裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

月曜日

ジョージ・学習院

ラプソディー・イン・ブルーブラッド。朝7時半起床。昨日のどんよりとはうってかわった上天気、だった。少なくとも午前中は。入浴洗顔、9時朝食。スープ小カップ一杯とブドウ1/3房、セミノール(だか不明だがとにかくオレンジ)半顆、イチゴ二粒。それに毎朝記録は省略しているがトマトジュースコップ一杯。

日記つけ、今回の騒動の件に関する総括レポートまとめる。卒業論文かもしれない、と思うと苦笑。本来ならへばるような体験だが、こうやってまとめてみると、そこに意義があったと思えてくる。ふむ、フィードバックにはこういう効能があるのだな。

そしたら当該の相手先からメール。時間たってやや落ち着いたとみえ、今度はきちんとした内容。書いたレポートをメール仕様に書き換えて返信。ついでに私のコーチング・スタッフのYさんにレポート提出。これでツキモノが落ちたように気分がおさまった。

11時半、母の室になをきが来たので、ひさしぶりに兄弟揃って昼食。頬肉のシチューと大根のサラダ、缶パインのチーズクリーム和え。いろいろと雑談。GW進行というのはすでに形骸化しているという話。こないだ、と学会の大沢南さんの奥さんに電話インタビュー受けた角川春樹事務所の『ランティエ』が校了から10日で発行されたが、そのときのメールに曰く
「DTPの発達で、今じゃ、雑誌はすぐできちゃうんですね。お盆進行や年末進行なんて、ほんとはなくてもいいのに、悪習として続いているんでしょうね」
これは確かだと思う。

他に、音楽を趣味にしているマンガ家はなぜか自分をマンガ家と呼ばずにミュージシャンと呼ぶという話とか、作品で大事なのはストーリィやキャラクターじゃなくてデティールなのだが日本の評論家はストーリィ評やキャラクター評は出来てもデティール評が出来ないとか、そういう話。母がわれわれの業界ばなしをことごとく、自分の知りあい話に変換してエピソードを話すのが面白い。どういう人間関係の中にいたんだか。

堀口大學『黒ン坊』の歌詞(「黒ン坊の赤ン坊/赤ン坊の黒ン坊/黒ン坊の赤ン坊は/赤ン坊でも黒ン坊」)を教えたらなをき大喜びでメモしていた。
「今日の収穫だ」
と。

2時出社して時間割。ミリオン出版Yくん。新刊『猟奇の社怪史』手書きポップ書き。ブックファーストでポップ100枚という大量注文あった由。もちろん100枚手書きするわけでなく、手書きしたポップをスキャンして100枚ポップを作る。こういうときは字の下手糞さが恥ずかしい。ペン習字でも習うか。あと、『こんな猟奇で』の文庫化の話。こっちから話すつもりは全然なかったのに、
「ところで今年は……」
と例のプロジェクトの話をしてきたので、簡潔にプロジェクト撤退の経過を話す。複雑な表情をされた。

一旦事務所に戻る。電話数件。なんとかという企画会社からこないだどこだかでやった講演が大変にアンケートで評判がよかった、講演料請求書をどこだかに送ってくださいという話。それからこないだインタビュー受けたなんとかという雑誌からも大変評判がよかったので、同じ会社で出しているなんとかという高齢者向け雑誌でもインタビューをお願いしたいという話。
「今日はマネージャーが所用でいないので明日改めて彼女に連絡してください」
とどちらにも。どこからのなんの話だったかも全部忘れた。私が高齢者向け雑誌読まないといけないか?

まったく、まだマネージャーがうちの事務所に来てからわずかな間なのに、ここまで依存してしまうとどんどんスケジュール管理痴呆症が進む。梅田佳声先生の『幽』のインタビュー、編集のNくんに電話口で伝えたインタビュー予定日と佳声先生に伝えた予定日が、よしゃいいのに自分でスケジュール組んだので全然違っていた。その時間には私にもう予定が入っていて、どうすべえと青くなった。ところが今日、佳声先生側から来た時間変更依頼があり、Nくん側の都合とツキ合わせたことで、最初に間違えて伝えた時間で結果オーライとなって、私の方がスケジュールを変更する必要がなくなった。とんだスラップスティックだが、何か最近はこういうことが連続してあって、自分の中に
「私の周囲のトラブルは、かなりドタバタはするが結局万事うまい具合におさまる」
という根拠のない確信まで生ずるに至っている。各人の人生にもし天の脚本家がついているとするならば、私のそれはドタバタ・コメディの得意な人物らしい。で、あるから、今回の例の件も、私はある程度後からの意外な解決に自信を持っている。根拠のない自身だが、“「根拠のない自信はくつがえりようがない」(京須偕充)”という言葉もある。

6時、また時間割。二見書房Yさん。こっちはまず最初に例の話になる。向こうは大変気の毒そうな顔をするが、こっちとしては精神的にはすでに終わり、あとは残務処理である。秋口発行の単行本の話。これは前から企画あったものなのですぐとりかかれる。ある意味5年かけての執筆である。それと、と、いま進行している大きめの企画にからめて、前から話だけしていてペンディングなっているFくんとの企画を復活させたいという話もする。ミリオンも合わせて、一日三冊も次の本の企画が立ち上がるのは凄い。

また事務所もどって雑用、進まぬと思ったら雨が降り出してきていた。9時帰宅。小松左京『威風堂々うかれ昭和史』(中央公論社)拾い読みしながら酒。今日び、対談本はどこの出版社も売れないと言って出ししぶるのだが、こんなぶ厚い対談本が出せる小松左京はやはりすごい。

ホタルイカ酢味噌、肉団子、油揚炒めなどでホッピー三杯。読書に疲れて(これは『ジャズで踊って』に変わり明日からのトイレ読書本にする)、スパゲッティ作るシーンだけ観たくてDVD『ゴッドファーザー』観はじめたらとまらなくなり、通して観てしまう。映画史の奇跡とも言うべき、全てのカットが名カット、まったくダレることのない2時間15分。『風と共に去りぬ』だってこうはいかない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa