裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

日曜日

中村雅俊・歌『なれあい』

 人はみな一人では生きていけないものだから。チーズショップに入る夢。いろいろ悩んで、さてこれとこれを買おうと決めたとたん、ケースの中の商品がみんなしまわれ、“チーズは新鮮さを保つために一日三時間は貯蔵庫で寝せなければならない、三時間後に来い”と言われ、キレてきびすを返して店を出たら、応対してくれていたお婆さんの店員が追いかけてきて、怒りはもっともだが我慢しなさい、私は60年も我 慢していると諭される。

 食事のベルで起こされ、眠い目をこすりながら食堂に言ったらまだ7時。時間間違えて鳴らした由。9時まで寝かせてくれと頼んでまたベッドへ。8時に結局起きて入浴など。9時朝食。バナナ、リンゴ、ブロッコリスープ。母から洗濯してもらったア リスメイド服を受け取る。

 自室で昨日やりのこした週プレ『名もニュー』を完成させてMくん、おぐり、みずしな各氏にメール。日記つけ今日は12時から対談なので、書き終わってすぐ、タク シーで東急本店。8階の楊州飯店で『薔薇族』対談、伊藤文学氏と。

 編集のカルトさん、S氏、それとK子。私がどこかで『ホモ・テクニック』は、カバーなしのものしか持っていない、と書いたら読んでいてくれたらしく、
「倉庫に二冊だけ残っていた」
 ものの一冊、それから薔薇族創刊号をくださる。対談の詳細は次号『薔薇族』で。しかし、NGではあろうが、次々と出てくる文化人の名前、それのことごとくが
「あの人もホモだね」
 と。ホモ文化人の特長は、ホモを語るときまず開口一番
「私はホモじゃありませんが」
 ということだそうで、
「唐沢さんもそうおっしゃいましたね」
 と。呵々。

 2時間ほどで対談終わり、仕事場へ。酒は飲まなかったが昼にひさしぶりに重いもの食べたので一時間ほど横になって休む。3時、起きだして今日の打ち合わせ用のトンデモ本大賞構成台本ナオシにかかる。発表予定者の
・文部省検定教科書認定・日本最強のデバンカー! 皆神龍太郎
・ミジンコから神々まで笑いのめす生物系ライター! 植木不等式
・中華トンデモのエキスパート! プロフェッサー明木茂夫
・放送禁止落語と放送禁止嗜好が炸裂! 立川流真打・立川談之助
・俺にヘンな漫画を読ませろ! ぶっとびマンガの狩人・新田五郎
 各氏(惹句はクララ・キインさん作)に発表タイトル問い合わせなど。だいたい出 来たところで電話、新潟のYくん。

 いま出てきているんでちょっとお話を、と言うので、東武ホテルで待ち合わせ、喫茶店で話を聞く。いろいろ進退について。人生には機運みたいなものがあり、カチッとそれらが合わさるときは何もしないでも合わさり、合わさらないときはどう必死に努力しても合わさらないものだよ、と持論を述べる。会社をやめるという選択はだいたいがうまくいかないものだが、しかしやめようと本人が思ったら、それはやめるべ きとき、なのである。

 7時、ルノアール会議室。声ちゃんとIPPANさんきている。アリス衣装を取りに一旦仕事場へ戻る。ひろひろから借りたアリスメイド服、おぐりも着られるようでよかった。IPPANさんが本来のコスプレ用アリス服を手に入れていたのだが、や はりアリス服はパニエとドロワーズと組み合わせないと。

 司会三人(私、おぐり、声ちゃん)のセリフ読み合わせ。それからナンビョー鈴木くんが作ってきてくれた時間経過告示用の時計。これがかなり大きく、今回の公演で もっとも金のかかった小道具となる。うまく使いこなせるかどうか、だ。

 本格的な最終打ち合わせは明日なので、今日は時計確認で終わり。しかし、大会ま でついに一週間となったが、IPPANさんも私も今回に関しては
「ま、個人のレベルでやるだけのことはやりましたね」
 という、何か達成感のような気分がすでにある。イベントというのは大抵、前日までやり残したことや、当日までわからないこと等さまざまあるるものだが、これは珍しい。明日くらいから書店に『トンデモ本年鑑ROSE』が並び始めるが、これがギ リギリの刊行になってしまった穴を、どれだけ埋められたか。

 IPPANさんは帰り、声、おぐり、K子、私とタクシー乗り合わせて幡ヶ谷へ、チャイナハウスで食事。ナンビョー鈴木くんも後から自転車で来る。チャイナにはこないだの開口笑のお礼と、あとこういっては東急の楊州飯店に悪いが、その口直し。声ちゃんが“変わったもの食べたいデスー”と言ったら石橋マスター、膝を打って喜んで、
「いいのがあるんだよー!」
 と特別素材のもの(ナイショ)を出してくれる。声ちゃん大喜び。私も、ちょうどこの素材での料理を今度リクエストしようと思っていたところだったので、なんたるタイミング、と喜び、キープお願いしておく。そろそろこれは中国でも手に入らなく なるそうだ。

 チャーシュー、黄ニラと金華ハム炒め、鹿肉のカシューナッツ衣つけ揚げ、貝柱と頬紅菜の炒めなど。紹興酒と蟻酒。最後はリーメン。鈴木くんは自転車、おぐりは京王新線で帰る。私とK子は声ちゃんとタクシー乗り合いで。帰宅して水割り缶飲みながらDVD。チャイナの後で飲んだのは初めて。女性多く、植木さんやしら〜さんなど、蟻酒おかわりするような大酒家がいなかったからだろう。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa