裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

木曜日

サンプーン待つのだぞ

 中に入れてから溶けるまで時間がかかるのよねー(本当は一○分くらいかかる)。朝7時半起き。風邪、朝は調子よろしく、昼過ぎちょっと悪化し、夕方最もひどくなり、夜半また回復、というサイクル。朝食、トーストとソーセージ。今日から関西旅行。K子がタケノコ料理を例の鯨料理の西玉水に予約してしまった。この忙しい最中に、と思うが、ここで無理にでも数日、休みを取らないと本当に体、参るかも知れないと思う。向こうでちょこちょこと原稿書きためをしよう。

 とりあえず、午前中に『Memo・男の部屋』原稿八枚半。調子よくいくが、風邪が書いているうちに重ってくる感じで、書き終えた頃にはヒーヒーとなる。おかげでもう一本、ノルマにしていた彷書月刊は書けず。編集部にメール、事情説明して待ってもらうことにする。昼は昨日寿司屋でもらったオイナリサン。

 植木不等式氏よりメールで、例の円周率問題は新指導要領に小数点の計算について“1/10の位までの数を扱うことにする”とあるので、なら3.1でおよそ3か、ということを危惧する人々がいるんだそうである。しかし、これも明らかな要領の誤読で、それを基本とした上で“円周率は3.14、目的に応じて3”と明記されているんだから、あえて新円周率は3、と言いふらすのはデマに属すると思うがな。ここらへんのことについては
http://www2.justnet.ne.jp/~assoonas/UC278.HTML
 を参照のこと。

 2時、タクシーで東京駅。若い運ちゃん、気の弱い人らしく、道が混んでなかなか進まないのをひたすら申し訳ながり、額の汗を何度もぬぐう。その善良さは愛すべきだが、プロとしちゃどうか。こっちはK子が毎度のことながら時間をたっぷり取っているので、悠々然。3時7分発広島行きで大阪まで。車中、資料本読み、メモ取り。やはりバテているのか、少し寝てイビキかき、何度もK子に注意される。

 6時大阪。タクシーで梅田のリッツカールトンホテル大阪。本格ヨーロピアンスタイルで、ロビーには本物の暖炉で薪が燃えているという豪勢さ。平日のパックツアーで半額料金なればこそ泊る気にもなったのだが、三○階の客室から眺める梅田の街はなかなかムードがある。こうして見ると多さかというのは奇妙な形のビルがいっぱいある街だなあ。

 少し休み、仕事して、夜、道頓堀はずれの西玉水まで出かける。道頓堀まではタクシーで行く。運ちゃん、リッツカールトンのボーイたちのことを、“一種独特の顔のボーイさんばかりおりますな”と評する。確かに、いいところのぼんぼんといった、ちょっと青びょうたん的な顔の子ばかりである。さまざまなホテル経営者の息子たちが、修行のため働いているのかしらん、とも思える。“他のホテルでしたら、ドアボーイさんたちと待ち時間に雑談とか出けるんですけど、あそこの子たちとは、なんやようでけんのですわ”。道頓堀から少し歩く。例によっての風俗街、“ハイ、若いムスメのオッパイなめたりさわったり”と、呼び込みの声、東京とはロコツさの度合い四割増し。

 西玉水のタケノコに関しては省略。K子の日記を参照のこと。若竹煮の上品な風味は言語に絶する。風邪をひいて、舌がふだんの三分の一しか効かないのはかえずがえすも無念なのだが、それでもなお、早春の息吹きが全身に染み渡った。ただ、やはりほろ苦さが、食べた後の口中をしびれさす。鯨はお造り一品のみだったが、ナガスとフィンランドから入ったというニタリクジラ。ニタリガイという貝があって、女性のあそこの形状に似ているからニタリ貝なのだが、まさかこのクジラがアソコに似ているわけでもあるまい。なんでニタリなんですかね、と訊いたら、奥に入って調べてきてくれた。イワシクジラ類なのだが、ナガスに似た形状なので、それでニタリクジラと称するのだそうな。ナガスより繊維質が多く、食感がモチッとしている。

 帰って、K子は風呂に入る。私は少し仕事して、早めに寝る。枕が柔らかすぎて、安眠とはいかなかったのが残念。咳はあまり出ない。三時ころ目が覚めて、詮方なく 仕事少し。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa