5日
日曜日
人生の勝者
朝、ヨーグルトとスモークトヘリング、ライチ数粒。土日に限って郵便局へ行かねばならん用事とかが山積。イラついて放棄。F書房の仕事に専念と決めるが、年末進行状況がいろいろ頭を悩まし、気が散ること散ること。
昼は揚げシューマイとトウフで軽くご飯一杯。インターネットで執筆の資料を検索ちゅう、偶然、20年前に札幌でアニメ同好会作っていた頃の友人のサイトを発見。現在はシステム工学関係の仕事をしていて、アニメからは離れているらしい。プロフィールなどにも、その当時のことはちょっと触れられているだけ(私や弟の名前、それから島本和彦の名前は出てきていた)。しかし、そこに貼られている写真にも写っている奥さんは、当時、彼と一緒にその同好会に所属していた子である。ならばも少し堂々と書け(笑)。まだやおいというコトバも生まれてなかった時代に、ホモごっこした仲ではないか(そういうカップリング遊びが流行っていたのである)。
彼の奥さんは女性が半数以上だった当時のメンバーの中では地味な子だったが、無茶苦茶に頭のいい子であった。女性にモテまくりだったプレイボーイの彼を秘かに愛していて、私は彼女に“あの男はジツがない。やめた方がいい”とマジに忠告したことがある(当時からお節介野郎であったことよ)。しかし、彼女は決して彼の派手な交際相手たちと正面からぶつかろうとせず、じっと待ち続け、彼が全てのガールフレンドに捨てられて落ち込んでいた時にそっと寄り添って彼を支え、見事に妻の座を射止めたのである。娘さんの写真も貼ってあったが、これが見事に彼女ソックリ。こういうのを人生の勝者、と言うんだろうなあ。
ちょっと昼寝、と横になったら2時間も寝てしまった。父親が浅野温子と再婚していっしょに町を歩くと人目が恥ずかしい、などという妙な夢を見る。
起きて、六本木WAVEの閉店セールに行く。レジ前の人混みにヘキエキして諦めて、ABCで本を買う。『BRUTUS』の映画特集、有名ゴシップライターインタビュー、パパラッチ傑作集を巻頭に持ってきているのがさすが。映画とはそもそも、そういう極めて卑俗な大衆の興味をモトに成り立っている業界なのである。27歳超デブオタクのハリー・ノールズがインターネットで主宰するゴシップサイトで映画界を震撼させている状況は痛快の一語。オシャレとかイケてるとかポップだとか、そういう自己認識と無縁でいるから、彼はあらゆるオシャレでイカした連中、スカしたポップカルチャーに対し自由に毒舌を吐けるのである。
9時、夕食。不倫心中鍋。例によって『おにいさまへ・・・・・・』を三話いっぺんに。非現実度がどんどんエスカレートしていくのが快感。売れっ子ポルノ作家の娘が主人公にレズ的につきまとうのだが、この娘の家というのがお城のような豪邸で、主人公とのお食事はホテルのパーティ会場を借り切り、室内楽団を演奏させながら食べる。世間ではポルノ作家というのはかほど儲かる職業と思われているのであろう。わが官能倶楽部は売れっ子揃いだが、こんなの一人もおらんぞ。
それから東千代之助主演『百面童子』。イスラム国の妖術使いバテレン坊、という混乱したネーミングのキャラクターが出てくるのに爆笑。球磨焼酎4ハイ。
・今日のお料理「不倫心中鍋」
鍋にコブだしを張り、鴨の薄切りとクレソンを皿に盛り、さっと煮てポン酢で食べるシンプルな鍋。これがなぜ不倫心中鍋かというと、映画『失楽園』で主人公二人が心中する直前、この世の最後にする食事がこの鍋なのである。原作にはなく、監督の森田芳光のアイデアだそうだが、そのシンプルさが、二人のこの世への未練のなさを見事に表していた。もちろん、われわれ夫婦は心中するつもりなど微塵もないから、シメジ、トウフ、クズキリなど他の具もどんどん投入する。おすすめは大根。ちょっと厚めの輪切りにして鍋の底に沈めておくと、食べ終わるころ、鴨の油とだしをたっぷり吸って、まことにおいしい味となる。