裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

金曜日

ヌく年くる年

 除夜の鐘ハアハア(もう何だかわからん)。朝6時半起床、寝床読書。神保町で寝床読書用に買った昭和十年刊の本だが、これは偶然ながら今連載している某誌の企画のそのまま明治大正版といった趣。これ素材に扱えば一冊本が出せるなと企画を思い 浮かべる。 入浴、体重はかるがまだ一昨日食った肉が残っている。そういえば一昨日の八起ではお父さんが釣ってきたイワナの骨酒なんてものまで出た。朝食、半熟卵一ヶとタン ジールオレンジ一ヶ。冷スープカップ一杯。

 なにやらカスパール・ハウザーを思わせる“ピアノマン”の話題でワイドショーは持ちきり。つい、“♪あれは誰だ、誰だ、誰だ”と口走る。“あれはピアノ、ピアノマーン、ピアノマーン”。謎の事件だが人も死んでおらず、ロマンの香りただよう事件で、尼崎の事故や監禁王子に比べコメンテーターたちもリラックスして楽しそうで ある。康芳夫さんならすぐさま来日させてコンサートを開かせるだろうが。

 出勤、11時仕事場着。いつぞや電話かかってきた某誌から電話、その話を記事にした掲載誌の送り先を教えてくださいとの内容。そのときはいろいろ話した末に
「じゃ、どこかでお会いして」
 とか言い出して、今まで話したのは何だったんだ、と思いながら、こっちの空く日 取りを言うと
「ああ、そりゃ厳しいな。じゃあ、いいです」
 とか言って、NGになったんだ、とか思っていたらいきなり連絡が来る。よくこれでいままで大きなトラブルが無かったもんだ。

 あと日テレからも電話。こないだの紹介コメントの件。昼飯、黒豆納豆に明太子、シジミ汁で。1時、時間割で『ダ・カーポ』インタビュー。アタマのよくなる本ブームにつき、コメント。ギャグ的な話受けてライターさん(いささか笑い上戸の気)は大笑いしてくれるが、使用されるのは数行のみ、だろう。マガジンハウス編集部宛に トンデモ本大賞招待状を数枚、進呈。

 気圧がかなり乱れているよう。眠気が急にきざしてきて、パルコに寄るつもりが中止。仕事場に帰って、少し仮眠。息苦しくて目が覚め、また寝るという繰り返し。3 時半くらいまで。なぜ昼寝というやつは息が苦しいのか? 起きて仕事、書きおろし本の件を二つ、ほぼ同時進行。電話、講談社から二件。講談社は今日人事異動の発表があり、
「今回は大した動きはないでしょう」
 と聞いていたのだがあにはからんや、『FRIDAY』と『WEB現代』の両方とも、担当が異動してしまうことになった。特に『FRIDAY』は担当Tくん、副担当Mくん、副編集長のK氏までが部署を離れる。連載そのものはアンケートでも好評だから打ちきられるということはないだろうが、一気に担当者三人がいなくなるというのは〆切や打ち合わせのダンドリ含めて、かなり引継ぎをしっかりしないと面倒なことになりそう。少し憂鬱になる。原稿書き仕事そのものが忙しいときに、こういう人事がらみのストレスが増えるのは荷だなあ。もっとも、TくんもKさんも、移った先でいろいろとこちらにも仕事がありそうな部署なのが救いだが。『WEB現代』の Yくんは『アフタヌーン』。さて、こっちはどうか?

 昨日忘れていた花の手配をする。明日から青山のビリケンギャラリーである逆柱いみりさんの個展に送る予定のもの。それからあとは夜までずっと、書きおろし用の資料をネットで検索。以前書いたものから流用するつもりが、改めて見てみるとあまり 出来ないということに気がついたため。

 8時半、船山。明日K子たちが行くのだが、私は別件で行けないために、船山さんとの某企画の打ち合わせで。この店の常連さんという女性占い師さんに引き合わせら れる。彼女、中学生相手の塾講師もやっているのだが、
「生徒の間で『トリビアの泉』の視聴率は100パーセントです」
 という。
「教師の自己評価にはいいですよ。生徒が机の右端を叩く数を数えれば、今日の自分 の授業がどれだけ理解されたかが一目瞭然ですから」
 とのこと。また、アメリカにこのあいだ行ったとき、彼女が何か言ったらアメリカ人たちが
「ソレ、“75ヘェ”ネ」
 などというのに仰天したという。向こうでも浸透しているようだ。

 料理、マスノスケの塩焼きを中心に、お造り、空豆饅頭、桜エビのかきあげ、しらすごはんなど。途中でいきなり6,7人のお客さんが入ってきて、席をつめる。今日初めて来たという、女性二人組が隣になり、席を詰め合った仲という変な共通意識で 会話がはずんだが、そのうち一人が北海道出身、またジンギスカンばなしで
「東京のスカしたジンギスカンはジンギスカンじゃない!」
 で盛り上がる。日本酒熱燗三合と焼酎ロック二杯、そんなに飲まなかったが気圧のせいで体ぐずぐず、帰りのタクシーの車中でウトつき、帰宅してすぐベッドにもぐり こみ、昏睡する。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa