裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

木曜日

山路を登りながら、こうランダエタ。

亀田に勝てば脅される。八百長を受ければけなされる。再選を決めればまたケガだ。とかく日本ボクシング界は住みにくい。

※『トム・ソーヤ』インタビュー、『ポケット!』打ち合わせ、二見書房打ち合わせ。

6時15分に目覚めて、いろんなこと考えつつまたウトウトしていたら、夢で実相寺監督が出てきた。新宿裏の映画館で私と監督が対談。この映画館というのがクラシックでアールデコで、いかにも実相寺昭雄と対談するのにふさわしい映画館だったのが夢とはいえ嬉しかった。しかし、病院から抜け出してきた監督は(リアルではなく、ガロのマンガみたいな絵で出てきたのだが)すでに魂の半ばが彼岸に行ってしまい、楽屋ではほとんどボケ老人状態。しかし観客は満員。どうします? と訊くスタッフに
「なんとかしましょう、全力でフォローします」
と答えて、万雷の拍手の中、袖から二人で出ていく……というところで覚めた。あれから夢の中での二人はどういう対談をしたのだろう。

再度目覚めたら8時40分だった。あわてて起きて入浴、携帯ないので9時チョッキリに母の室。まだ鳴らしてないようだったのでよかった。朝食、ブロッコリスープとリンゴ1/3顆、ミカン小1顆、イチゴ2粒。

国会中継で、女性議員がどうにもダメダメな質問をしており、なんだこりゃ、と思った。意味のない抽象的なこと(今年の漢字が“心”になったが、これを総理はどう思うか、などという愚問)を一分いくらという運営費のかかる国会で質問するな、という感じ。後で調べたら民主党の神本美恵子という議員だった。

疲れたまって、ストレスもひどくて、右の上唇と歯茎の間に口内炎のようなものが出来た。ものを食べたりしても当たらないところだから不自由はないが。パイデザから同人誌の表紙届く。うお、という出来。こんなお遊びチックなデザインをパイデザがやるのは珍しい(井上デザインならともかく)。

いろいろと計画、長期のことは大変にいい具合なのだが短期のものが進まない。ことにこの数日がひどい。気圧だろうか。日記が遅れがちで数日たってから書くので、いろいろ記載忘れ多し。さだやんさん(立川左談次さん)に連絡して、29日の『ポケット!』に出演をお願いしたこと、さだやんさんと言えばダーリン先生が入院したらしいこと。驚愕したが、体調はいいようなので一安心。

記載忘れと言えば、実相寺監督の追悼番組、TBS内での評価が大変に高かった由。関係者の方々が喜んでくれていたそうだ。ホッとする。飯島一彰(飯島敏弘監督の息子さん)さんが、音源を奥様にお渡ししたそうだ。ちょっとドキドキする。一彰さんも、去年、私の『ブジオ!』でお会いしたときが最後だったそうだ。

日記つけ、原稿書き。昼は炒めキャベツを8番ラーメンの上に乗っけて。1時、時間割へ行く。ワールドフォトプレス『トム・ソーヤ』インタビュー。70年代の雑誌特集だそうで、私はマンガ・アニメ雑誌のことを話す。とはいっても、WPPの雑誌だけに、写真図版はたっぷり載せるが、文章はちょっとだけ。私も最初はじゃア短くまとめて……と思っていたのだが、いったん話し出すとアウトの頃のこと、ファンロードのこと、少年チャンピオンが元気だった頃のことなど、ダムが決壊したかのように語り出してしまう。女性ライターのUさん、聞きながらちょっと顔がひきつっていたが、確かにこれまとめる
のは大変だろうなあと思う。

仕事場の書庫で写真撮影。カメラマンさんが非常に撮りやすいと喜んでいた。準備の間、Uさんが何かお勧めの小説は? と聞く。文体にセンスがあってテンポのいいものがいい、というので谷譲次の『テキサス無宿』を勧めておく。

取材班帰ったあと、オノが“ハイこれ”と一万円札を差し出す。何かと思ったら、さっきWPPから渡された、取材代だそうな。トッパライはありがたいが、むき出しというのが凄い。

それからちょっと、オノと今後のスケジュール確認。某事務所が私にいろいろ協力の意志ありと。来年はむちゃくちゃ忙しくなりそうだなあ。忙しくしているのは自分なんだが。

お気楽に話していたら、4時半過ぎ、オノに携帯。なんと、『ポケット!』打ち合わせ、4時からとばかり思っていたら3時だったとのこと。あせって事務所を飛び出し、時間割へ。オノは待たせた二人に
「30分も待たないで電話ちょうだいよ〜」
と文句言っていた。

まあ、明日は中野監督なんで、大した問題もないのだが、何をネタにするか。例により、何度か“これなんて……”と出てはやっぱりダメか、で静まり、また“これで……”と出てひとしきりぱーぱーやってまた静まり、というサイクル。4回くらい繰り返して、やっとテーマが決まった。

終わって出て、そのまま、今度は東武ホテルに移動して二見書房打ち合わせ。オノはYくんに名刺のみ交換して帰る。来年の死亡録本の打ち合わせ、それからその他もろもろ。精神的ダメージと、そこから得たもののプラマイの話。モチベーションというのは自分の外部にないとツラい、という話。自分内部にはどこかに“そんなに頑張るな”という自分がいるのである。Yさん、『あぁルナ』の『コムテツ』の話をして、ああいう芝居の唐沢さんならまた見てみたい、という。

別れて事務所に戻り、少し雑用。……していたら、もう10時近くになってしまう。あわてて帰宅、サントクで買ったソーセージ、ジャガイモなどで簡易ポトフを作って。猫、目やにがひどい。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa