裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

日曜日

撃ちてシャーマン

まじないません勝つまでは。朝7時起床。6時半ころ目が覚めてはいたが夫婦揃って起き上がれなかった。今日は昼からと学会例会、その後、大久保で杉ちゃん&鉄平のコンサートを聞きに行く。どちらも日記につければそれだけで長文の一日になる。

入浴して、自室で朝食。冷蔵庫の中にエビフライのサンドイッチがあったので食べる(案外うまかった)。日記つけ、10時半にK子と連れ立って出かける。地下鉄で新宿まで行き、そこで山手線乗り換えで高田馬場。K子がと学会例会に誘った二人(K子の簿記勉強仲間。一人は昨日も来た男性、もう一人は知らない女性)をビックボックス前で拾ってタクシーでグランド坂。

今回も何やら難しいような学会と隣り合わせである。すでにかなりのメンバー揃っている。12時開会。最初の発表は山本会長、というのは会の発足当時からのルール。

1992年の発足から14年、よくもまあ飽きずにやっているものよ、と感慨深し。私が物書きになった初期に、まがりなりにも自分のスタイルを確立できたのは、ひとつが“帽子とメガネ”というトレードマークを作ったこと(後から習い性となったが、これは最初は意図的だったのだ)と、もうひとつがと学会発足に関わったことだろう。文筆業としては後発だった故にどこでも外様扱いだった私に、ここでやっとホームグラウンドが出来たのである。

私の中では、SF大会から独立して独自のイベントを立ち上げるのに奔走した2003年が会員としての活動のクライマックスだったように思う。(02年7月13日、03年6月7日の裏モノ日記参照)。それ入れて三回、総合監督・司会を務め、IPPANさんI矢くんといういい後継者も出来、今年からは相談役みたいな立場に退いて、少なくともと学会に関しては楽隠居の身である。

途中、恒例のパンとハムのおやつも出、発表を半分くらい聞いたところで辞去。用事でこれも中座のK子とタクシーで新宿まで。そこから山手線で新大久保まで。待ち合わせの時間までちょっとあったので、駅前の喫茶店でちょっと新聞など読んで時間つぶす。“時間をつぶす”という行為自体、すごく久しぶりな感じがする。大学時代に戻ったようだ。思えばあの頃は時間をつぶしてばかりだったような気がする。にも関わらず、今よりはるかに忙しく充実していたような毎日だったのは何故だろう?

4時、駅前でオノ、母、それとおぐりと待ち合わせ。労音会館R’sアートコートまで。受付で言って入れてもらう。会場、満席とはいえどまだチラホラ空席がある。彼らの実力から言えばもう満席立ち見でもいいくらいなのだが逆に言うと、完全に売れ筋に入っているより、これくらいの時の方がずっとプロデュースしがいがある。

母がなんかはしゃいで、オノやおぐりに私の子供の頃のエピソードをいろいろ話す。それ自体はイヤではないが、女性たちのいる場で
「この子はね、昔……」
とやられるのはもう50間近の人間にとってはかなりテレくさい。反応に困る。

会場にはアニメソングのCDが流れているが、『アニマル1』だの『タイガーマスク』だの、ちょっと古い。客層が20代なのだから、それに合わせたアニソンを流した方がいいんじゃないか、と思った。いちいち、おぐりに“これはね……”と余計な解説。見ると、なんとブジオの写真とブログ担当のNくんの姿も。おお、と嬉しくなりこっちから挨拶に向かう。海谷さんは親戚の結婚式帰りとかで、礼服で来ていた。

やがて開演、内容は文で説明するまでもない、ブジオでおなじみ、アニソンとクラシックの絶妙な融合。それに加えてトークも実に結構。女子高で大受けのあと男子高でハネられた話とか、昔鉄平くんがフジの樹海でパンツ一丁で演奏させられた話とか。そして刑事物コントまでやる。ちゃんとクラシック演奏や劇伴などやっていれば一流で通るものを、なぜおふざけという悪評をかぶる危険を冒してまでこういうことをやるか。“ウケ”というものの魔力だろう。

客のウケと笑いは舞台上に立つものにとり、何より強力な麻薬なのだ。CDに入っている曲、入っていない曲とかなりの数を演奏。美少年好きの母は案の定大拍手、美少年好きかどうかわからないが今回の杉&鉄からの誘いを大変喜んでいたおぐりも、もちろん、去年暮にコマで初めて触れたときから“コレダー!”と思っていた私とオノも、共に大満足。

最後の方で、何と
「今日は客席にいろんな方がいらっしゃってます」
と、スタンディングを要請された。他に梅垣義明、清水ひとみさん始めとするセクシー寄席のメンバー、ポカスカジャンののんちんこと大久保さん、それにTBSアナウンサーの安住純一郎さんなども立って挨拶。

終わってロビーに行くと、二人がCDにサインをしている。このファンサービスをケチらない姿勢に大いに好感。打ち上げ誘われる。母は帰るがその前に4月のライブのチケットを買っていった。

打ち上げまでちょっと時間あるので、おぐりと別件打ち合せもあり、海谷さん、オノと近くのサイゼリアで。そのあと、劇場近くの居酒屋で打ち上げ。いろんな人がいて、いろんな話が出て、楽しい打ち上げであった。杉浦さんとおぐりが共に名古屋地方出身であり、その杉浦さんの奥さんが私やオノと同じ札幌出身であることがわかったり。

おぐりがホントウにごきげんで鉄平ちゃんと話していたが、ある件でうわーっとドン引きしたり(その分私が大喜びで話に加わったり)。オノはオノでまた杉鉄二人と話を盛り上げたり。所属プロダクションの社長に、今後の二人の協力を切にお願いする。

あいまにちょっとやっかいな仲裁仕事も。電話ながなが。なんとか双方顔の立つようにしてまとめる。それにしてもいろいろやっかいごとが後からおき、それの解決の尻をわれからに背負う男だ。

おぐりは12時で終電あるので帰り、オノは1時ころ“すいません、亭主が飲んだくれて倒れていると飲み屋さんから連絡がありましたので”と中座。私はなおも二人や海谷さんといろいろ雑談、また仕事の話。ふと気がつくとすでに4時。会もそこらでお開きで、タクシー拾って帰宅。いや、いろいろあった一日であった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa