裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

12日

土曜日

天地真理のみなさまに申し上げます

 天地真理シリーズ(なんだ、それは)第二弾。天地真理って、人気急降下のあたりから奇行が目立ったり、その後も突如ヘアヌードになったり世間を驚かすようなことをしでかす女優(歌い手)さんであったが、どうも甲状腺機能障害の疾病を持っていたらしい。この病気は妙に精神がハイになる場合がある。一時心霊に凝っていたウチの母親に言わせると、いわゆる心霊家と称する人の八割は、甲状腺に異常があるという。朝8時起き。朝食自家製シーチキンサンド。

 昼ごろ、パソコンが急につながらなくなり、ブラウザの変調か、モデムの不調かといろいろ調べるがダメ。月曜にでも人に聞かないといかんかと思っていたが、何気なく、手にとったコードのコネクタをいじっていたらつながるようになった。ただの接触不良だったらしい。人を呼ばないでよかった。昼は急に牛丼が食べたくなり、近くの横浜らんぷ亭。うーむ、少し遠くても松屋か吉野屋にすればよかった。

 コピー本作りのため、書庫にこもるが急に猛烈な眠気に襲われる。台風いよいよ接近か。明日、晴海を直撃という予報は当たるか? とにもかくにも体が動かず、どうしようもねえや、と放棄してベッドに。手近な本を拾い読む。篠田統『中国食物史』(柴田書店)と横溝洋『柿くへば』(築地書館)の二冊。前者は名詮自称、後者は小説・俳句・短歌等の中に表現された食べ物から明治以降の日本文学を読み解こうというもの。この着眼は私のなわばりうちで、興味を持って読み出したが、どうにも読みにくくて往生する。著者の横溝氏は画家だそうだが、大したことでもないことを意味ありげに書こうとする芸術家風の気取りが鼻につくのである。そのうえ文章を、たぶ ん書き流しているだけで推敲していないことが明白である。
「酢を調味料の主体とする、野菜や魚介類の膾と、普通の家庭で夏に食う胡瓜の酢の物、酢で殺したり、酢で締めたり、酢漬けにした野菜・魚貝類と、どこがどう違うのか。それについての私の仮説は次の通りである。膾は、材料として、鳥獣の肉が加わる。つまり、酢に漬ける(乳酸醗酵を含む)、酢で殺す、酢で締めたりする食物は、膾の一部であるということである」
 などという部分は三回読み返して、よくわからなかった。一方の『中国食物史』も独特の文体(「・・・・・・である」「であった」式の文章の中にいきなり「しちゃった」 などと入る)であるが、こちらは見事なる達意の名文。

 5時半、K子と新宿へ。タクシー使ったのだが、運転手がヘボなのと、盆前で混んでいるので、やたら時間がかかる。紀伊国屋前で待ち合わせて、金成由美さんコミケ上京歓迎オフ。総勢十名ちょい。味のセゾンプラザ内のギョーザ屋。鶴岡法斎のドリフト道場の面々が参加してにぎわった。哭きの竜さんから伊藤くん本をいただく。表紙が傑作。最後の竜さんと伊藤くんのメールのやりとりはまさに伊藤くんエッセンスというものがぎっしりつまっていて、その、あの、なんというか(笑)、圧巻。竜さん、これを100部刷って刷りすぎではないかと案じていたが、みんなで“いや、これは300刷っても売れるよ!”とはげます。

 途中でなんと樋口真嗣監督が席に加わる。同じ店で『さくや 妖怪伝』の打ち上げをやっていたのである。開田夫妻も驚いていた。世の中というのはどうしてこう狭いのか。ドリフトのGHOST氏が作った『豹マン』のウソデータ本を喜んで受けとっていた。原口監督も来るというので、NHKでの対談の挨拶をしようと待っていたがやはり監督は忙しいらしくて遅れ、こっちのお開きまでには間に合わず。

 話題がとにかく三枝貴代からクレクレタコラまで多岐を極め、メンバーが別れてい る四つの小テーブルをまんべんなく渡り歩くうち、気圧でまいっている体に酔いが回りすぎて、かなりベロとなる。ドリフトのかなえ名人さんがまた、老酒をどんどんつぐ。10時過ぎには、明日があるからと解散したが、記憶があやふや。夢でこの店の支払いの場面を見たのは記憶の補填なのだろうか。かなりひさしぶりに、昔うちの事務所に出入りしていた宗教・オカルトゴロのOという男が出てきた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa