裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

木曜日

大人の味覚

 本日より猛運転、のつもりがやはり途中で体力ギレ。トシだねえ。
 朝、薬局新聞一本。あさってのオタアミ九州公演のネタのLDを、用事で渋谷に出てきていたフリー編集者のS氏に借りて、ついでにS氏と女房と三人で昼飯食いに出る。女房の仕事場の近くにオープンした南欧料理屋。パエリヤランチだったが、うーむ、イマイチ。食べながらDVDをいつ買うべきか、という話など。S氏、デッキを持っていないのにもうDVDを数枚買ってしまったとか。こっちも同じ。
 それからG書房の最終ゲラチェック。前書きと後書きは明日回しになる。情けない。サイン会の打ち合わせなど。
 その喫茶店の近くにアメリカ雑貨の輸入店がある。大して特色のない店だったが、打ち合わせ終わって出て、新しいカンバンが目についてふらりと入ってみた。知らない間に改装して、あちらのキャラクターグッズが豊富な、なかなか面白い店になっていた。見慣れているところもコマメに回らないとダメですな。女房に言って、福島に新装開店のカチンコに花を贈らせる。
 それから北海道新聞書評記事、書き上げメール。ヘテからE社ゲラチェック。これも、ナオシ分量多いところは後回しにしてもらう。5時また打ち合わせ。担当のKくんに、初版部数のダンパンする。今度の本、判型が特殊で、ちょっと面白い。装丁も井上デザインの平塚くんが凝ってくれてるようだ。井上デザインはここのHPのデザインはじめ、私の『アジアンコミックパラダイス』『世界の猟奇ショー』『快楽特許許可局』などの装丁をやってくれている。ここを読んでくれてるみなさま、装丁のお仕事は井上デザイン(NiftyIDCXR00121)へ!
 官能倶楽部メンバーの若手女流作家さんがいま体調を崩して実家の方で療養しているのでお見舞いを出したいんだが、連絡取ったひえだオンまゆらさんの話によると、実家では彼女が官能小説書いていることはもちろん、占いの仕事やっていることも全くの秘密事項なのだそうな。だから、お見舞い出すにしても一切そういうことには触れず、男性名も控えなくてはならない(家庭の主婦に男性の友達がそんなにいてはおかしい)。官能小説はともかく、占いもダメなのか。まあ、カタギ(特に田舎の)さんにとってフリーというのが無職、もしくはヤクザと同義なのはわれわれが自分で実感してるからねえ。
 そう言えば養子の結婚式で、父親の代わりに挨拶をしろ、と母からこないだ電話があった。以前は札幌に帰ってもミットモナイから薬局に顔を出すな、と言っていたもんだが、少しは息子の職業を認めてきたのか、単に年をとったのか。なにしろこの母親は手塚治虫が医者をやめてマンガ家になったことを
「もったいないことしたわねえ」
 というような人であった。そういうことを言うからバチがあたって、子供たちもそのヨメも全員マンガ関係者になった(笑)。
 結局、G社(G書房とは別)の文庫後書きは明日回しになる。12月刊行の本が3冊(共著入れると4冊)あると、もう限界を越えたスケジュールになる。
 快楽亭から電話。活弁志望の若い男の子がいて、これがいま、山本竜二にセマられて困っているそうだ。
「ボク、そんな趣味ありません」
 と断っても、
「な、お前、昔、初めて寿司食うたとき、ワサビが鼻にツーンときたやろ。なんでこないに辛いもん入れるんやろ、と子供は思うんや。ところが不思議なことに、だんだん大人になってくるとな、そのツーンとくるワサビがないと寿司がうもないようになる。それがオトナの味覚ちゅうもんや。な、確かにそら、アナルは最初は痛い。せやけどな、それを一旦覚えると、だんだんと、それなしではセックスがモノ足りんようになってくる。これがオトナの味や。これ知らんままでは、いつまでたっても子供のセックスしか出来へんで・・・・・・」
 イカニモ山本竜二って感じだが、病院の電話から、それをウレシそうにかけてくる快楽亭というオッサンもまた・・・・・・(笑)。
 8時半、女房と待ち合わせて靴を買いに行き、それから人に教えられた居酒屋で夕食。ここも昨日の和食屋と同じくちょっとスカしたところだが、カウンターから見える厨房は昨日の店の1.5倍はあり、料理係も十人近くいる。従って、料理の出てくるスピードが早い々々。ただし、客が百人は入る大きな作りで、従って“本日のおすすめ”などが品切れになるのもこれまた早い。どうもこういうところは落ち着けないな。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa