裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

木曜日

君は回鍋肉(ホイコーロー)の妻だから

僕のお肉を口にくわえて涙ぐんでた君よ〜。7時半起床。この頃寝坊続きなのでてっきり8時半だとカン違いし、あわてて入浴。なかなか朝食の電話こないので問い合わせの電話かけて、初めて1時間カン違いしていたことに気がつく。

朝のワイドショー、渡辺恒三民主党国体委員長。老人パワーというか、タヌキというか、なみいるコメンテーターたちのツッコミをものともせずワンマンショーにして終わり。古いタイプの政治家をひさびさに見て、懐かしい気分になる。これに比べたら小泉首相含め、みんな書生っぽである。

9時改めて朝食、ホウレンソウスープとイヨカン半分、イチゴ3粒。青汁に砂糖抜きカフェオレ。読書と日記つけすまし、原稿書き。フライデー四コマとコラム。大して苦労せずに今回はスイスイ。終わって弁当使う。ホウレンソウおひたしと焼きタラコ、卵焼き。

事務所へ出て、オノとスケジュール打ち合せ。インタビュー等がかなり詰まっている。露出が多くなるのはいいことだが、その露出のモトとなっている原稿仕事が進まないのでは本末転倒、週イチは原稿書きのみの日をつくらねば、と言っているそばから
「でも、結局空いているのこの日だけですよね」
になる。

ゲラチェック、宣伝頼まれた映画会社への宣伝文のFAXなど、いろいろ。ガメラの試写の招待、昨日この日記に“送ってもこぬ”と書いたら早速FAXされてきた。双葉社から角川にすぐ連絡行ったのだろう。

3時に家を出る予定が雑用いろいろで10分過ぎになる。事務所を出たところで、女子大生に「あ、カラサワ先生だ! 握手してください!」と握手求められる。昨日といい今日といいどういうことか。100匹めのサルではないが、女子大生100人に私の顔と名前が知られ、その結果女子大生という女子大生が私を知ったのではないか。

タクシーで東京駅。新幹線は3時56分発なので余裕、と思って、実際246に出るあたりまではスイスイだったのだが、お堀端を過ぎるあたりからやけに車が混みはじめ、ベテランの運転手さんも「なんでこんなに混むのかね?」と首をかしげるような案配になり、八重洲口にたどりついたのが50分。あわててホームにかけこみ、1分前にやっと間に合った。車中、しら〜さんとK子と落ち合う。あぶないところだった。

今日はこれから仙台でみんなでクジラを食べる会。1時間半、ウトウトしながら仙台まで。途中で雨が降り出し、仙台に到着の際にはかなりの降りになる。タクシーで駅から5分の江陽グランドホテル。仙台ではまず有名なホテルで、なぜかというと入り口、ロビー等に、ところせましと並べられている彫刻や絵画のコレクション(社長の趣味とか)のためで、“美術館ホテル”の異名があるらしい。

なるほど凄いが、しかし入り口前にギリシアの武人像があり、そこから中に進むと仁王像があり、さらに中にはギリシア、中国、インド、ヨーロッパと各国取り混ぜた彫刻群、それに巨大なレイヨウやヘラジカの首の剥製、なんだか『怪盗ルパン』の挿絵っぽいような絵画など、よく言えばバラエティ豊か、わるく言えばゴタ混ぜ感覚があり、美術館というよりは骨董屋のイメージが。

部屋の内部はそういうこともなくスッキリで、椅子などヨーロッパ風で結構。30分ほど休んでまた階下に下り、三人で他のメンバーを待つ。開田さん夫妻、ナビゲーターのあのつさん、それからみなみさんなど来る。mikipooさんが最後に遅れて来るのを待つ間、あやさんが
「じゃあさっき前を通った本屋さんに行っていようかな」
というので、
「いや、このホテルのロビーの展示物を眺めているだけで退屈しないぞ」
と言う。まさに、一個々々にツッコミどころがあるような展示物ばかりで、飽きないという点では非常にいいホテルである。

無事mikipooさんも来て、雨の中、歩いてクジラ料理『一乃谷』。行ったら既にモモちゃんと傍見さん(去年10月から仙台勤務)が待っていた。親父さんに挨拶、こないだのブジオへの鯨肉提供のお礼を述べる。

すでに膳の上にはクジラの各部位の刺身(赤身、カワ、尾の身、睾丸、子宮、生ベーコン、生さえずり、鹿の子、ハツ、歯茎等々)が大皿に盛られており、さらにさえずりのベーコン風が自家製ゆず胡椒と共に出る。ビールを待ちきれず全員が箸を争って延ばし、それぞれ好みの部位をとって口に入れ、
「ンまい〜!」
と絶賛。mikipooさんはクジラというものを食べるのは生まれて初めてだそうだが、それで大感激していた。

続いて肉ジャガが出る。なんだ肉ジャガかと思う勿れ、肉が豚でも牛でもなくクジラのコロ。クジラの濃厚な脂の味わいがジャガイモとシラタキにしみ込んでもう絶品。さらに、同じくクジラと炊いたウドの一皿、ウドのほろ苦さがクジラの甘味とマッチしてもう最高。

そこでお待ちかねのステーキとジャーキー。あやさんが“昔ウチ(千葉県)で食べていた惣菜のクジラの味だー!”と大喜び。さらに竜田揚げの山盛り。K子はお造りを気味の悪いことに醤油なしで食べている。こっちの方が肉のうま味をダイレクトに味わえると主張するが、さすがに猫ではないのでそれはちょっと。ビールから酒に変え、さらに地酒『日高見』を、10人で2升はあけた。

それから(当然ステーキのあとの汁をご飯にかけて食べたあと)ハリハリが出て、クジラユッケが出て、もうさすがに食えません状態。鯨飲というが鯨食もその限りをつくした。しかし、これだけうまいクジラを食わせる店にして、仙台人には鯨肉を食べる習慣がないのであまり流行っていないという。確かに仙台牛がある土地で、あえてクジラには食指は動かないかもしれない。しかし、それではあまりにもったいなかろう。

大将、東京へ出てくる計画もあるというので、食材調達のルーツさえきちんと保てるなら、宣伝などバックアップすることを約束する。ただし、そうなると気の毒なのはあのつくんであるが。

話題いろいろ、某女性が昔つきあっていた左翼インテリ暴力男の話とか。ワイワイと11時くらいまで。みんなはさらにそれから仙台の有名なガンダムバーに行くと騒いでいたが、われわれ夫婦はホテルに帰り、早々と寝る。明日はトンボ帰りで東京である。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa