裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

日曜日

西川のりおは楽屋で大きな顔をしている。

 上方よしお・談(もうちょっとやってみるか)。朝6時50分起床、入浴。目が覚めたとき、驚くほど激しい雨の音が耳に響く。またか、と驚く。今日は早稲田でと学会例会なのだが、この三ヶ月に一回の例会、早稲田大学国際会議場を会場として借りるようになってから、何故か例会の日というと雨。それも、かなり本降りの雨のこと が多いのである。

 普通に母の部屋で朝食、それから部屋でぼんやりとミクシィなどに書き込む。雨の日の怠惰を楽しむ。楽しんではいけない身分なのではあるが。しかし、雨の日は行動も思考も全てがとまる。前にも書いたが、本当、バルゴンの血でも受け継いでいるの ではあるまいか。早朝の激しい雨は9時ころにはおさまる。

 10時15分に家を出る。K子はこのマンションの理事会なので、今日は遅れていくと言う。出がけに横目で、ロビーのソファでみんな熱心に自転車置き場問題などを語っているのを眺めて、タクシーで早稲田へ。車中、ちょっとしたカン違いに気がつく。つまり、K子が“今日は理事会だから”というのを朝食時にぼんやり聞いて、それを“と学会の理事会”と思いこみ(と学会なら運営委員会とか実行委員会で理事会ではないはずなのに)、では11時に会場入りだな(以前そういうのがあったので)と、思って10時15分に家を出たのであった。で、一方ではK子が言う理事会はここのマンションの理事会のことだ、ということも理解していたのである。思考能力がまるで働いていない証拠である。誰もいないガランとした二階会議室(一階は『世界子ども会議』とかいう会の準備でふさがっていた)前で、自分の愚かさに苦笑しつつ皆の来るのを待つ。IPPANさん、それから軍事ビデオものマニアのIさんがやが て来て、少し話す。

 やがてここの会場をとってくれている研究室の人が来て、設備配置等いろいろやってくれる。が、聞いてみたら、ここの会議室、ビデオとDVDはあるが、CD、テープ等の、いわゆる“音モノ”の再生機はないのだそうな。あちゃあ。本日のメインが実は音ネタだったのである。一昨日、念のために“会場でCD再生は出来ますか”とと学会MLに質問を出し、“CD再生機はありません”という回答が来たので、てっきり“じゃアテープ再生機はあるんだろう”と、勝手に判断してしまった。言うまでもなく、CD再生機がない、という回答はテープ再生機がある、という事実を意味しない。A子ちゃんとB子ちゃんのうち、A子ちゃんは可愛くありません、という命題が必ずしもB子ちゃんが可愛いことを意味しないのと同じ。音モノ再生に関しては何の設備もない、という可能性を考慮しなくてはいけなかったのだが、以前の白山、さらに駒場と、どちらの会場も音の方の再生機はディフォルトであったので、つい、勝手にあるものと思いこんでしまった。今回の発表はそれに加えて、一個がすでに既出のものをうっかり紹介してしまうというポカもやり、やはり雨の日はしょうがない、と小室等みたいなことを思う。こないだ電撃婚約発表したI田さん、それから結婚をもう間際に控えたS井さんなどの発表に、ひえださんたちのヒューヒューの声。

 某氏が発表で、飲尿療法を賛美している。私は飲尿に関しては基本的に信じない。理由のひとつに、腎臓というのは案外精巧なシステムを持つ臓器であって、単に血液を濾過して尿をつくるだけでなく、その中から生体にとって必要な成分を再吸収して再び血液に戻す働きもしていることがあるで。腎臓は一分間に100ミリリットルというかなり多量の尿(原尿)を製造しているが、その中で排泄に回されるのはほんの1ミリリットルに過ぎない。残り99ミリリットルはまた体内に戻され、再利用されているのだ。いわば99パーセントのものをリサイクルしているわけで、残り1パーセントの中に、そんな、万病に効いて人間を健康にするというほど有効な成分が含ま れているとは、ちょっと考えられない。

