23日
土曜日
一富士二鷹サン=テグジュペリ
王子さまは素敵な夢を見ました。
※河崎組撮影現場、ミリオン原稿、『トンデモ本大賞』打ち合わせ
朝3時頃目がさめ、それから間歇的に目を覚まして、途中で5時ころ入浴、また寝て、結局7時半に起床。こういう精神状態のときは悪夢を見るかというと、案外、すごくさわやかな夢を見たりする。中山千夏が『ひょっこりひょうたん島』で歌をうたう夢。“クーガ(豹)が来る”という歌だった。
9時、朝食。イチゴ、リンゴ、青豆スープ。あえて朝のスープは繊維をこさずにザラザラした食感のままで食す。母、もろもろのスケジュールが決まったようで、やや落ち着いたよう。しかし、今度は和室の電気が切れ、修理を頼むハメに。
原稿書きしていたら、あぁルナの乾恭子ちゃんからメール。今日、現場見舞いを約束していた河崎組、もう乾ちゃんの撮影は終わったそうである。うひゃあ、早い。
まだ岡っちは残っているそうなので、あわてて家を出て、新宿の某事務所ビルへ。そこの8階の撮影現場に。幸い、岡田くん、テリー、それにジョユーンさんこと高嶋ひとみちゃんと天海麗ちゃんはまだいた。差し入れは小川軒のレーズンウイッチ。
ビルの一室に青い布をはりめぐらせ、ブルーバック合成のスタジオにしている。ジョユーンさんがもう、金ピカ衣装で大奮闘。CSで公開予定なので、詳しくはそれを見ていただきたい。それからテリー佐々木と天海麗ちゃんが、共に上半身ハダカになって合成用芝居。天海麗ちゃんが脱いで、おっぱいをモロに見られるのだからエロっぽい雰囲気になるかというと、これが全くならずにスタジオじゅう爆笑の連続というのが、河崎組の撮影現場という感じである。監督、モニター放ったらかしでプライベート写真を撮りまくり、テリー兄さんに
「オレのときは全然撮らなかったじゃないか!」
と文句タレられていた。
さらにオープニングタイトルを
「モーリス・ビンダー風にする」
と称して、麗ちゃんをパン一にしてダンスさせる。これをシルエット加工する、というわけ。さすが、麗ちゃんの度胸というかノリというかには恐れ入りましたという感じ。
「あのね、ここで髪を振り乱させて。『メガロマン』風に」
「カントク、メガロマンったって若い子はわからないよ」
「えーっ、中川翔子はわかったよ」
「あれはあの子が特殊だからだよ!」
この演出法は岡っちのときにも
「ここは、『緑の恐怖』の老人風に」
などとやっていて、役者を混乱させていた。まあ、確かにわれわれにはそれが一番わかりやすい演技指導なんだけどねえ。
天海麗のマネージャーさんから挨拶される。川保天骨くんの友達だそうで、なるほど、雰囲気も似ている。
「なぜ『アニメ夜話』ではボトムズをとりあげないのですか!」
と、初対面の私にイキドオる、熱いオタクでもある。と学会のファンで、本は全部持っていると言い、麗ちゃんにもそのことを伝えようとしてあせっていた。
「唐沢先生はな、と学会で有名な人なんだ。知ってるか? と学会」
「知ってますよ、サンタさんのソリ引いてる」
「それはトナカイだ!」
まるで掛け合い漫才。
それからナレーション部分の録音を行う。
「えっと、このセリフは録音したっけ」
「あ、これまだ言ってなかったと思う」
などとやっているのが凄い。スクリプターいないのか。これで出来てしまうのが河崎映画の凄さか。こんな時期に現場見舞いというのも、と思わないでもなかったがいい気分転換になった。
写真撮って、現場見舞い終わり。仕事場までタクシー、ミリオン出版『三丁目の猟奇』コラム残り2本と、まえがきあとがきを片づける。
どっどどどう、という感じ。書いているうちはいろんな思いを忘れて没頭。コラム1本目(2000W)を送ったのが3時45分、2本目(2300w)が5時12分、まえがき(800W)が5時27分、あとがき(800W)が5時40分、さらに担当のYくんから連絡あって、2本目のコラムに一ヶ所あった訂正箇所を訂正して送ったのが5時42分、という能率。もっとも、6時から今日はと学会のトンデモ本大賞打ち合わせなので、出るのはちょっと遅れた。
タクシーで有楽町。ガード下の焼鳥屋『車』に、10名ちょっとの実行委員集まって、打ち合わせ。大会運営スタッフ人選のこと、ゲストのこと、司会のこと、さらには入場料、会場、予算などさまざまなこと。以前岡田さんとの対談でも言ったが、もう、IPPANさんはプロのイベントプロデューサーとしても、I矢くんはプロのイベント演出家としても、やっていけるのではないか。これまでのと学会イベントの運営手腕を見ているとそう思える。もちろん、他のメンバーの絶妙のフォローもある。激しい意見のぶつかりあいもあり、方針の食い違いをめぐってのちょっと緊張をはらむやりとりもあり。一人の独裁でもなく、仲良し倶楽部のナアナアでもなく、きちんと打ち合わせが進んでいく、という感じ。司会役をお願いした瀧川鯉朝くんにもいろいろ、みんな怖いことを言ってオドカス。ちなみに女性司会者はひえだオンまゆら先生。
ざっと打ち合わせ済んだあと、河岸を変えてというので、近所の大衆居酒屋で。日本酒飲んで、IPPANさん相手にグズグズと。お開きはマダ11時くらいだったがちょっと回ったのでタクシーで帰る。帰って、谷崎潤一郎全集で、武智鉄二の『華魁』の原作である『人面疽』を読む。意外にあの映画、ストーリィも何もまったく関係ないと思っていたが、原作からとっているシーンがあったのを再確認した(花魁を華魁と書くのもこの原作の文字使いの踏襲だったか)。
谷崎としては、作中で語られる怪奇映画のグロ趣味満載なストーリィを書きたかったわけで、それを書き終わったあとは尻切れトンボもいいところの終わり方ですましてしまっているが、そこが逆に余韻を残して、文学味を生んでいるという、不思議な作品。この作品を書いた時期の谷崎は実生活では実の妻、千代の妹・せい子と同棲をし、千代と後輩作家の佐藤春夫とを交際させるなど、グロテスクな家庭環境を自ら作り出していたわけだが、そのグロテスクさが作品に見事に結晶した一篇である。