裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

金曜日

ムニエール症候群

 全身に白い粉をふいて焼かれるような感じに襲われるんです。朝5時起きでネットでメールなど。昨日、うわの空の土田真巳さんに“27日は行きます”と連絡しておいたのだが、“来ないでいいです”とつれないお返事。別に嫌われたわけではなく、要するにその日に行く予定だったのは、キャストで日野裕子の神田淡路が出る予定であったため。淡路は旭丘弥生、島優子、日野裕子の三人のトリプルキャストで、この日野淡路を見れば、他のダブキャス、トリキャスを含め、全キャスト制覇という偉業(?)を成し遂げることが出来るという、オタク的なコンプリート志向による興味であった。ところが、土田さんによれば、その日のキャストは変更になり、すでに淡路役は終了したはずの島さんが務めるとのこと。日野淡路の回はこれで終了であり、全キャスト制覇の夢はあえなく潰えてしまった。あああああ。食玩シリーズをあと一個で全種揃えられる、という寸前に販売終了になってしまったような心持ち。島さんが 出ると聞いてガッカリしたのはうわの空歴は長いがこれが初めて。

 入浴して7時半朝食、コーンとキャベツ。9時15分のバスで通勤。朝とは思えぬ薄暗い曇り空。小学5年生くらいの、バトントワラーの女の子が練習に行くのか、二人乗り込んできた。やっているスポーツなどで体型というのはそれぞれ変わってくるが、顔立ちまで変わるのか、あるいはああいう顔立ちの子がバトントワラーになろうと思うのか、二人とも卵形で髪の生え際がおそろしく後退した、グレイタイプ宇宙人みたいな頭蓋骨の形。一人の子は小学生とは思えぬ切れ長の目に通った鼻筋で、エジ プトの壁画みたいな顔だった。

 旭堂南湖さんから先日のうわの空の舞台の感想、面白かったとのこと。よかった。なんとか年内に、南湖さんを呼んで、会をこちらでやりたいものだと思う。ミステリ朗読と競演できないだろうか。それにしても、才能ある知人・友人に囲まれているというのはいろいろと企画をふくらませられて楽しい。最近どうもこういう企画立案中毒で躁状態になっている。快楽亭が、“会、やりすぎ”と言われるほどに落語会を企 画している気持ちがわかるような気がする。

 昼飯はニギリメシ一個と発酵茶一本。昨日のOさんから電話、某企画の話、制作会社と打ち合わせの日取り検討。あれからすぐ、例の方とは連絡とってくれた模様。テキパキことが運ぶのはありがたい。結果がどうあれ、イラつかずにすむだけでも。日 能研の原稿、校正をFAXする。

 3時、時間割。村崎百郎さんと『社会派くんがゆく!』対談。『華氏911』号外でアクセス数がまたまた凄まじいことになっている、とK田くん嬉しそう。あちらこちらでやたら釣られリンクもあるとのこと。村崎さんと“大漁旗でも掲げるか”と。ただし対談自体は、今回は夏バテ気味か、二人ともあまり毒舌冴えず。テープ起こし 原稿でかなり補正せねばなるまい。

 明日の湯浅監督追悼会用の文章をロフトの斉藤さんにメール。もっとも、ほとんど日記に書いたもののコピーだが。斉藤さんが、“湯浅監督が一切そういうことを固辞して亡くなったのに、偲ぶ会を行うというのは故人の遺志を踏みにじる行為だとネットで言われて悩んでしまいました”と前に電話で言っていた。言うやつは必ずいる。言わせておけばよろしい。監督は旧大映最末期に、関根恵子主演の『成熟』を、監督組合のストライキ中に撮影し、妨害されたことがある。組合長の増村保造監督にお願いに行き、“仲間を裏切る行為なんだぞ、それは。それでもどうしても撮りたいと言うのか”と言われ、湯浅監督はこの大先輩に、“はい、どうしても撮りたいんです”と答えた。増村監督は苦笑して、“どうしても撮りたいんなら、仕方ないだろう”とみんなを説得してくれたとか。われわれも、空の彼方の湯浅監督に、
「すいません、監督の言葉には逆らいますが、どうしても監督を送りたいんです」
 と言えば、それでいいのである。

 8時、自宅に帰る。食事会、と学会からはS井、H川のお二人と、藤井ひまわりくん、それにナンビョーのnajaさん。モーオタのH川さんに、“『悲しみにてやんでい』ではモー娘。のナンバーを三味線の小春さんが弾くシーンがあるからゼヒ、観に行くように”と強く勧める。鶏一羽の丸ごとポトフに、鰻ロール、ソーセージロール、シーフードサラダなど。10時半にはもう酒で体の言うことがきかなくなるのは 夏バテなのか、ダイエットのせいか。

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