15日
水曜日
グルメのしあげ
朝3時ころ一度目が覚めて、F書房の原稿書く。また眠って8時ころ起床。イガつきはなくなったが、まだ右目が赤い。ポートピアホテル30階のラウンジレストランでパノラマみたいな神戸港眺めつつ朝食バイキング。お値段1800円で内容は日航大阪よりよし。地代の関係か。また半熟卵、カリカリに焼いたベーコン、トースト、サラダ、コーンスープ、フルーツ。
昨日の分の日記をロビーのグレ電から井上事務所に発信。その他、仕事関係のメール数通。便利になったというか、ここまで仕事が追いかけてくるというべきか。もっとも、これだけ仕事のある身でもなければ今回のようなゼイタク旅行はなかなか出来ない。
ホテルチェックアウト。余分な荷物を宅急便で東京へ送ったあと、タクシーで元町まで。きのう金成さんに教わった元町高架下商店街をエンエン歩く。ここは三宮のようにキレイになっていない、まさにヤミ市的状況がまだ残っており、ベルトなど革製品とカズノコを並べて売ってたり、ブランドものの時計とエロビデオを隣り合わせで売ってたり、ほとんどフリマ状態。日露戦争時代の軍服売っている店もあったし、あるジーンズ屋ではジーンズの棚の上に“戦車用ライト1万8千円”なんて書いて無造作に置いてある。そんなような店が軒を並べて、どこまでも一直線に伸びている、異様な光景。アヤシゲな場所が好きな者、神戸へ来たらここをのぞかざるべからず。古書店がかなりあり、ほとんどがゾッキ屋的な店だが、マニアックな店も中にあって、ちょっとした掘り出しものを見つけたりなどしてしまった。あと、韓国製のあやしげな電子グッズなど。
12時、北町にタクシーで戻り、ステーキの店『あら皮』(本当は“あら”は鹿の字を三つ重ねた大層な文字。バルザックの小説からとったもの)で今回のグルメ旅行の仕上げ。K子はヘレ、私は店のおすすめのイチボ肉をレアで。このイチボ、香ばしくてジューシーで、まさに肉食の醍醐味を味わうといった感じ。レンガ造りの窯で焼いたという工芸品みたいなステーキで、外側はカリカリとしてほとんど焦げている状態なのに芯の部分はまだトロを思わせる柔らかな生。塩と胡椒のみでどうしたらこういう複雑な旨みが出せるか、と不思議に思うほど。おそらく、肉の熟成度が違うのだろう。神戸のいいところは、そんな店なのに雰囲気が庶民的で、夕方の仕込みをしているマスターが、若いもん相手に関西弁で“・・・・・・タバコの販売機をやな、あれ、一万回に一度くらいな、ジャックポットや言うて、大当たりでドサドサ出てくるようにしたらば、みんなそこへ行って買いよると思うんやけどな。バクチやのうて景品や、言うたらうるさいこともあらへんやろ。どや?”などと大声でノンキな会話しているところだろう。二人でイタリアワインをハーフで一本とビール一本頼んだが、真っ昼間だったので、かなり酔いが回った。まあ、おかげでお勘定のときも平静でいられるので多少回った方がよかろう。ホテルカリフォルニアの三日分の宿泊費と、ほぼ同額。この三日間で、ほぼ、文庫本の重版一回分くらいの金を使った。こんどベストセラーでも出したら、ここのディナー(ステーキコースだけでランチの二・五倍の額)に挑戦してみるとするか。いつになるやら。
タクシーで新神戸、2時の新幹線ひかりで帰京。車内で、高架下で買った少女漫画雑誌付録(昭和32年光文社『少女』付録『ひょうばん! こわいマンガ特集』)をパラパラ見ていたら、表紙の人形の製作が川本喜八郎と出ていた。うへー。車中、F書房原稿続き。まだゲップが肉の味。
東京駅からタクシーで帝国ホテルへ。ワールドフォトプレス社ミレニアムパーティとやらいうもの。顔を出してくれと言われたので義理を果たして行く。開宴アタマにインディアンの映像が上映され、21世紀にはモノマガジンはネイティブのスピリッツを持って進む、とか言う文字が出る。そうかそうか、メガネや時計はもう持たぬ文明を目指すのか。それからドコドコとインディアンのタイコ鳴らした楽団の演奏。上の方がスピリッツとか言い出すと、会社というのはイイ味になってくる。もちろん、裏モノとしてのイイ味だが。そう言えば会場入り口に占い師のボックスがズラリ並んでいた。楽しみなことである。
何人かの出席者(ネクタイした業界人)が寄ってきて、ファンですと名刺交換。とはいえ岡田斗司夫はアメリカ取材ちゅうだし、知り合いがほとんどいない。料理も、あれだけごちそう飽食した後ではパーティ料理などに手が伸びず(寿司くらいつまもうかと思ったが、出店の前に長蛇の列)、早々に引き上げる。神戸に比べると東京はやはり、人が多い! という感じ。
帰って手紙類整理。なんと留守録セットし忘れていたことが判明。いやははははは(と、無責任に笑う)。それから電話立て続けに数本。応対に追われる。NHKしぶとく再交渉あり、1月14日出演となる。衛星だけど。
インターネット関係チェック。牛関係某掲示板、野次馬で書き込んでいる誰やらの正体が私であろうなどとギャグかまされていて苦笑。神戸からちょっかい出すほど暇ではない。
夜はあっさりソバでも、と思ったら満員。仕方なく、隣の焼鳥屋。ワンタンなどを食べて帰る。さて、明日から仕事々々。