11日
金曜日
くしゃみ鼻水天地真理
かかったかな、と思ったら。朝8時起き。やや二日酔い。ソーセージと桃で朝食。脇役俳優谷村昌彦死去。『忍者ハットリくん』(もちろん実写版)の花岡実太先生が私にとってはインプリンティングで、校長に“鼻を齧ったくん!”と呼ばれて山形弁で“イエ校長、鼻を齧った、でなくて花岡実太でナイノ?”と毎度訂正する、そのイントネーションをしょっちゅう真似しては怒られていた。花岡実太という名前は脚本の井上ひさしが当時コントなどでよく使う名前であることは後に知った。谷村氏にとり山形弁はネイティブランゲージだが、東北出身の脚本家である井上ひさしが、コンプレックスであった東北訛りをギャグにするとはいい度胸であったと思う。モノマガの図版をバイク便で送り、それからずっとSFマガジン。パソコンの回りに資料本が 積み上がり、城壁みたいになる。
インタビュー原稿が載っている『東大は主張する2000』届く。昨年10月のインタビューであり、“オタクの平和利用”という言い方は自分で言っていて忘れていたが、読んで笑ってしまった。他に鈴木光司、富野由悠季などのインタビューも掲載されている。注文お問い合わせはnp@utnp.org東京大学新聞社まで。
昼は塩辛で茶漬け。某社から某社への移行を仲介した出版、部数などで不満は残るものの、なんとかまとまりそうである。こっちとしても、一旦ツブれかけた原稿が日の目を見てホッとする。大和書房Iくんから電話。新刊『トンデモ一行知識の逆襲』のプレゼン打ち合わせ依頼。なをきのイラストも日下潤一氏の装丁も大変結構で、いい本だと思うのだが、私の本というのはタイトルが軽いねえ。『雑学原論』とかすれ ば少しはオモミもつくのだろうが、売れねえだろうな。
SFマガジンをガシガシと。6時半までかかって完成。たかだか十一枚の原稿に時間とられたのは、書いているうちにどんどん所期の構成案と変わってきて(この連載はあえてそういう変化を容認しながら書くのがコンセプト)、用意して山積みした資料をほとんど使わないことになったため。それでも書きながらなんとなく、頭がよろしくなったように自分で思って満足する。読者は知らないけど。
伊勢丹古書市の当選物確認して、青山まで買い物に出る。原稿完成した解放感からか、やたらいろいろと買い付けてしまう。帰って、煮物の番をしながら台所で読書。デュシェ『オナニズムの歴史』(文庫クセジュ)。クセジュでオナニーの本が出る、というだけがネウチで、内容は大したことないな、と思って読んでいたら、訳者の金塚貞文氏(『オナニスト宣言』の著者である)が、ロコツに解説にそう書いていた。
思い出したが、今日、圓朝忌である。谷中全生庵にある墓碑に刻まれている辞世の句“聾(みみし)ひて聞き定めけり露の音”というのは哲学的な趣のある名句だが、これは改作で、実際に圓朝がよんだのは“目を閉ぢて聞き定めけり・・・・・・”という平凡なものだったそうな。もっとも妙に悟ったような“聾ひて”より、こっちの方が素直で辞世としてはいいかもしれない。
9時、夕食。ミニッツステーキ、鮎飯、それに枝豆塩茹で。枝豆はだだちゃで、晩夏のみの濃厚極まる風味を楽しむ。ビデオで『死の都サッカラ』(淡交社)。NHKスペシャルぽい作りだが相変わらず貧乏ビデオで、ナレーションの声優(名前の記載がないが若い男優)が、一人でナレーションと、現地の学者の吹替えを勤めている。吹替えのとき、妙に年寄りっぽいツクリ声でナレーションと変化をもたせようとしているのが逆にナサケナイ。