2日
土曜日
♪あの人は〜あぁ“熊”。
太ってて毛深くてさあ、なにか似たようなオトコにモテるのよ。
※熊本講演 京都へ移動 太秦の割烹・冠太
朝6時半起床、王林噛りながら原稿(ミリオン出版原作)2本執筆。これで家を出るのがギリギリになる。寝ているK子に予定を告げて出発、8時。
9時25分の日航機で熊本へ。1時間25分の余裕があれば楽勝だろうと思っていたら、レインボーブリッジに入ったところで事故で渋滞。一時は蒼くなる。なんとか無事、到着。もっとも時間ギリギリで、そばでもロビーで食おうと思っていたのが食えなく、サンドイッチ買って機内で食べる。
クラスJなのでフライトは快適。飲み物サービスの時にお菓子がつく。行きは練りエビせんべい。空港に熊本学園大の女性スタッフ二名、出迎え。名刺もらうが、一人はモー娘。のメンバーの一人と同じ読み。
「会う人ごとに言われるでしょう」
「ええ、でも、おかげで就職の面接のときは有利でした」
と。大学までタクシー。町中にあるのでキャンバスがせまい、と言うことだったがどうしてどうして、東京の町中の大学などよりはるかに大きい。
だだっぴろい教室が控室。講演まで時間が二時間ほどあるというので、男性スタッフとオタ話。彼は私のNHKの円谷ばなしも聞いていたという。『ウルトラファイト』の話などで盛り上がり、女性スタッフは置いてきぼり。
講演は100人ほどの聞き手。
「熊本はこのあいだ、知り合いの結婚式に博多に来たとき、初めて寄りまして……」
と言って客席見渡したら、その結婚式の当人のぴんでんさん夫妻と
いちろうさん、獅子児さんがいた。話は実相寺監督のことからはじめて、多様性の重要さということを雑学とからめるという内容。自分ではうまくオチをつけたつもり。あと、時間ぴったりに終わるところはいつも我ながらうまい。終わってぴんでんさんに挨拶。
終わって空港まで、また女性スタッフ二人が送ってくれる。さっきの男性スタッフがなごりおしそうにしていたのを見てモー娘。と同名の女性スタッフ、
「本当は彼がおくりたかったんです」
と笑う。彼女はこんど仙台に行くというので、『一乃谷』を推薦しておく。
実は講演終わってすぐ飛行場に向かわないと、案外時間がタイトなのであった。それでも道が空いていて、20分くらいの余裕があって着いたので、楽勝と思っていたら、タクシーの領収書書きがやたら手間取り、時間かかる。なぜかというと、宛名が“熊本学園大学学翔学会ゼミナール推進協議会”とかいうやたら長いもので、これを正確に書かないと受理されないため。こっちは外で待って、それからお土産に馬刺し買って、送る手配して……とかやっていたら時間がなくなり、
「××便で伊丹にお発ちになる唐沢俊一さま……」
と呼び出されてしまった。同名モー娘。の子にマイミク約束して、機内に走る。クラスJで搭乗口から近かったので助かった。
機内のお菓子はナッツタルト。何か意固地になって貰うのを拒否している乗客がいた。1時間45分で伊丹空港。いつも通りそこからバスで京都。京都駅から嵯峨野線で太秦。スタッフのSくん迎えにきてくれて、撮影現場へ。いまかけているめがねを作った、ヤマモト眼鏡店二階の倉庫。山田監督と久闊を辞し、少し撮影を見る。ドラキュラ役の盛井雅司さん、ファントマという劇団の役者さんだそうだが、あぁルナの岡田くんそっくり。
カッチーこと、特殊メイクの勝又さんにも久しぶり。
「あやさんにあやまっておいてください」
と言われる。去年の猫三味線の撮影で、あやさんが彼女に“マイ牙(個人用の吸血鬼の牙)”の制作を頼んで歯形を送ってきたのだが、
「あやさんの歯が小さすぎて、どうしても牙の装着部分が作れなくて」
だということ。
「ワイヤを歯のすきまに通して固定させようと思ったんですが、歯が子供の乳歯なみなんでそれも出来ず」
いろいろと先輩の牙屋さん(この言い方が笑える)にも頼んでみたが、難しいねえと言われて諦めたとか。
「あの顎と歯茎の小ささでは将来、入歯を作るのも大変だと思うので歯はくれぐれもお大事に、とお伝えください」
とのこと。
今日は眼鏡店の都合で8時に完全撤収とのことで撮影終わり、監督と監督の弟さん(!)と一緒に冠太へ。弟さんは普通のサラリーマンだそうだが、今回の映画のプロデューサーをやっている。大将、病気でちょっと小さくなった感じだが元気。私のファンで弁護士の卵のAくんとその彼女も。『必殺!』友の会の人びとも。今日、五味龍太郎さんがいらっしゃるというので待っていたらしいが、五味さんの体調が思わしくなく、いらっしゃれなかったとか。一緒に写真撮影多々。熊本直送の馬刺し、熊本で食べられなかった身で味わう。レバ刺しが珍味。あとは牛のオイル焼きとぐじ飯。この『冠太』、大将の病気でいまは店を臨時休業しているというが、私が来るというので今日明日は開けた、という。じゃ、明日、母を連れてくるから、と頼んでおく。
山田監督にいろいろ話を聞く。橋沢さんが京都に来て披露した私の物まねというので爆笑したとか。今度見てみたいものである。あのオトコは、山田監督に
「カラサワさんに。山田監督にモテる秘訣を聞いてきてくれと頼まれた」
と言って、コツを聞き出したそうである。私はそんなこと頼んでない(と、いうか山田監督に会いに行くってのも知らなかった)。人にかこつけて自分が聞きたがっているのでアル。
五味さんも後で顔を出してくださる。『大魔神』『妖怪百物語』と、ひょっとして東宝特撮より私をシビれさせた両大映作品で悪役をやった人である。一ファンの私でも興奮するんだから、この人に出演を
してもらう山田監督の狂喜が思われる。
11時過ぎ、太陽ホテルに。二年前の撮影に来た部屋(ベッドをまたがないと部屋の奥に行けなかった)よりはまあ、広い部屋だが、変わらぬ安宿。とはいえ、ベッドで寝られるだけでこないだの西成のバックパッカー宿よりはまし。