8日
日曜日
除菌の星
飛雄馬よ、このフィトンチッド養成ギブスをはめるのじゃ。朝7時起床、明け方に長い夢を見る。ちょっと構成が複雑なのだが、まず諸星大二郎のマンガがある。南新宿あたりの、高層ビル街をあおぐ瀟洒な坂を上ったところに、築50年以上はたっている日本家屋(と、いうときこえはいいがあばら家に近い)があり、そこに年取った両親と住んでいる40近いのに独身のオカルトマニアの作家がいて、その家の、隠れ家のようになっている二階にはいつも同じような趣味の仲間が集まっては馬鹿話に興じている。毎回、誰か彼かがいわくありげな謎の物件を持ち込んできて、さて事件が 始まる……といった連作シリーズもの。ここまでが夢の“前提”。
で、ある日私が散歩していたら、道に迷ってしまい、白い石がガードレールがわりに並んでいる、坂道に出る。ちょっと向こうに高層ビル街が見える都会の真ん中とは思えないくらい、静かで瀟洒な雰囲気で、開発から取り残された一角だな、と思って歩いているうちに、どうもこの風景、諸星大二郎のあのマンガのあそこじゃないか、と思えてくる。しかし、こんなところに、いくらなんでも築50年の家が、と思ったら、それがあり、縁側に甚兵衛姿の老人が籐椅子に腰掛けてひなたぼっこしている。 奥から出てきた老夫人が、夫にお茶を出しながら私の方を見て
「みなさんもうおそろいよ」
と言う。いつのまにか、私はここの息子になり、マンガの中の登場人物になってしまっているらしい。不審に思いながらも、こういう境遇の主人公になれるなら、とあがりこみ、二階に通じる梯子段を上がる。障子がわりのよしずをあげると、数名の客が、古いチクオンキの回りに車座になりながらクラシック音楽などを聴いており、私 に気が付き挨拶する。
「やあ、来ているね」
と私も笑って、完全にマンガの中のキャラクターになりきってしまい、その輪の中に加わって……。というもの。何か楽しげだった。今回は冒頭の部分だけで終わった が、次回はいよいよ、怪しげな諸星大二郎風事件に巻き込まれてみたいもの。
入浴、朝食如例。ブロッコリのポタ美味し。日記つけたりメール連絡したり、明日からの日常回帰への準備。11時過ぎ、母と家を出て渋谷へ。まずは東急ハンズに行き、母用の合い鍵を作ってもらう。それから出来るのを待つあいだに、衣装カバンの 新しいのとサイフの新しいのを買う。
衣装カバンはテレビ収録このところ頻繁のため。これまではその日の朝、撮影用の服を着込んでいってそのままだったのだが、最近いろいろと指示があったりして次回 のTBSなど、
「数着持ってきてもらってその場で決めましょう」
などというからどうしても必要。芸能人ぽくなるのでどうも嫌なんだが。
サイフは思い切っていろいろ溜めていたビデオショップ等のポイントカード類を全部捨てる。使うときに限って出てきたためしがない。中には長年サイフの中で揉まれ て粉々に近くなっているカードもあった。
仕事場、奇跡特番台本届いている。電話もあり、いろいろコメントの準備。また出て資料本買いにブックファーストにより、立ち読みでマンガ評論のたぐいを読む。どうしようもないものばかりという感想。帰宅、母のおかげで買ったはいいがずっと梱 包のままだったCDラックが仕事場に置ける。
メシ食って、FRIDAYコラム、やや苦心の末にアゲ。効果はとれるが決め技に欠ける、という感じだったので改訂数度。肩がバリバリになったのでタントン。Sという新しい先生がやってくれるがこの人がうわの空の金沢くんもかくやの大兵、たぶん1トン以上はあるという体重をかけて、掌をギュウギュウ押しつけてくる。効くわ効くわ。パルプみたいにひらべったくなったような心持ち。タントンのスタンプカードが新しいサイフにない。ビデオショップのものなどと一緒に捨ててしまったか。
帰り、またハンズ寄って、手持ちカバンを買う。スタジオ入りのとき等に、マネージャー役の人に持たせるサイフ代わり。これまでは吉田カバンの肩掛けの付属の小物 入れで代用していた。出費ではあるが、揃えるときに揃えてしまわないと。
あとの時間で遅れていた日記書きなどの雑用。9時帰宅。メシ、ワカメとキウリの酢の物、グリルラム二切れ、頬肉シチュー。ビールと日本酒。知り合いの家の息子が42だか3でやっと再就職(以前のところを3年前にリストラ)できた、ただしバイト扱いでまだ一ヶ月目だそうな。聞くと哀れという気になるが、親類に土地持ちがいるので数年後にはそこの遺産が入る予定らしい。なら別に頑張らなくてもいい。ウチはそういうミステリ小説に出てきそうな親類がいないということが前からわかっていたので、私もなをきも豪貴もガンバらないといかん、と若い頃からドタバタやってきたのだ。いまだ大波に翻弄されているようなものではあるが。自室にもどり、ウイス キー水割り缶一本。ビデオ見つつ。