裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

木曜日

世界の病理ショー

スティーブ、いいかげんに民族主義テロはやめろっての。朝8時半起床。
朝食、スープとブンタン半顆、ブドウ。

三遊亭円右師、死去。いわゆる“昭和の新作落語”を平成に継承していた人。なぜか一時はCMにやたら起用されていた。70年代のエメロンのCMの、和服で石鹸の詰め合わせを風呂敷で包んで持っていく美女を眺めて、
「お歳暮を持って御近所回りか。CMでしか見かけなくなった光景だな」
とつぶやく、竹箒で路地の落ち葉を掃くお爺さんももうすでに見なくなって久しい。
われわれがなじんでいた顔は
http://www.geikyo.com/kaiin/profile/2.html
↑こちらの顔なのだが、最近は
http://gendai.net/?m=view&g=geino&c=070&no=18749
↑こんな顔になっていたのだな。

それにしてもここ数ヶ月の訃報の続き方は異常。宮川泰氏と共に訃報があったのがミニ四駆マンガの徳田ザウルス氏。作中に登場するマシンが実際にキット化されるなど、ミニ四駆ブームのさきがけだった。児童マンガの絵の典型といった人で、人物の目や口の描き方など昭和の少年マンガの息吹をそのまま持ち越してきているという感じだったのだが、私と同い年だったのだな。“死”というものが最近、異様に身近である。

FRIDAY四コマをK子にせかされながらやる。あと、明日のブジオ最終回用告知文。二十四回分のゲストを書き出す作業をするが、この半年はホントウに毎週、いろんな人と出会えた濃い半年だった。杉ちゃん&鉄平とはこのラジオがなければせいぜいが追っかけのファンにとどまっていたろうし、熊倉一雄さんにしてもついに遠目に見るだけになっていたかも知れない。人脈を広げるという点で非常に有意義な番組だった。

昼は弁当に大根の味噌汁を作って。大根がきわめて美味。2時事務所入り。ポッドキャスティングの件、I井アナにメール。ガメラ原稿遅れに遅れているもの、やっと対談まとめの最初の部分を送る。

ビデオ、蟻のサナギ缶詰(以前後楽園でトークショーをやったときにもらったもの)、ザザムシ、オノの沖縄みやげのミキドリンクなどをカバンにつめこみ、新宿へ。初老のタクシー運転手がこちらの指示を全然聞かず、自分の決めたルートばかり通るのにちとイラつく。

まだ今日のフードが足りないので、東口の知音食料品店で買い出し。中国のドリンク、お菓子類、それに臭腐乳などを買い込む。両手に紙袋を下げてロフト入りして、早々と気合い入っているおぐりと打ち合せしようと思ったら、肩掛けバッグを知音に忘れてきたことに気がつき、あわてて取りに戻る。二度目のロフト入りのときに気がついたが、看板が『聞け! そして食え!』になっている。ロフトの若い人が考えたコピーなんだろうがおぐりのキャラじゃない。さいとうさんに言って書き換えてもらう。

ざっと打ち合せ。おぐりは今日、有隣堂さんに行って平積み
されている『魂食!』を買い、
「今ならサイン会の整理券がつきますが」
といわれ、
「いえ、私、著者なので」
と答えたそうな。

お客の入りを彼女が心配していたが、開演時に30名ほど。ちょっと寂しいので入り口近辺の席の人たちを真ん中の席に移動させた。しかし平日夜なので、サラリーマン諸氏は遅くくる。最終的には60人ほどのお客さんが入ってまずまず。

楽屋に笹公人さん訪ねてくれる。朝日カルチャーセンターで今度講師するそうで、一緒に出てくれないかと頼まれる。応諾。7時、トーク開始。反応よろしく、しかも濃いお客さんが多く、客席から補足トリビアがどんどん出る。缶詰めを開けてザザムシや蟻を試食してもらう。蟻はなかなかマイルドでクリーミィな珍味。

前半はまず無難に切り上げ、物販コーナーでおぐりのサイン会。二十人以上のお客さんが並ぶ。中に、ブジオのブログ書き込みの常連さんであるKOWさんがいた。IPPANさん、しら〜さん、まるさん、気楽院さんなどの姿もあり。阿部能丸くんも。二村ヒトシさんも来てくれていた。また朗読をやりましょうと話す。

休息時間中に『世界の料理ショー』のビデオを流す。
「これ、声優さん誰ですか?」
と数人の人に聞かれた。黒沢良は若い人にはもうポピュラーじゃないのか?そういえば最近の声優さんにはこの黒沢さんとか、中村正さんみたいな、おしゃれおじさん系がいなくなった。

後半は植木不等式さんを壇上に上げて食のうんちく、さすがである。チャイナハウスの蟻酒の蟻が、白頭山の中国側の土地でとれた蟻を使っていることなど。おぐり、ブジオのADのS川くん(沖縄出身)のお母さんが隣家のうるさい犬を食べてしまった話などする。いろいろと缶ジュース、亀ゼリーなど開けてお客さんにふるまう。中でも臭腐乳は強烈で、ドブのようなにおいが瓶のフタを開けたとたん、店中にただよいはじめる。
「塩ッ気のあるドブ」
と食べた人が表現したが、さもありなん。植木さん曰く、
「ドブもあれは発酵しているんです。微生物が繁殖していますから。だからこの臭腐乳とニオイが同じなのも当然なのです」
と。

9時半、盛り上がって終わったが、まだサイン引き続き。ヨン様の写真入りのポカリスエット(?)はおぐりが
「そこのサラリーマン風の方に、奥様へのおみやげで」
「そうだな、奥様いそうなお客さんはあの人だけだし」
「なんちゅーことを!」
まず無事にすんでよかった。ただし、やはり食べ物イベントのときは(と、いうか臭腐乳のせいか)飲食の注文が少なく、ギャラが出ないことになってしまった。
打ち上げは『青葉』。おぐり、植木、モナぽ、しら〜、バーバラ、三才の斎藤くん、豊田くん、オノなどのメンツで(それにイベント終わってから来たQPさんなど)。途中で卵スープがこぼれて、私の右手にザップリとかかる。あわてて店の人が氷を持ってきてくれて、さらに台湾製のメンソレータムみたいな軟膏を塗ってくれた。アヒル燻製うまし。

今日はイベントの後には珍しく酒も食も進んだ。12時、おぐりと、彼女に何か仕事の話があるというTくん辞去。そのあともワイワイやっていて1時半近く、しら〜さんと植木さんとタクシー乗りあいで。いろいろグチばなしも出る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa