裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

金曜日

アフラマズダじゃアーリマンか

 ツァラトゥストラさん、いずこへ?(ツァラトゥストラ歳三十の時、その郷里と郷里の湖とを去りて山に入れり)。深夜から朝方にかけ、ずっと左足がこむらがえりを起こして苦しむ。このところ起こってなかったんだが。それやこれやで寝坊、目が覚めたらすでに7時20分、急いで入浴。35分の朝食に間に合う。黒豆、トマト、二十世紀、冷ポタなど。麻黄附子のせいか、寝不足ではあるが体調かなりよし。

 8時15分、原爆投下の時刻に家を出て、25分のバスで通勤。車中、日記タイトルのダジャレがスイスイと出てきて、うむ、われ復調せりと確信。変なところではかるものだ。うわの空の舞台で元気をもらったかな。メールチェックしたら、あちこちから滞っていた連絡類が入っていて、何か体調の問題というより、私という人間の周囲のリズムみたいなものがやっと本調子になったんじゃないか、と思えるほど。人生そんなものか。ちょうど鶴岡から電話あって、仕事で歯車がカミ合ってないような状態がここしばらく続いている、というので、いや、こういうときは“そんなことはよくある、よくある”と寝転がって待つことだ、と教える。これで三日前くらいに電話があったら、“ホントだよねえ、なんでこううまくいかないのかねえ”と師弟でグチ りあうところだったかもしれない。

 大阪でのトーク&サイン会も、扶桑社Yくんから連絡あって無事決定。正式な発表は後ほどするが、23日(祝)夕方、大阪堂島のジュンク堂本店で開田裕治さんゲストで行うことになりそう。あと、朗読ライブの件で松竹サービスネットワークIさんから打ち合わせ日程関連のメール。トークライブの件でロフト斉藤さんにも電話。朗読ライブ、トークライブ、トーク&サイン会と、メールで書くときに混乱。……ところで、私の知り合いのサイトウさんはまずほとんどが“斎藤さん”なのだが、ロフトの彼女は“斉藤さん”であることに今日、気がついた。あと、『漢字天国』の担当のSさんもサイトウさんだが、彼女は“齋藤さん”なのである。その『漢字天国』、ゲ ラをチェックして戻しFAX。

 早めに弁当使う。お菜はシャケ、卵焼き、漬け物というベイシックなもの。なんだかんだ原稿書いて、連絡とって、とするうち2時半になる。家を出て、神保町へ。古書会館、我楽苦多会。入り口で坪内祐三さんに会う。性関係文献がまとめて出ていたが、まとめ買いは今回は避ける。それでも聞いたことのないカストリ系雑誌とか、あと明治期の講談本とかで、2万5000円ほどいった。そのあと、カスミ書房さんに ちょっと寄って、コミケばなし。今年は暑そうですねえ、と。

 4時帰宅、たまっていた企画モノ原稿など書く。河出Sくんから本のことで電話。こっちもやらねばいけないのであった。ゆまに書房からは『黄金孔雀』の見本刷りが届く。さて、これがどう動くかで今後の『カラサワ・コレクション』の行く末も決まるのであるが。売れて欲しいなあ。言語学の本を資料のために読むが、こういう本は 鬱状態の方がよく読める。元気になるとどうにも読んでいてもどかしい。

 あと上の読書とからんで芸能スキャンダル本も読む。言語学と芸能スキャンダル史がひとつの原稿の資料になるというのも私くらいか。それにしても、スキャンダルは本当に芸能人の肥やしだなと調べれば調べるほど思う。芸能の起源は降りてきた神様が憑依した巫女の舞いであり、すなわち狂気である。狂気なくして芸はなく、人間性の規を超えたところに芸の真髄はある。世間における“いい人”になることを、芸能 人は一番恐れるべきなのである。

 8時帰宅。今日はパイデザ夫人のめぐみさんが京都から取り寄せてくれた京野菜の会。赤いお盆の上に乗せてみんなに見せる。京都の野菜はさすが、絵になる。お客はQPハニー氏、S山さん、ナンビョー鈴木くん、昨日会ったばかりのみなみさん。青トマト刺身、揚げ茄子おろし。茄子がさすが京野菜の甘味。それとトマトのチーズ&ニンニク漬け乗せ。このニンニク醤油漬けは私が作ったニンニク醤油に漬かっていたもの。日本酒のつまみに結構。醤油の方は豚のスペアリブを漬けて焼く。酒はQPさんが持参したラテ・スタウトという、乳糖を入れたスタウトに、ギネスの缶、それと金成さんからのお中元の生日本酒。〆に、京野菜のきざんだものを、少し酒粕を溶いた醤油にさっと漬け、それを炊きたてのご飯の上にかけて食べる野菜丼。これが蒸し暑い夏にきわめて結構。さわやかで酒粕の濃厚さもあり、いくらでも食べられる。K子は就職活動中のみなみさんに、“朝日新聞社を受けてごらん”とか“フィンランドの会社がいいからノキアにしなさい”などと無責任なことを言っている。デザートの小玉スイカまで平らげて、11時半すぎ、鈴木くんにK子が使わない炊飯器をあげてお開き。シャワー浴びて寝る。体調、復したとはいえ暑くてバテることに変わりはない。来年は夏の仕事はもっと計画的にやろう、と、毎年思うだけ思っているな。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa