裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

月曜日

虚脱の一日

 朝8時起床。まだ、ゆうべの疲れが体全体に残っている感じである。朝食、クリスマスチキンの残りをパンにはさんでサンドイッチにして。

 二日ぶん、たまった日記を書く。モノマガの仕事、角川文庫解説、その他やらねばならぬことがいろいろあるが、まるで手つかず。ワープロの前に坐ってもウトウト、として首がガクリと落ちる。

 コピー不良の整備のためにうちに事務器具入れている会社に電話、係が2時にくるはずになっているが来ない。遅れると連絡あったので昼飯(牛のミソ漬けの焼いたのと豆腐)食べ、銀行で昨日の売り上げの小銭を数えて紙幣に変える。売り上げ清算。と学会が例会誌900冊、官能倶楽部『日曜官能家』がうちのブースで62冊、K子のUA!ライブラリーが40冊。売り上げから打ち上げ代カンパと、現金輸送のタクシー代引いて割ってみると、四五○円ほどの端数を余して、ぴったり。

 3時過ぎにやっと係が来て、修理にかかる。最初は向こうもタカをくくっていたらしいが、やりだすと、スジが消えると今度はムラが出来、それを消すと今度はカスレが出来るというありさまで、6時過ぎまでかかって、“これはスターターを取り替えなければ・・・・・・”という結論に達する。寒いコピー部屋で何時間も作業して、風邪でもひかねばいいが。

 6時半に買い物に出て、その足で曙橋のまさ吉。井上デザイン忘年会。出版社、イラストレーター、ライター諸氏たくさん。出版プロデュース会社の人で、“こないだ唐沢さんがおいでになるというのでふくしま先生の忘年会に行ったのですが・・・・・・”と言う人がいた。いかにもアヤシゲな女性占い師がいるので、一度お引き合わせしたい、などと言う。『モンティパイソン大全』を書いた須田泰成氏も来ていた。私がモノマガに書いた書評をコピーして各出版社に送ったとか。

 イーストプレス倉田くん、この日記の記述を読んであわてて『裏モノの神様』の配本状況を調べたら、取次のミスで配本されていないことがわかり、あわててパルコやABCに自社で配本したそうである。日記も書いておくものだ。

 手塚能理子さん、志村くんとも新ガロなどのいろいろウワサばなし。M沢の話でさんざ盛り上がるが、手塚さんが“なんか哀れな人だよねえ。どんどん自分の居場所がなくなっていくあせりを、ネットとかの罵倒ではらしているんだから”と結論した言葉に、ちょっとハッとした。自分がその時点で、本当に彼を哀れんでいることを発見したからである。

 私はこれまで、立場がどんなに自分より下の人間であっても、憎むときはそんなことに関係なく憎んできたし、こちらの地位がいかに相手より上だろうが、それを考慮して情けをかけたことなどない非情なオトコであった。岡田斗司夫などがTやIのことを“いいよ、あの人たち、こっちの悪口でも言わなければやりきれないんだから”と言っているのを聞いて、甘い、と思っていたほどなのだが、今晩このとき、初めて嫌いな人間を哀れむ気持ちが胸中にわいて出た。年をとったということか、それとも体力がない時だったからホトケ心が生じたか。何か、タクシーの中でも、その気持ちを反芻しながら、不思議な感覚で帰途につく。話すのに忙しくて卵焼きと薩摩揚げ、ウリキムチなどくらいしかつまめなかったので腹が減ったが、疲れているのでそのまま寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa