがわらで食事。ウマヅラハギの身をキモと共握りにしてくれる。ねっとりとしてうまい。残りのアラを骨と一緒に昆布だしでさっと煮付けてくれたのも、結構。寿司にはならない筋肉のところが、噛み締めると風味満点。カワハギは行動が荒っぽく、厚い皮の下で身が痛んでいることが多いので、温和な性質のウマヅラの方が安心なのだそうな。他にタコ、マグロなどつまみ。握りはアナゴ、ウニ、甘エビ。疲れているのか、馬鹿に酔いが回ってからだがタルくなる。金曜日なのでさすがに忙しく、出前繁多。