裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

水曜日

カンダ・メメント・モリ

 37564を思え。朝8時までぐっすり。ベルで起こされあわてて朝食、アボカド半個、リンゴ数切れ。日記つけ、本日の連絡メールなど。昨日楽屋階段でコケた足、腫れたり痛んだりしたらヤだな、と思っていたが、いくぶん動かしにくい感じはあれどなんでもなし。運がよかった。一応バンテリンスプレーは持っていく。

 地下鉄で新宿まで、西口食堂街でざるそば一杯すすって昼飯がわり。紀伊國屋へ。エレベーターで橋沢さんと会って、一緒に4階の入り口から会場入り。二見書房Yさんから小栗由加さま宛で花が届いていた。TBSのK川さんからも届いているのに昨日恐縮したが、そのTBSから携帯に電話で、10日の収録日の入り時間が正午にな り、事務所に迎えの車が来るとのこと。あわただしい。

 もう一本花の送り主から電話、週プレMくんから。今日夕刻ゲラ出るので9時には戻してほしいとのこと。夜の部ハネたらすぐ仕事場行って赤入れすることに。連休っ て何? という感じ。

 今日は私の母が観にくるという。果たしてうわの空の芝居がお派に合うかどうかちと心配であるが。見ると小栗由加のお母様もいらしてる。もと鈴木タイムラーのコンビとして挨拶。娘より小柄でキュートじゃないですか。そしたら今度は橋沢さんのお母様までいらしたし、水科さんのご両親も来場とか。俄然、母親参観日となる。

 ここでもあっという間に開場、開演時間。大型GWの中、とにかく足を運んでくれるお客様に感謝。小林三十郎のゲンさんが冒頭でキヨになりすます、というギャグで会場ワッとわく。おぐりはしゃべる全セリフがギャグという感じだが、私が一番好き なのは通知票をヤギに食わせた言い訳で
「ヤギって紙食うじゃん?」
「だってメーって鳴いてたんだもん」
 の二つを意味なくリフレインさせるところ。

 私の医者、やっと医者っぽく見えるようになったか、という感じ。表情を常に明るく、島の人というキャラで、先生一人を孤立させることを目的として。子供のころ、転校先の学校で無邪気な、しかし残酷なヨソモノへの集団いじめも体験している身として、これまで、つい先生に同情的になってしまっていた。稽古、初日とそれが演技のとまどいになって出ていた。ギャグは本来残酷なもの、と割り切って、いじめ側へと回る。ゴリラごっこにひっぱり出されるところでは笑いがわいた。やっと地に足が ついた感じ。

 終演後、お客の送り出しに並ぶ。母は
「見ていてやっぱり恥ずかしいわ、息子の演技ってのは」
 と。水科さんの父上、照れくさそうに丸めたポスターで息子の頭をポンとハタき、見事な江戸っ子言葉で
「お前ェの演技は下手だ! 見てて俺ァ恥ずかしい!」
 と言い捨てて帰っていく。いい愛情表現だなあ、とちょっと感動。

 NHKのYくんとその連れ、松竹のIさん、マイミクの人たち、と学会の人たち、元セブン店員のTちゃんとそのお友達。開田裕治さんとあやさんも。アニドウ上映会仲間のKさんに
「ハマってましたね」
 と言われてテレた。

 休息時間に母が差し入れた穴子寿司をみんなにふるまう。島さんが大変気入ったようで。私は海谷さんの知り合いからのシュークリームをいただくが、何年ぶりかのシュークリームが非常にうまかった。肉体の疲れで甘いものへの欲求が強くなったのだ ろう。

 さて、あっという間に二時間は過ぎて夜の部。昼の部でうっかりしていてテンポが遅れた、先生のつまらない話を聞いて心臓がとまりかけた老人連への声かけに気を配 る。終わってまたお客の送り出し。睦月影郎さん、河崎実カントク。

 PAN PAN PISTOLSの田口尚登さん(あのエイドリアン・ブロディ似の人)にも“ご出演されているとは……”と挨拶される。あと二見書房のYさん“次 は本ですから”と。

 終わって着替え、みんなに挨拶してすぐ帰宅。送られていたFAXに最終の手を入れる。私の書いた原稿へのおぐりのチェック、そのまま活かす部分と、いやいや、原型も面白いわけだから、ト少し表現を変えるだけにとどめるところなどいくつかあって30分ほど考える。字数合わせに苦心した。さて、それを無事返送して、食事をど うしようか、である。

 いろいろ歩いてみるが時間が10時過ぎた休日でどこも休み。仕方なく焼肉の韓国亭に入り、タン塩とカルビでビール、それにコムタン。サムゲタンひとつ頼めばそれでよかったのに(この店で一番うまいのがそれ)と後で後悔。帰宅してK子とちょっと話す。話すうちにに口げんかぽいやりとりになるが、こっちの口調がつい、『ただいま!』の主役・ミキジ調になるのに苦笑。
「ちーがいーますー!」
 とか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa