28日
火曜日
左談次全開
朝8時半起き。朝食はミートボールのトマトソース煮をパンにはさんで。年の瀬もいよいよ、という感じだが、今年は手つかずの仕事、やりかけの仕事が多すぎて、ミレニアムの切り替わりをしみじみと感じる余裕などなし。来年もたぶんどたばたのうちに21世紀を迎えるのだろうな。こういう21世紀の迎え方を一度でも想像したか?
昨日朝、モノマガに2000年特集記事図版用ブツを渡し、ラフを考えていたら、当初4ページ予定のものが5ページになった、という電話。ページ増えるのはありがたいが、最初頭にあったコンセプトを全く変えねばならず、アタマが空白になってしまう。
御歳暮、このギリギリの状況でまだ届き続けている。K舎からヨックモックのケーキ。まあ、相手によって品を変えるなんてことは出来まいが、K子がこういう菓子類は捨ててしまったりするんだよなあ。今回は捨てずに、今日のトンデモ落語会の楽屋に差入れとなるらしい。AIW(アミーゴス・イン・ウェスト)からは恒例の松坂牛が届く。あちゃあ、惜しいな、今年はもう家での食事の予定がないんだよ。ここから贈られる牛肉はホントにうまく、去年はこの肉のおかげで年末のダイエット計画がパーになったほどであった。札幌へ持っていって食べよう。
御歳暮と言えば映画秘宝に書いてるライターのN氏から焼鳥のパック詰めセットをちょっと前に贈られた。このまま食べられるのだが、それでは芸がないので、いろいろ手を加えて使っている。今朝のミートボールはつくね串を、冷凍しておいたトマトソースであえたもの。昼はK子の弁当用に、鳥皮串とジャガイモ、ネギをすき焼きの割下で煮込んでみた。しばらく仕事してから、昼を食おうと台所へ行ったら、さすがは鳥皮、にじみ出したコンドロイチン分で汁がゼリー状の煮こごりになっていた。冷飯で食ったがこれがンまい!『SPA!』から原稿依頼。週刊誌というところもギリギリまで仕事しているところである。角川文庫の姫野カオルコ本あとがき、やっと書く。昨日書き上げたかったのだが、このエッセイがパワフルなので、体力ないときに書いたあとがきでは力負けしてしまう。〆切催促にズリをかけて、3時ころ仕上げてメールする。
5時、渋谷駅でK子と待合せ、上野広小路亭『トンデモ落語会』。かなり前から並んでいる連中がいるのは、志加吾のファンだろう。寄席を聞きにくるというよりは、ネットのオフ会という感覚なのですぐわかる。ブラックと談之助も現金に“客が呼べるのならお前、トリをやれ”と、前座をトリにしてしまった。マンガ人気が落語家としての志加吾にどう影響与えるかはわからないが、家元・談志の言に“芸と人気を並べて人気を取らないような奴は芸人ではない”というのがある。人気があるときは、それがどんな人気であれ利用するくらいのバイタリティがなきゃ大成しない。人気を利用するか人気に流されるかはまた別問題だが。
とはいえ、今年最後の会で、さなきだにせまい広小路亭は大混雑。睦月さんは風邪引いて来られなくなってしまったが、官能倶楽部からは安達O・B、開田裕治・あや夫妻、ひえだオンまゆら、と学会関連ではS井、H川、S我、FKJ各氏。せんべいを食いながら見てたら、中入りに、ソニーの高級デジカメ持った人が、“写真撮らせてもらっていいですか”とやってきた。コミケでチラシもらったのかと思ったらぴあで知ったという。自衛隊関係の人で、たまたま私のファンで、会場に私の姿を見つけて声をかけてきたらしい。
出演者、ぶら坊(前座)、新潟、談生、談之助、ブラック、志加吾。それに談之助とブラック、ぶら坊の“エログロナンセンストリオ”。談之助はいつもユニークな高座着で出るが、今回はなんとガメラの柄の着物だった。談之助・ブラック・新潟はだいたい安心して見ていられる。談生は時に会場を凍りつかせる場合もあるが、シュールな雰囲気の話にファンも多く、今回はまず、観客を置いていかずに最後までいく。志加吾はベタな談志ネタで、これはトリだから大ハズししないように、と考えたんだろう。このあたりの気の弱さが気になるところではある。しかし、週刊誌でアイデアを毎回々々ひねり出しているというのが訓練になっていて、その影響はうまい方に出ているようには思える。
2次会、30人ほどで上野のまずい居酒屋。ここを出て、談之助推薦の、“ちょっと本国風の味の焼肉を食わせる店”というのに、と学会関係12人ほどで入るが、何のことはない、ブラック、談生、左談次、吉川潮などという面々も入ってきて、ほぼそのまま2次会メンバーのスライドになった。みんな、口なおしがしたかったとみえる。
マッコリ飲みながら忘年会。ブラックさん一巻きとは別れて座敷で食べていたが、吉川潮帰ったあとの噺家連があとから入ってきて合流。たちまち、左談次独演会となる。なにしろ意地悪左談次として有名、さらに酒癖の悪い芸人として有名な人。吉川潮のことを
「なんてったっけ、さっき帰った作家」
などとカマす(一番立川流とつきあいの深い作家である)。ここらへん、落語家のカガミみたいな人で、実にいい。おつきあいはあまりしたくないが。談志のわがままエピソードなど聞いてるうちに、午前2時となる。
帰り、その左談次から『トンデモ本 女の世界』にサイン求められる。談之助に
「このヤローはこの本の印税で、来年は楽に暮らせるン。オレなんか、この本高座で昼夜読んでも(左談次は高座で本を読む)4500円だよ。日暮里の落語会だと、逆に5000円とられる(あそこの落語会は出演者が会場費を出す)ンだから」
などと毒づく。タクシー拾おうとするが、若いカップルが先に拾ったりすると
「てめえ何だコノヤロー!(相手が振り向いたとたんに)お気をつけて!」
など、全開(全壊)の状態。帰りついたのが午前3時。ひさしぶりの午前さま。