裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

金曜日

ルイは友を呼ぶ

 余と一緒に錠前を作ろう。朝7時起き。二日酔い、という感じではないが、ワインとBODY&SOUL(ジャズバー)のタンカレで胸が焼けている。食欲、ないこともないが自粛してオニオン・スープとイチゴのみ。七四歳の爺さんが十四歳の反抗期孫娘の長電話にキレて灯油をぶっかけ、火だるま事件。孫の両親の離婚後、新聞配達をして孫を養っていたとのことで、報道は爺さんに同情的だが、しかしだからと言って灯油をぶっかけるか。土佐は気が荒いところだなあ。

 午前中は胸焼けで、ダラダラと過ごしてしまう。いかんいかん。太田出版Hくんから、と学会本『トンデモ本2001』執筆、そろそろ用意をとのメール。例会本『と学会年鑑2001』も先日三刷になったことであるし、イキオイづいている。K子に弁当。豚の甘辛焼き。原稿取りあえず、週刊ポストの映画評を片付ける。二枚半に二時間弱という情けなさ。まあ、時給になおせばかなりのもの、と自分をナグサメる。

 タクシーで六本木に出て、雑用と買い物。銀行で通帳を新しいものに変える。立ち食いソバ屋でザルソバに春菊天つけて。ABCにより、各売り場をひと回り。『キッチュの花園』は二カ所(サブカルの棚とマンガの棚)に置かれており、どちらもかなり動いている様子。ちょっと気をよくする。買い物:福田純監督インタビュー本、サウスパークコンプリートガイド、それとバットマンのアニメコミック(絵はアニメーターのブルース・ティムの描きおろし)『マッドラブ』。アニメ版バットマンのオリジナル・キャラ“ハーレイ・クイン”(ジョーカーに一方的に惚れ込んで追っかけまわしているミーハーギャル悪党)を主人公にした特別バージョンだが、これがサイコウにいい! 精神分析医出身という悪党で、刑務所内のクリニックでジョーカーの精神分析を担当しているうちに彼に惚れてしまい、ついには自ら怪盗ハーレイ・クインとなって、恋するオトコの邪魔をするバットマン抹殺をたくらむようになる、という設定がまずユニークだし、それだけ惚れて尽くしているのに、当のジョーカーには足手まといでジョークのセンスもダサいバカ扱いしかされず、それでもなお純情に愛を捧げ続ける、という設定がキュンとくる。なにより、アニメ版だけに、絵が普通 のアメコミよりぐっと日本のマンガに近い体型で、カワイイ。萌え、というのはこういう感じなのかな、と思ってしまった。アメコミにこういうオンナノコのキャラが登場し人気を博すなんというのは二十年前には考えられもしなかったことで、やはり日本のマンガの影響や大、というところだろう。

 帰って、講談社ウェブ現代。今回はなかなか筆が進まず(別に浅田次郎を意識しているからではナイ)、書きあぐねているうちに夕方になってしまう。6時、啓乕くん来宅。新ゲームの設定世界のことについて、ちょっと基本事項をレクチャーする。その最中にエンターブレインNくんも来宅。コラム原稿の図版用ブツ渡し。対談本完成後のイベント等を少し打ち合わせる。

 啓乕くんへのレクチャー、一時間ほどで終わる。時間が半チクなので、階下の喫茶店で時間つぶしていてもらい、仕事ちょっと続き。8時、落ち合って(ちょいとばかり行き違いスレ違いがあった)、宇田川町近くの台湾料理屋でK子と三人でメシにする。一階が満席で、二階の宴会場に行かされる。店員が全員日本語に不自由で、なかなか注文が通じずに苦労する。日本酒、と頼むと“おサケ、二本ネ?”というようなお約束のボケもあり。腸詰め、鶏とイカのゆば巻き、揚げ豆腐と野菜炒め。チンタオビールと紹興酒。料理はうまいが、お燗が中途半端で酒が生臭くてまいった。今度からは熱燗と念を押して頼もう。

 帰宅、もうひと仕事。ファミ通PSからコメント原稿依頼。あと、ロフトの件でこちらの連絡ミスが原因か、と思われる小トラブルがあったが、カン違いとわかり一段落。ホッと安堵。海拓舎原稿の資料にと宮田登『終末観の民俗学』をベッドで読む。非常に面白いが、やはり民俗学と精神分析学は、事象の分析においてジョーカー(カードゲームにおける)だなあ、と思う。それで確かにリクツはつくが、それが本当だという証拠は? と、つい、声が出そうになるのである。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa