裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

31日

金曜日

ラブドール・ザ・ブッチャー

このダッチワイフ、なんで栓抜き持ってんの?朝起きたら5時半、さすが昨日早寝したからかな、と思ってまた寝たら今度起きたのが9時。昨日は早寝の筈なのに、体がもっと寝よう寝ようと要求するのである。

ぐっすり寝たせいか、ひさしぶりにスケールの大きい夢を見る。時空をある程度ゆるやかにつなげる装置が開発され、北海道のある雪山の頂上付近が西部開拓時代のアメリカの山中につながっていて、それを観光地として開放している。行ってみると、そこで捕れた山鳥の料理などを出しており、人間の商魂のたくましさに感心するという夢。

もうひとつは夢の中でやたらヒステリックに激高するもの。知りあいも多く出てくるのだが、それに提案した企画が通らないのに怒り狂い、水をぶっかけたり、ナイフを自分の手首に当てて自殺をほのめかしたり、いや、実際の自分もこれくらいダイナミックにキレることができたらさぞや気分いいだろう、と思える夢だった。

入浴して朝食9時半。ホウレンソウのスープ、アボカド、イチゴ。テレ朝のスパモニを見たら、今日で赤江珠緒アナが降板。前任者の不倫で、“絶体そういう心配のないのを連れてこい”という局長の指示で大阪の朝日放送本社から抜擢されたと聞いたが、確かに起用されたときは色気のイの字もないような子だったのに、この半年間くらいで驚くほどあかぬけて、美女というイメージになってきた。私の朝の楽しみだったのに残念。

日記、欠け部分を補ってサイトにアップ。12時、家で弁当使う。大根の醤油漬けが美味。急いで事務所に向かい、1時、どどいつ文庫伊藤氏と。この数日、マンションでの小学生投げ落とし事件が話題になっているが、伊藤氏、このマンションの下でエレベーターを待って乗り込んだとき、一緒に待っていた女性たちが、乗って来なかったそうだ。

「やはり、不審者と思われているんですかねえ」
とぼやくでもなく普通に言うのに笑う。
伊藤氏帰ったあと、仕事場のパソコン(パイデザがワープロソフトを最新バージョンにしてくれたので快適)で少し仕事。

3時、時間割にてNHKと打ち合せ。次回アニメ夜話『ヤッターマン』の回に出演。岡田さんがコメンテーターに回ることは知っていたが司会はNHKのアナウンサーと中川翔子、というので驚く。中川翔子にきちんとした進行役が勤まるのか?

ヤッターマンの時代背景を語り、その歴史的役割を示す。こういう話は別ワクとってもらいたいというのが本音だが。変ににぎやかしの能力があると、テレビ的には絶体ソッチの方で使われる。

終わって事務所に帰り、やれやれと思う間もなくまた打ち合せ、今度は上野。銀座線上野広小路、広小路亭前で幻冬舎のトテカワYさんとS儀編集長と待ち合わせ、風月堂喫茶部で打ち合せをする。基本は今度幻冬舎から出る『漫画版・神聖喜劇』の解説を書く件なのだが、その他、私の本の企画の件も。

内容はまだオフレコだが、夏までに一冊書く本に、さらに新書が一冊加わる。かなり忙しいことになりそうである。二冊分、内容を口で説明するが、どちらも非常に面白いと言ってくれる。

「カラサワさんは去年、本をほとんど出さなかったからもうテレビやラジオの方へ行ってしまって、書くことに興味を無くしたのかと思って」
と言われてあわてて否定。そりゃ他のことも楽しいがそれはあくまで余技として、であって、自信があるのはやはり執筆の分野である。別件で他社に出している企画の、スベリどめもお願いしておく。

トテカワYさん、今日はことに可愛い。と、いうか、これまで二回ほど、彼女との会合はいずれもネガティブな件であり、そういうお知らせを持ってくるときの彼女は表情が硬く、額に皺がより、目の下に隈ができていた。こういうときは可愛さが半減する。今日はひさしぶりに明るい話題であり、表情がハツラツとしている。可愛い顔にはやっぱり笑顔が似合うのである。

45分ほど話して、Sくんと別れ、トテカワと広小路亭の談笑独演会に行く。開催が毎月の最終金曜日なのでこれまでブジオがあって行かれなかった。今日はひさびさ。
客席に珍しくはれつさんがいるので、隣の席に陣取り、Yさんを紹介。彼女を見てはれつさん
「カラサワさんが可愛いという言う女性には珍しく、ホントウに可愛い!」
と叫ぶ(この人は声がやたらデカいので普通にしゃべっても叫ぶように聞こえる)。

会場、最初は6分くらいの入りだったのが、やがて満席になる。途中で入ってきたぎじんさんが最初は座れなかったほど。まったく、真打になってからこっちの人気の上がり具合はすごい。この会場もたぶんそろそろもっと広いところに移らねばならなくなるだろう。『狸賽』、『巌柳島』、それになんと『愛宕山』。それぞれ談笑流に改変はしているが最小限という感じで、いかにも談笑といった、テーマの根底からのくつがえしはなし。たまにはこういうのもいいか。狸賽の子ダヌキがかわいい。もっとも過激なものを期待してきたようだったはれつさんは残念がっていた。

いつもはそこで打ち上げとなるのだが、今日は時期も時期だし場所も場所、というので上野公園で花見、ということになる。とはいえこの数日、昼はポカポカしているが夜は寒い。ことに今日は風が強く、ふるえがくるほど。ではあるが、桜の強制力というのはすごく、みんなぞろぞろと上野公園へ。途中、鈴本の前で今日の談笑の話に出てきた『にゃん子と金魚』の顔を看板で確認、みんなそこで思い出し笑い。

寒い々々、しかも桜の木の下はみんなすでに場所がとられているので歩道の敷石の上に青いビニールシート敷いて座る。おでんの鍋を(いつも打ち上げやる『味兵衛』からの提供)暖めるガスコンロの火だけが暖。誰か曰く
「ホームレスの炊き出しみたいですね」
と。ぬるいビールがありがたい。寒さしのぎに焼酎を割ってのむ。

K田くんがトテカワYさんに出版の話などいろいろ。何か私がらみの企画の話が出て、K田くんが
「あ、それいいですね。うちで……」
と言いかけると、Yさんピシリと
「あ、それはもううちでいただいてますので」
と。さすが、いくら可愛くても編集者。

一時間ほどワイワイとやりながら飲んで、さすがに寒くなり、Yさん、K田くんがともに編集部に帰るというのに便乗して、私らも辞去。食べたりないのではれつさんと笹塚のチャイナハウス3号店まで。

カウンターで豚足煮込みなど食べていたら、植木さんとジュンさんが来た。今まで本店で食べていたらしい。席を奥の方に移し、飲み直す。植木さん最近ますます学者っぽくなっている。はれつさんの声が酔うにつれますます大きくなっていって、すごい。のどがつぶれないだろうか。いろいろと説教される。1時過ぎ、タクシーで帰宅。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa