裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

土曜日

犬とスッポン

 朝、なをきから電話。イラスト〆切の話。なをき、話している最中に11日が振替休日であることを思い出したらしく、“しめた、これで一日延びる!”と喜ぶ。まったくモノカキにとって、“〆切が延びる”というコトバくらいうれしいものはないよなあ。あと、どういう流れだったか貰ってウレシクないお中元・お歳暮の話になって、これをエエ年した兄弟がエンエンと長電話する。
 外に出てパルコブックセンターで本をちょっとまとめ買い。他に資料調べなどなんやかんやの用事で時間がつぶれ、昼飯を食いそびれ、結局近くの神戸らんぷ亭で牛皿定食。これに納豆をつける。納豆は好物なのだが、女房が“納豆を食べた口でしゃべるな!”と言うほどの納豆嫌いなので、家では禁断の食品。よっく練って糸を引かせた納豆をご飯の上にネトリと乗せ、かきこむと、そのうまさに大袈裟でなくナミダが出そうになった。41のおっさんが
「うう、うう」
 とかムセビながら牛丼屋で納豆飯をほおばっている姿というのは何なのかね。
 帰って少し昼寝、少し仕事、少し読書。講釈師の神田陽司から、彼がナレーターをやったゲーム『ラーメン橋』届く。昭和30年代、シベリアから復員した男がラーメン屋を開店して・・・・・・という設定は面白いが、解説を読んだ限りではゲーム内容そのものがちょっと魅力薄。も少し、高度経済成長に向かって変貌していく東京の様子を肌で味わえるストーリィが欲しいところだ。と、いうか、そういう脚本を書きたいなあ。
 5時、喫茶店でNHKBSのYくんと打ち合わせ。番組にゲスト出演の件。今夜は立川談之助とイヌ鍋食いに行くというと、ぜひとも一緒に、ということなので、8時過ぎに落ち合うことにする。
 7時半新宿。師匠と待ち合わせて、Yくん来るまで近くのオデン屋でつなぎ、長野で鯉の塩焼きを食う旅行の計画など立てる。合流後、風林会館近くの中国家庭料理の店。カラオケボックスだったところを改造したと思えるような、とてもレストランとは思えぬ作りの店。この前来たのは3月ころだったが、おかみさんがわれわれ夫婦の顔を覚えていた。“狗鍋はないか”と聞いたら、あれは冬のもので、まだやってないという。仕方ないので、代わりにスッポンを頼む。鍋の中に、ブツ切りにされたスッポンが(ちゃんと頭も)プカプカ浮かんでいた。

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