裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

水曜日

濃密度演劇

 朝8時起床。朝食は昨日と同じG舎のスープ、チキンサラダ、リンゴ。道新チェック、昨日出し忘れたガロ原稿。依頼されといて、“今のガロはなくもがな”などと書く。悪い癖だが、悪い癖は楽しいもので。

 日経ヘルスからインタビュー申込み。ここも他にインタビュイー払底とみえる。雑用どんどん増える。来年早々よりこのマンションの水回り工事だそうで、工事会社がチェックに来る。本とビデオの山を見て呆れような表情していた。昼はK子の弁当のおかずにしたオカラコロッケと、残った飯を握ったミソむすび。

 都庁旅券課へパスポート受取りに行く。記入机あたりでの親子(20代母と小学生の娘)の会話“この写真まるで犯罪者っぽいねえ。チョー面白れえ(これが娘)”“面白えかあ? うるせえ、あっちで勝手に遊んでやがれ(これ、母親)”。顔だけ見ると可愛い女の子としゃれた若いお母さんなんだが。

 帰りに書店で雑誌いくつか立ち読み。流行りとかいう動物占いでいくと、私はオオカミなんだそうである。その性格を見ると“仕切りたがり”“身内びいき”“人と話していても必ず自分の話題にもどす”“何についても評論したがる”・・・・・・当たっているねえ(笑)。もっとも、大はずれしている項目も多々、あり。

 6時半、天王洲アイルアートスフィアで劇団新☆感線公演『ロスト・セブン』。開田夫妻、安達OBさんたちと。以前新宿ロフトプラスワンのガメラトークで大マンザイをやり、一部に感動(笑)、一部に大ヒンシュクをかった相方の中島かずきさんの脚本。公演前に中島さん、客で来ていた樋口慎二氏に挨拶。今回は中島さんの脚本だが、休息はさんで2時間半、ここまで詰め込むか、というまでにアクションとギャグと歌をギッシリ詰め込んでいる。見ているだけで体重が1キロくらい落ちたような気がした。観終わって開田あやさんに感想求められ、“何歳まで観られるかなあ、という感じ”と言ったら“オタクは体力だよ!”とカツを入れられる。とにかく、アニメやゲームに対抗しようと思えばここまでテンポを早くし、仕掛けに凝り、派手にしないといけないのだ、昨今の商業演劇は。私が関わっていた演劇というのは、イッセーのも含めて、やはり“演芸”の範疇にどちらかというと軸足の置かれていたものなのだな、と痛感。役者さんでは粟根まこと、右近健一の二人がサイコー。

 ハネ後、楽屋訪問して、逆木圭一郎氏、粟根まこと氏にラクおめでとうございますと挨拶。粟根氏は私の著作のファンだそうで、恐縮。“定説”などとセリフで言っていた逆木氏に“あれ、アドリブなんですか”と聞いたら、セリフレベルではまず、即興はないのだそうだ。完璧に音響効果と動きをシンクロさせているから、下手なアドリブは不可能だろう。ただ、これは私のようなブタカン経験者にとってきわめて心臓に悪い。今回の公演、特に小道具が多く、階段を使ってのアクションが多い。どこか一箇所でもミスがあったり、転んだりのアクシデントがあるだけで、全体に影響が出る(そこを出さないのがプロ、という見方もあるだろうが)。十年ほど前、横浜そごう劇場でミニミュージカルのブタカンやって、奈落を走り回り、足の裏をパンパンに腫らしたことがあったが、今回も裏方さんはさぞ足の裏が腫れたことであろう。どこかに一景、息抜きでアドリブ会話だけで成り立っているインプロビゼーション的な場を作れば、かなり演る方も観る方もリラックスできると思うのだが、ここらへんは演劇に求めるものの違いなんだろうな。

 休息時間、トイレに行ったら3、4歳の女の子がスカートとパンツをズリ降ろしたままの姿で、小便器の前のパパの袖を“(便器が)高くて座れない〜”と引っ張る。するとパパなる人物、よいしょ、と彼女を便器に座らせ、ドアを開けっ放しにして、自分の小便に戻る。女の子は無邪気にオシッコして、トレペでよくあそこを拭いていた。ロリコンの立川談之助などに話せば地団駄を踏む光景だったろうな。宝はいつもそれを宝と思わぬ者の前に放り出される。

 そのあと浜松町でクジラ料理出す居酒屋を見つけ、入る。K子ともそこで合流。いきなり飛び込んだにしてはここはアタリで、刺身、ステーキ、立田揚げなどいずれも結構。天然自然薯のトロロがうまかった。日本酒がかなり回り、足元フラついたのでタクシーで帰る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa