裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

月曜日

本当にあったフィロソフィー話

 そのとき、死んだはずの哲学者が。朝5時起床、夢(メモに記載)。ネット少し。7時入浴、7時半朝食。母に昨日のK子との話し合いを報告。結局まあ、“あの人では仕方ない”にしかならないのだが。朝食、カボチャとレタス、ブドウにバナナ。雨 蕭々たり。

 自宅で仕事、FRIDAYコラム一本書き上げてメール。それからタクシーで仕事場へ行く。すぐ仕事にかからねばならないのだが、鶴岡から電話あり、徹底したバカ話で午前中をつぶしてしまう。私の中では30代にバカは封印していたのだが、あれはあれで仕事に熱中できてよかったと思う。若い頃のバカは生理現象に過ぎない。歳とってからのバカは徹底して趣味のバカであり、こういうバカは実に楽しい。

 雨降り続く。1時、時間割に出る。NHKラジオS氏と。明日・明後日出演予定の『いきいきホットライン』の件について。内容はまったく問題ナシ。ただ、発表される小泉新内閣の顔ぶれ次第でニュース解説番組などが組まれる可能性あり、そうなると飛ぶ(番組自体なくなる)かも知れないので、その点のみお含み置きを、と言われ る。言われても、どうすることも出来ないしな。

 1時間ほど話し、仕事場に帰る。オニギリ、出かける前に半分だけ囓って出たのだが、帰って残り半分をネズミみたいにムシャムシャ食べる。具はゴボウのミソ炒め。〆切を三日遅らせてしまった『実話ナックルズ』原稿、やっと書き出し。書き出すと 早い。1時間半ほどで7枚書き上げ、3時46分、Yくん宛メール。

 4時時間割に再度。アスペクトKくんと村崎百郎さん。『社会派くんがゆく!』対談。村崎さん“これは対談に載せられない話だけど……”と、某業界有名人のラブホ目撃情報。例によりいろいろ話すが、宅間守の文章センスがいい、という話がしていて面白かった。“オイコラッ雑民、二流三流大学出”なんてのはリズム感覚にすぐれていなくては書ける文章ではない。あの男が社会への不満を文章で発散させるレベルで昇華させていたら、ひょっとして人気コラムニストになったかもしれない。つくづ く、才能というのは人間の“質”には関係ない、と思う。

 2時間弱、話して帰宅。づぐFRIDAY増刊号原稿にかかる。雨の日にこんなに仕事が出来るということは逆に、雨の日だからダメだ、という言い訳が効かないことになるのではないかと思うのだが、しかしこれだけのことを雨の日にもかかわらず、たらねばならない状況に追い込まれたということなのだから、やはりあまり褒められたことでなし。7時21分、完成させて講談社へメール。その件ですぐ担当Tくんか ら電話。エイバックの件についても話をする。要領いまひとつ得ず。

 他の雑用も二、三済ませ、帰宅。タクシーだったが、ラジオでどこだかの寺の55才の住職が女子高生とエンコーして捕まった、というニュースが流れ、中年の運転手さんが“宗教家ともあろうものが”とやたら憤る。私、それに関連して職業における規律、規範観念の話など少し。そこから運転手さん、日本人の誇り論を少し滔々と。私を滅し国に尽くすのが日本人的美学というものだ、今の若い連中は自分の自由しか言いつのらない、軍隊とまではいかないが少し社会奉仕団体などに強制加入させて訓練の必要があるのではないか、と。事件を起こしたのは55歳の坊主であって、若い者にはそれにかこつけてモノを言われる筋合いはないと思うのだが、運ちゃんの弁舌止まらず。個人の自由を何より尊び束縛を(それが社会的責任を有することであっても)嫌う若者の風潮を見たこの世代の反応、二つに別れる。ひとつは事件の主の坊主のように、バカバカしくなって自らも責任や常識から逸脱するタイプ、そしてこの運転手氏のように、自分たちがかつてされていた上からの圧迫、束縛を若い者にも与えよ、と主張するタイプ。前にも書いたが現代日本における張三李四、庶民の声の代表はタクシー運転手ではないかと思っているのだが、彼らの声をずっと聞き続けてきた経験上言えば、この数年で日本の大衆的意見は急速に保守化、というより国粋化してきた(十年くらい前まで、タクシー運転手と言えば労組の人間ばかりで、自民党の悪口しか聞けなかったものだが)。こういう世代、こういう社会的地位の人々の声を、 誰も掬い上げようとしなかったツケではないかと思うのだが。

 8時家で食事会。と、言っても今日のお客はパイデザ夫妻のみ。母のモバイルをウインドウズ(トラブルを起こした)からマックに変更する作業を行いながらの食事。サワラの洋風揚げ、大根と貝柱の煮物、タコのガーリック風味エスカルゴ風、それと牛肉入りガーリックライス。これが実に美味。酒は焼酎のソーダ割りだが、途中でやたらに眠くなり、オチそうになったので、挨拶もせずに自室に帰り、ベッドにもぐり 込んで寝る。がんばった余波が一気に襲ってきた感じ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa