裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

木曜日

最低産業

 所詮は虚業に過ぎませんよ。8時起き、ミク覗いたりしているうち風呂に入りそこねる。昨日までの紀伊國屋に来てくれた知人たちのサイトを回る。おおむね好評のようで安堵。開田さんのあのポスターから今回の舞台のラストが、という話に、ちと驚く。ライブに今後足を運ぶと言ってくれた人もあり。朝食アボカドとイチゴ。

 JR西日本のボーリング大会についての報告で、記者席から呆れるほど横柄な大阪弁で悪口を投げつける人物あり。社会正義というものを取り違えているのではないかとは思うが、その口ひげの顔がいかにも横柄キャラなのに笑う。人は顔に従う。

 母に昨日の感想を聞く。
「キヨを演った女優さん、手足が細くてきれいだわねえ!」
「小栗さんの演技は土や日向の匂いがする」
「あの大柄なお爺さん、幸せな人生ってことが伝わってくる演技だった」
「あのお婆さんもあの歳でああいう舞台に出られるのは幸せよ」
 ……おお、と納得しそうになってあわてて
「いや、お爺さんの方は本当のお爺さんなんだがお婆さんの方はまだ20代の女優さんが演じておるのだ」
 と教えたら驚いていた。
「あの体型は戦前の女性の体型で、いま珍しい。貴重よ!」
 だとか。

 入浴、体重64を割る。いい感じ。11時、出て新宿。アルタ裏のうどん屋さんでうどん食べて、楽屋入り。橋沢さんが
「もう終わりなんだなあ。あっと言う間だなあ」
 とつぶやくように言っていた。水科さんも
「一ヶ月公演みたいなもの経験しちゃうと、三日間って短いですよねえ」
 と。ティーチャ佐川真先生とセリフのキッカケを確認し、立ち位置とセリフもう一度舞台で繰り返していたら、『ふらない用』にビデオ回しておぐりがレポート。
「こちらスーパーバイザーの唐沢センセイです。今回は出演もしておられます。 で、ダメ出しで泣き言を言います」

 清水ひとみさんとは携帯の番号教え合い。睦月影郎さん、カンパンマンさんなど清水さんの役を絶賛している人のこと教える。余してはいけないのでと学会チラシを手伝いの人に、パンフにも折り込んでもらう。三橋さんがそれ見て、東京大会に行きたいという。招待状出しますよ、と言ったが、
「あ、ダメだ、俺その日四国だ」
 と。しかしそれにしたって、三橋さんがと学会に興味があるとは意外だった。

 そうこうするうち客入れ始まる。さすがに楽日は大入りである。GWの大型連休とぶつかったため、告知の時点でもう予定を入れてしまった方々が多かったろう。来年はそれも考えねば、宣伝広告をも少し具体的に(フリのお客を増やせるように)したかったとか、外部プロデューサーの仕事としていささか今回は悔いが残る。いいお客様はすでにうわの空はゲットしているのだから、向後は“これからいいお客になる可能性のある人”をゲットする方向でいかないと。

 で、あっという間に最終ステージ。さすが、楽屋のモニターで見ていても、客の入りがいいと受け方が違う。ほぼ全てのギャグにワッワ、もしくはザワッという感じで反応がある。私の出番もまず大過なく、ゴリラのところではきちんと笑いがとれた。引っ込みがチトまずかったが。お母さん役の奈緒美さんとも少し芝居してもよかったかもしれない、などとここでいろいろ考えたってどうしようもないのだけれども。

 終演、恒例の三本締め。すぐ走って送り出し。驚いたことにTBSのKさんが観に来てくれていた。いや、本当に驚く。テレビ局の人って、こういう場合、いくら招待状渡そうが誘おうが、まず来るものではない。忙しいし、そういうつきあい全てを受けていてはテレビ関係者はつとまるまい。まして私はレギュラーでもなく、今度特番でおつきあいするというだけの間柄だ。それを花は贈ってくれるわ、観に来てくれるわ、
「テレビ界にもいい人っているんだ」
 という感じであった。

 あと、週プレMくんも来てくれる。耳元に口を寄せるような感じで
「おっもしろかったです!」
 と。これも彼らしい。よかった。藤本和也さん来てくれたので、打ち上げに誘っておく。白夜のTさん夫妻もいるのでひとりぼっちにされる心配はあるまい。

 バラし、私はポスター回りだけ少しやったあと、邪魔にならぬよう藤本さんやワークショップ経験の女性たちとマシェーズへ。雑談してから、打ち上げの店『虎の子』へ。もちろんあのトラノコではない大衆居酒屋のトラノコ。

 最初指示されていた店でなく別店舗の方へ回される。ティーチャ先生、おぐり、藤本さん、モナぽさんというメンツのテーブル。若手が来るまで少し待つ。藤本さんにおぐりを紹介。おぐりは絵柄から藤本さんを女性とばかり思っていたそうな。和也という女性は少ないと思うが。

 橋沢さんの声を藤本さんが褒める。そう、確か井上ひさしが
「いい喜劇俳優の条件とは声が顔を裏切る人」
 として、三波伸介などを上げていたが、橋沢さんも声だけ聞くと洋画の渋い二枚目の吹き替えが出来そうである。聞いたらテレホンショッピングなどで本当に外人の吹き替えなどもやっておられるそうだ。

 しばし歓談の後、席をいくつか移る。立川談春さんも見えておぐりがいじられていた。しかし顔が大きい人だ。水科さん、小林三十朗さんに励まされたり、座長に
「いつもいろいろやってくれていますが、今回は出演までしてくれて、威厳をなくしました」
 と大入り袋渡すときイジられたり。

 海谷さんと、来年の紀伊國屋の告知法について相談など。つまみで出たチキンナゲットなど、普段だったらまず口をつけないものだが、無性に食べたくなって、食べるとまたおいしく感じる。疲労が味覚を変えているのか。なんだかんだで追い出しまでいて、クタクタになって帰宅。

 演技とかよりもプロデュースを業とする者として内部から劇団公演を見られて、学ぶところ非常に多かった。充実したGWだったと思う。さあ、明日からまた原稿書きの日々。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa