裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

土曜日

映画評論タクシー

 朝、週アス一本。今回は時事ネタと裏ネタと裏ブツが我ながらうまく結びつき、書いていていい気持ちだった。
 東中野で焼き肉メン。中野に出て、サンモールのレコード屋で“手塚治虫生誕70年記念特別企画アルバム”『ジャングル大帝』CDセット買う。作曲の富田勲が“劣悪な録音環境で製作したものであり、元テープの保存状態も悪く、発売すればファンを裏切ることになる”として発売中止の仮処分を申請したもの。音楽家にはエゴイストが多いというが、まさにそれ。これを買う人のまず8割以上は富田勲の音楽を聴くためでなく、ジャングル大帝の思い出を聴くために買うのではないか。ファンを裏切る行為はどっちだ?
 その他、モール内の古書店いくつか回り、全部で2万ちょっとほど買い物。帰ってさっそくジャングル大帝聴く。冒頭の『行け、パンジャの子』、ホルンの響きが耳に飛び込んできた瞬間、あの当時の記憶がサンヨーカラーテレビ画面のフルカラーでよみがえる。それにしても、フルオーケストラはいいよなあ。富田勲のシンセサイザー使った“現代音楽”(ケッタイな名称ではないか)より百倍いいぞ。
 郵便が郵便受け口からあふれるほど届いていた。札幌の古書店『じゃんくまうす』からカタログが届く。ここの目録に女房とマンガを描いているのだ。古書店の目録にマンガ連載を持っている作家もそういるまい。もひとつ札幌から、北海道新聞に連載している書評記事で、こないだ『買ってはいけない』批判を書いたときの読者からの葉書。あれをトンデモ本扱いするな、批判するなら根拠を示せ、という部分に赤線が引いてあるが、何通も来ている葉書の文章も赤線引いてある部分も全部同じ。どこかの団体が出させているのではないか? と疑ってしまった。
 しばらく雑用を片付け、再び外出。小岩揚州飯店にてシナリオライターのおおいとしのぶくん、作家の田中文雄さんなどと飲み会。アジア特撮ものコレクターのK氏からいろいろ話を聞く。最近は韓国も台湾も、みんな“まとも”になってしまって、『ファイティングマン』のような、こちらの常識を超えたような傑作は少なくなった由。 9時に退出、かなり酔っていたし、荷物も多かったのでタクシーで帰る。日本シリーズの話題から映画の話題になり、その運転手がやたら映画マニアであることがわかる。いつぞや白井佳夫サンを乗せたとき、すっかり意気投合してしまったそうだ。日本映画では『砂の器』と『羅生門』、それに『天空の城ラピュタ』が最高、だとか。
 平成『ガメラ』の話になって、僕は第一作が一番好きだ、というと“ああ、やっとそう言ってくれる人にめぐり会えた!”と、走行中に握手を求められて、ちと身の危険を感じる(笑)。ぜひお客さんのおすすめを教えてくれ、というので岡本喜八の『暗黒街』シリーズと鈴木清順ものを推薦しておく。これも走りながらメモしていてドキドキした。なんとか命あって10時帰宅。K子にオミヤゲのギョウザと腸詰、肉チマキを蒸して食わせる。

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