11日
土曜日
娯楽の血
朝、岩魚のスモークサラダ、リンゴ。クンセイばかり最近食べているのでオシッコまでケムくさくなった。K子には落とし卵とハム。
朝、薬局新聞原稿一本。平山亨氏から電話。1月のロフトプラスワン公演の内容について。漫画家の中田雅喜さんが作っている月形龍之介サイトの話から、昔のチャンバラ映画には女性ファンがついていた、という話になる。助監督時代、中村錦之助の映画など作るとき、フィルムの2割は錦之助のアップにしろと言われてクサッたものだが、今思えば、それがあったから、男性はチャンバラを楽しみ、女性は美男スターを楽しみ、時代劇映画にカップルで来場してくれて、映画の黄金時代が築けた。
以前、『映画ファン スタアの時代』(筑波書房)という本を書評したときにも書いたが、若い女性たちは錦之助や橋蔵のブロマイドなら定期入れに入れておくだろうが、薄汚れたミフネの三十郎の写真を入れはしない。確かに『用心棒』はひょっとして世界で一番優れた映画の一本かもしれない、と私も思う。質から言えば旗本退屈男だの一心太助など足元にも及ぶまい。しかし、お子様映画、ミーハー映画が映画界をうるおしていた、ということを認識しないのは視野の狭さ以外の何物でもない。青臭いインテリたちの言にしたがうと、業界は必ずダメになる。・・・・・・もっとも東大美学部出の、当時は青臭かったであろうインテリ平山氏、
「黒沢明の『用心棒』が封切られたとき、東映は東映で“ウチにはウチのやりかたがある”と頑張ればよかったものを、われわれ若手が“これからはアレでなくちゃ”と上をツキあげて、残酷物語的な作品ばかりにし、時代劇から女性客を追放してしまった。考えてみれば、われわれがチャンバラ黄金時代を終わらせた張本人なのかもしれないなあ」
と、しみじみおっしゃる。で、その平山氏がテレビに移って『仮面ライダー』『ゴレンジャー』といったお子様娯楽ものの傑作を続々と生み出して変身もの黄金時代を築くのだから、娯楽の血は濃いというか何というか。
この電話で思い出し、もう一人のゲスト、快楽亭ブラック師匠に予定をFAX。ようやく“来年の予定表を買いました”と留守電が入っていたので。日記書き、入浴、資料調べ。以前から温めている中世ものエンタテインメントの資料、集めているうちに膨大な量の未読がたまってしまった。そろそろどこかに仕事として企画持ち込まねば腐りそうだな。
昼飯は切りアナゴとミツバでアナゴ茶漬け。飯がちとベトベト気味。一回湯洗いすればよかった。食べてベッドで資料見るうち、ちょっと寝てしまう。起きて六本木のWAVEへ。閉店セール、今日からビデオが割引である。アート系アニメ中心に買おうと思っていたら、もうさらわれているのがかなりあった。マニアあなどりがたし。LDは7割引きなのだが、ロクなのが残ってない。
8時、青山でK子、ササキバラゴウ氏と待合せ。イタめし屋で食事。
「最近はしばらく唐沢さんに会わないでいても、日記毎日読んでいるから、唐沢さんが何をして何を食べているかが全部わかって、会わないでいる気がしませんね」
と言う。いや、実は書いてないこともいろいろやっているのだが(笑)。日記と現代人のアイデンティティーについて、などの話、『おにいさまへ・・・・・・』の話。
白インゲンのカラスミかけ、魚介のスープ風煮込み、子牛肉(切れてたので成牛になる)のモツァレラチーズ焼きなど。ササキバラ氏はベジタリアンなので、ジャガイモのローズマリー風味焼き、ニョッキ、キノコのピッツァなど食べる。マティーニとハウスワインでいい気持ちになり、気が大きくなってオゴる。青山のスカした店で三人でワインさんざん飲んで1万9千円。ベジタリアンがいると安くつく。