 しかも、オシッコは確かに排出されたときは無菌であるが、それは健康体が排出した尿であることが条件。飲尿でもしてみようか、というような気になるときというのは体の具合がどこか悪いときが多く、風邪などで腎臓の働きが悪い状態では、尿の中にきちんと濾過されなかった毒素や雑菌が混じっている可能性が大いにある。まして性行為による性病などに感染の可能性がある場合は、尿にそれらの菌が混じる。気軽に飲んだ尿が原因で淋菌感染によるのどの腫れや痛みを引き起こしたり、さらに尿のついた指で目をこすったりすることによる淋菌性結膜炎など(これは失明の危険もある)の可能性も、オシッコを飲む(顔に近づける)という行為の場合高くなるわけである。いや、そんなことより、これまで知り合いに飲尿療法の実践者も何人もいたのであるが、まず、それらの人々というのは健康的に見えなかった。オシッコを飲みはじめてから風邪を引かなくなった、とそういう人たちは称するが、飲まずに風邪をほとんどひかない人もいくらもいるし、オシッコ飲んで風邪ひかなくなるよりは、飲まずに風邪ひいた方がいいんじゃないか(野口晴哉のように風邪こそ健康のモト、と説 く人もいるくらいだし)と思うんである。

 本日ゲスト参加の熊本大学SF研OBの皆さんにご挨拶。熊本から上京された人もいるというのでかえって恐縮。同人誌のトンデモ本大賞レポートはぜひ、来年もお願いしたい。また、こないだアニドウ上映会で会ったばかりのKさん、K田さんとも挨拶。先日はどうもどうも失礼を、と。昼は例によってI矢くんの持ち込んだビアシンケンとパン、それにお茶。今日は発表者が少なかったため、時間内にきっちり収まって終了。じんひろしさんから、北極でじんさんご自身が撮影した、ペンギンの夫婦ゲ ンカのビデオをお借りした。

 そのまま田町まで移動。恒例となった中華料理『大連』での二次会だが、二次会番長のIPPANさんと、次回は浅草の遠州屋(以前下見に行ったことがある)にしてみようか、と話す。何にせよ、座敷席でないとこれだけ(50人以上)の参加はもう無理ではないか。あと、今日の会員の顔ぶれ見て、かつ、某大物著名人女史がと学会に入会を希望しているという話も聞き、ひとつ関連企画を考えついた。最近、本当にモノカキというよりはプロデューサー化しているな、と自分でも思う。

 今日は、いつも本会が終わるとすぐ新幹線で帰阪されてしまう山本会長が、出版社との打ち合わせを兼ねた上京であったため二次会に出席してくれた。私の司会で、会長に乾杯の音頭をとってもらって二次会開始。熊本大OBのみなさんと話し、また座を変えて開田さん、会長たちとも話す。このあいだの『わた鬼』の話をすると、会長
「あれ、ウチの嫁さんもハマってるんですよー!」
 と。いろんなところに中毒患者がいるなあ。

 料理は毎度ほぼ同じメニューだが、今日はいつものようにお父さんが出てこない。留守らしい。料理人も違うのか、同じメニューだがやや、味付けが違う。ギョーザは何故か焼きギョウザが三回繰り返して出た。ラストのチャーハンと焼きそばは、あれはいつもはお父さんのオゴリだったので、今日はナシ。ちょうどまあ、量的によかったかも。酒マニアのIさんが、イチジクのウォッカという凄いものを皆についで回っ ていた。

 九時半過ぎ、お開き。また司会で立って、“ええ……植木不等式氏はまだべろべろになってませんか。正気ですか(ここでの第一回二次会のとき、中国のパイチュウを飲み過ぎてわけがわからなくなった)。では、〆のご挨拶をお願いします、と頼む。
「それではみなさま、ケロロ軍曹にならってジークと学会で万歳三唱」
 とか、腹をポンポコ叩きながら言うので、皆神さん“やっぱり酔ってんじゃないのか”と。みんなごきげんで万歳三唱して解散。いつもはJRだが、今日は赤羽橋から大江戸線・丸の内線を乗り継ごうと歩く。洋風の、すさまじく金のかかった感じの建物が大通りに面してあり、なんだこれは、と寄ってよく見たら慶応大学図書館の門であった。さすが金のある大学は違う。地下鉄車内でこのあいだ札幌に出張した皆神さんと、あちらの共通の知り合いの話をしたり。最後は新宿から開田夫妻とタクシーで乗り合って帰宅。さほどくたびれなかったのは、いつもの会に比べると狂乱の度合いが少なかったためか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa