裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

水曜日

オイラン宇宙のパイロット

 せまい地球にゃ未練はありんせん(もうやめよう)。朝8時起き。このところ一日じゅう仕事続きで、テンション調整が難しく、しかも鶴岡にうつされた(強調)風邪で神経が浮かれ気味。昨晩も夜中の三時ころに目が覚めてしまった。五時ころまた寝て、一応寝は足りたが、体がどうか? 昨夜、ベッドに入ったとたん、電話が鳴る。眠いし酔っていたので留守録にまかせたが、週刊アスキー編集のEくんからで、名前だけ言って切れる。ハテ、何の用件だろう、と、今度はそれが気になって、変な夢など見る。今朝、留守録を確認したら、その前に一件入っていて、出した原稿の校正についてだった。一晩気を揉んでソンしたと思う。指摘された部分を訂正してメール。昼日中が妙にテンション高いので、夜中は逆にウツ状態になるらしい。

 朝食はマフィンとソーセージ。野菜類足りない分はスピルリナ錠で補う。テレビのモーニングショーではまたまた、田中康夫知事のダム建設見直し発言について、県議の爺さんが“ヒトラーの再来だ”と放言。こういう過剰反応を見るにつけ、長野人はイナカモノだなあ、と思ってしまう。いまの日本のマスコミはほぼ全て、田中知事の味方なのだぞ。確かに、田中知事の議会を通さない方針発表はルール違反だし、過疎の村などではダム建設誘致が村民にとってもおいしい話だったりするのは事実。とはいえ、そういう人々に向かって直接話すならともかく、テレビで全国に発信される場で、無神経な激語を使うセンスは、まずいただけない。しょせん、せまい選挙区しか相手にしたことがない県議たちと、テレビでレギュラーを持っていた対マスコミのベテランとでは、勝負にならない。

 ずっと、エンターブレイン本の序章書き。四枚弱のものが二本。かなりひねくれて皮肉っぽく書いたので、怒り出す者が必ずいるだろう。それを想像すると面 白い。2時二本とも書き上げてメール。新宿に出て、銀行で金をおろし、咳がひどいので眠くならない漢方系の咳のクスリを買い、明日の朝食の材料も買い、食堂街の立ち食いソバで遅い昼飯を食う。肉天ざる。ここのツユのからいこと。

 このあたりから鶴岡にうつされた(強調)風邪ひどくなりはじめ、咳が出て体ダルく、頭がぼーっとして、地熱(体の奥に潜り込んだ熱)あるのか涙がトメドなく流れる。4時、時間割にて海拓舎Fくん。芝崎くんも来た。Fくんに今後の予定を話す。エンターブレイン片付いたので、明日明後日はカン詰めとなって海拓舎と二見書房のをやらねばならぬ。芝崎くん、メディアワークスで私がらみのものに、オタク論本、日記本、それとトンデモ本男の世界と三冊、構成をまかされたそうだ。風邪を鶴岡にうつされた、と言うと、“いえ、それは私がうつしてしまったんじゃないですか、こないだお邪魔したときに、腸にもぐるかなり悪性の風邪をひいてまして”と彼をかばう。時期的にまるであわないじゃないか。

 帰ってグッタリし、まだ原稿残っているのだがなにもする気が起きず、ネットで資料集めなどする。円周率が来年から3として教えられるようになる、という話を、こないだもチャイナハウスで植木さんたちとしたのだが、それがデマである、と遅まき ながら知って仰天する。小学校学習指導要領に“円周率としては3.14を用いるが 目的に応じて3を用いて処理できるよう配慮する必要がある”と書かれていた(しかもこれは現行の指導要領にもある記述だそうな)ことを早飲み込みで、円周率来年から3、と報道してしまったことによる誤報なんだとか。この3の件に関してはかなり数多くの知人友人が話題にしており、デマというものがいかに一般に広く受容されるかということが実感できた気になった。いや、私もすっかり信じ込んでしまっていたんだけど。このデマがこれだけ広範囲に広まった理由のひとつに、世間の大部分の人が、“最近の若者はバカになった”と内心で思っていることがあり、その原因が教育のダメさにある、と信じているという下地があるだろう。Web現代用に、先日の原稿を間接引用に書き換えたものを送る。メールでなにやらオシャレっぽい映画雑誌からアニメについての原稿依頼。チャック・ジョーンズ、テックス・アヴェリーについて書くことになる。こないだロフトでやった直後でもあり、重なることに驚く。ロフトと言えば斎藤さんから、四月アタマになにかやってくれと電話あり。唐沢俊一お蔵出し特集とする。

 鶴岡にうつされた(さらに強調)風邪、ますますひどくなり、K子と寿司屋で待ち合わせているんだが、このままではぶっ倒れるので、出かける前に、ユンケルスター一本、麻黄附子細辛湯、五虎湯(ノドの薬)をのんで出る。すがわら、やはりこないだの休みは風邪のせいだったとか。今日も咳が残っている。客の私と競走でゴホゴホとやる。心臓がバクバクし、食欲なし。舌が熱でマヒしていて寿司のうまみもあまりわからず。白身、甘エビなどつまんだきり、後は日本酒を熱燗にして、白子ポン酢肴に、大コップでグビグビとのむ。二時間ほどいたが、この酒が効いたか、それとも出がけにのんだ薬のどれかが効いてきたか、やがて咳もおさまり、食欲も出てくる。舌も回復、マグロとイカのおつまみのうまみが、復活したように口中に染み渡った。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa