17日
金曜日
なんとオフィシャルうさぎさん
公式にはうさぎさんはアクシデントにより競技棄権、ということになってます。朝6時半起床、パソちょいとやって7時入浴、7時半朝食。キウリとレタスのみのシンプルなもの。仙台カボチャの冷製ポタティーカップ一杯。新聞に小田部通麿氏死去の報。俳優にして住職であり、亡くなったのは京都の自坊において、とある。東映京都における、最も怖い顔をした役者さんで、怖い顔をした役者さんというのは歳をとると、実にいい好々爺になる(吉田義男とか)例が多いから、この人が袈裟を来て法話などをしているところは絵になったろうな、と思う。最も、実際に見たら“卍党が化 けているのではないか”とか思ってしまったろうが。
そんな怖い顔の悪党専門といった人の前職が法務省教官で少年院の指導係、というところが世の中というのは面白い。あの顔でにらまれたら、いかな不良少年どももビビりまくったろう。役者に転じてからはその卍党(『仮面の忍者赤影』の不知火典馬役が代表作)をはじめ悪侍、悪岡っ引き、悪徳商人などで映画、テレビと縦横に黄金時代の東映で活躍、後半生は僧籍をとって(奥さんの実家がお寺で、ここに婿養子に入った。あの顔で婿養子というところがまた凄い)悠々自適暮らすというのはある意味理想の一生かもしれない、と、ふと思う。俳優としては大部屋のままで終わった人だが、昭和三十年代の映画界においては、なまじ浮き沈みがあるスターよりも、コンスタントに仕事が来る大部屋俳優の方がずっと安定した“職業”だった。ましてや小田部氏のように顔で仕事が来る人ならなおのこと。どんな大人気スターでも、大部屋をないがしろにしたら、仕事など出来なかったのである。大部屋というと必ず下積みとか、悲哀とかというイメージで語ろうとする人がいるが、それは現在の目で見た、勝手な感想でしかない。当時は大部屋とはいえスターと脇役とは、住む世界が違うというほどに区分けされていたから、上をうらやんで卑下するなどということもかえってなかった。“世が世なら自分も……”と思える時代の方が、人は悲哀や焦燥、妬み の感を抱き、不幸にしか生きられないのではないか、とふと思う。
http://www.psymage.com/kei/tvkagelist1.html
↑不知火典馬の顔が見たい人は。
8時5分家を出て、15分のバスで通勤。〆切をかなり過ぎてしまっている、青林工藝舎の逆柱いみりさんの単行本解説を書く。“変なマンガ”と切り捨ててくれ、という作者からの注文なのだが、はいはい、とそういう一方的な書き方で書くと、裏を読めないファンから怒りの手紙が殺到したりして困るので、一面でけなしながらも、裏で褒めているとわかるように書かねばならない。なかなか工夫がいるが、その工夫 が楽しい。
最中にTから電話、やはり先の事件のショックからまだ立ち直れないでいる。いい加減に見えるやつで、まあ実際いいかげんな男なのだが、その一方で人との信頼感に非常に飢えており、また過剰な期待を寄せるヤンキータイプなので、信頼を裏切られたショックも大きいらしい。さるにてもIは罪な男である。普段威勢がいいだけに哀れであるが、大学の講義などにもさしさわるだろうから、早く気分をスイッチングさせろ、とはげます。12時半、解説原稿担当のSくんに送る。昼は梅カツオの焼きお にぎり。
NHKから電話で、ラジオ第一放送『いきいきホットライン』出演依頼。最近どうもNHKづいている。9月28と29の両日連続で語ってほしいそうで、初日のお題が“新刊書店”、次の日が“古書店”。別におかしくはないがなにか笑える。打ち合わせを、とのことだが、来週は前半が祝日、後半が大阪行きともうパンパンで、放送 前日のさ来週月曜しか空いてない。
青二プロの人から某件で来たメールに返事、電脳丸三郎太氏から送られたネタからチョイスして形を整えたものを講談社FRIDAYにメール、それからモノマガジン『トンデモノ探索ノート』原稿を書き出し、4時にアップ。すぐ編集部にメール。なかなか忙しい。スケジュールを再確認していたら、長野からの帰京の日と、『BSマンガ夜話』の最初の撮りの日がカチ合っていることに気がついた。夜の撮影にしてもらわないと、まず間に合わない。その日はダメかも、とメール。撮影日はズラせないと最初のお知らせにあったので、今回(第二シリーズ)は一回のみの出演になるか。
5時半、公園通りでケンタッキーのバレルを差し入れ用に買って新宿へ。ロフトプラスワン『くすぐリングス』。宇多まろん、内山さちか、ひさしぶりのモモ・ブラジルなどに挨拶。いつもの解説用桟敷席。児玉さとみこと猫戦車マリィさん。事務所やめてフリーになりました、という。理由を聞いたら、それが大笑い。書いていいのかどうかわからないので書かないけれど。人生ってホントウに、いろんなことがありますね。彼女、暇になったのでうわの空のワークショップでも行ってみようかと、と。 方向性をいろいろ考えているらしい。
桟敷席ではくすぐり男爵がメイク中。他にいつものあやさん、開田さんも少し遅れてきた他、珍しや睦月さんも姿を見せた。春咲小紅、りえ坊の二人と最近仲良くしているので(オレもしらじらしいな)、そのつながりらしい。あと、今日は別に仕切りではないのだけれど斉藤さんも、なんとスク水姿になって(今日はスクール水着大会なのである)わきに座る。スク水が脇に座ってものを売ったりしているというのはどういう空間であるか。村木さんとツチダマさんも来るはずだったが、来ない。聞いたらちょっとトラブルが受付であったとかのことで、エッと驚く。聞きつけた斉藤さんが、客席にいた海谷さんに携帯の連絡先を聞いて、すぐ処理。大したことではなかったらしく、後から姿は見せるとのこと。それはいいが、スク水姿の斉藤さんがいろいろ電話をかけたり客席を走り回ったりしているのを見て、やはり頭がクラクラする。 どういう空間か。
試合は“スク水似合う軍団”“似合わない軍団”の対決になる。これに、宇多まろんやモモみたいな、“どんな衣装もそれなりにサマになっちまう派”と、春咲、りえ坊の“すでにして似合うとかどうとかいう問題ではない派”が加わって、大混戦。とはいえ、さすがにくすぐリングスも三周年、以前の何でもアリな混沌的状況の悪ふざけ、といったこの世のものではない世界から、とにもかくにも、“ショー”として形が整ってきたものになる。これを物足りないと思うか、手慣れて形が出来てきた、と 見るか。すべての芸能ごとの、これは永遠の課題であろう。
よくなってきた点のみを挙げるが、選手たちの、リング上での自分の役割をきちんと認識した役者ぶりは見事としか言いようがない。すべてのアドリブがおのれのキャラに忠実に演じられている(ことにりえ坊は凄い)。あと、“似合わない軍団”の内山さちかとジェーン・マヤ、ことに内山さちかは特に水着姿をさらすのを極端に恥ずかしがり、これまでとはまったく異なった色気が出た。一方で、そのままスク水現役であるかのような、あんな、ハルウララ、ひろひろの三選手、はじけっぱなし。ことにあんなの輝きぶりはまさに“スク水を得た魚”。睦月さんが感心したように、
「オレはもうウン年も前から、倉本あんなのビデオにはどれだけお世話になったか知れないのに、いまだあの若さなんだからねえ」
と言っていた。
お楽しみ宇多まろんのほにゃららトークはほにゃららにしゃべって、実は全然内容がほにゃららでない話。いつぞや(かなり私参加初期のくすぐリングスで)彼女が連れてきた、と書いた疑似カレシの東大の院生の身に降りかかった自業自得のバカ話。東大大学院生と言ったって若造であって、若造というのはやはりバカなのである。大 笑い。
とにかく、見て、しゃべって、笑って、驚いているうちに人生が肯定されてくる。開き直って、崖っぷちで自分たちの魅力を最大限にさらしている子たちがたまらなくいとおしくなってくる。年をとってもさほど涙腺がゆるくはならないタチではあるのだが、そういう子たちのいわゆる理想の人生たどっているプリンセス・みゆきが
「ここ来たと亭主に知られると離婚されんで」
と言いながら登場したときには、涙ぐんでしまった。最近、子育ての方にシフトしてしまい、以前のあのカリスマがなくなった、と噂で、流れた自宅ビデオではやはりフツーのおっ母さんになってしまっていたようで、嗚呼、と思ったものだが、壇上でマイクを握ったときの存在感は、やはりプリンセス・みゆきであった(壇上から、今日のことは日記になんて書けばいいんだ? と訊いたら、“ただのおばさん”とのことだったが、本人が旦那に話してしまったようなのでまあいいか)。
仕合終わっていろんな人と談笑。ぐれいすさん、神田森莉さん、非常におひさしぶりの村田らむさん。福原鉄平くんも。村木さんもやっと駆けつけて(打ち合わせが長引いたとか)、海谷さん、ツチダマさん交えて少し話す。来年の紀伊國屋公演の話も 少し聞く。おお、というような嬉しい内容。開田さんがそこに入ってきて、
「早くボクにポスターを描かせてくださいよ!」
と催促する一幕もあり。ツチダマさんは斉藤さんのスク水姿に度肝を抜かれていたようだ。裏方同士、互いに意識しているのかもしれない。
打ち上げを五階の居酒屋で。神田森莉さんにファンの人とかを紹介される(あとでミクシィの方にマイミク追加願いが来た)。睦月さんと開田夫妻が“お腹がすいた”と言うので、ちょっと抜けて、『幸永』に行くことに。らむくんも誘う。男爵には今日もギャラをいただく。次回からは辞退。人生を教えてもらってお金までいただいて はあまりに冥加に尽きる。
幸永、幸いに空いていてすぐ座れた。極ホルモン、豚骨タタキ、テールスライスなど。食べながららむくんの、『BUBUKA』(この誌名の由来ももうわからなくなりつつあるな)での非人道取材の話を聞いて、転げ回って笑う。サルを殺してその肉を食う話がもう、一編の悪趣味スラップスティック文学足り得ている。で、本人が顔といい人格といい、そういう鬼畜なことをするタイプにこれっぱかしも見えないところが実にいい味である。何だろう、ひどい運命を底なしにずぶずぶ自分の中に取り込んでいる凄みがある。しかし、そろそろ年齢から言って、そういう鬼畜仕事からは足 を洗った方がいいような気がするのだが。
真露のホッピー割をガブガブやってかなり脳がアルコール漬けになる。開田さんと 自分の残った人生の話などになる。
「私の残りの半生は〜にかけますから」
「ほう、言い切ってしまいますか」
「言い切りますとも」
これで目的達成したあたりでコロリと逝く、なんてのが後からみれば最高に格好いいんであるが、そうもいかないか。2時過ぎに帰宅、シャワーだけ浴びる。全身肉と酒とスク水くさい。