裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

土曜日

恐怖のカマキリ

 朝、8時起床。朝食オレンジ一個、青ネギ入りサラダ、トースト。毎朝の楽しみは新聞の人生相談欄だが、今日はカマキリが怖くて仕方がない主婦の悩みが投稿されている。カマキリの出る夏から秋にかけてほとんど外出できず、洗濯ものも、干すときは夜、夫につきそってもらって干し、取り込むために夫は昼休みに会社から帰ってきているのだそうだ。寝るときもカマキリの姿を思い浮かべると心臓がドキドキし、もし子供が出来て、その子が虫好きに育って、家にカマキリをつかまえて持ってきやしないかと思う恐怖で、子作りも出来ないらしい。この相談の手紙も、カマキリというところだけ空けて、その字は夫に書いてもらったのだというから念の入ったことである。精神の病を笑うのは不謹慎だがここまで徹底すると笑えてくる。夫も、新聞の投書の手伝いをするより、もっと何かすることがあると思うのだがどうか。

 日記つけ、週アス原稿一本、20分でやっつける。たたたたた、という感じ。入浴して、参宮橋まで出てチャーシューメン、スープに酢をしこたま入れて飲む。少しは肩凝りによかろう。渋谷バス停近くのアメリカ雑貨屋で5000円ほど買い物。一時、渋谷にはこのテのガジェットグッズ屋が雨後のタケノコのように開店し、ネタ拾いにまったく不自由しなかったが、最近は激減。クアトロの中に4、5店あった店も、現在は一店のみになってしまっている。やはり、あまり儲からないものらしい。

 原稿ちょっとやって、東急本店前のシネ・アミューズにジャームッシュの『ゴースト・ドッグ』観に行こうと出かけるが、満員札止め。隣の『地雷を踏んだらサヨウナラ』もギッシリ。映画は斜陽産業から復活したのか? やはりフリーの職業らしく、平日に行こうとアキラメて帰る。

 ブック・ファーストで買い物。サブカルチャーのコーナーが新しくなっていて、棚がひとつ増えていた。私の著書で埋まってる段もあって、女の子たちがたかっているようである。どういうのが買われているのか調べてみたいが、自分の棚の前に並んでいると、気がついた人がかえって買いにくくなるのでは、と心配になり、また、“あいつはいつでも書店で自分の本の並んでいる棚をチェックしている、気の小さいヤツだ”と言い触らされはしないかとも思い、書店では自分の本の前に立ち止まれないのである。これもカマキリの類かもしれない。まあ、人生における悩みの大半はカマキリ恐い的なものではないか、とも思える。その恐怖をいくらセツセツと述べても、他者にとっては笑えるものでしかない。

 9時、夕食。イカとセロリのバタ炒め、桜海老豆腐、柿の生ハム巻き。柿は岐阜県から贈られたもの。LDで『おにいさまへ・・・・・・』。サン・ジュストさまの手に一の宮フキ子さまが剣山をお落としになる回。爆笑また爆笑。

 それからにっかつロマンポルノ『壇の浦夜枕合戦期』。神代辰巳の芸術的艶笑譚。風間杜夫の義経も珍演だが歴史考証八切止夫、というのにもブッとぶ。義経が建礼門院とのセックスのあとでタバコ一服、なんてシーンのある映画に考証もヘッタクレもないと思うが。球磨焼酎3バイ。

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