14日
土曜日
豚足の壁を超える
すごい勢いで食べております! 朝、詩的なようなワイセツなような夢。少女が自分の子宮の中で芽生えさえた木の種を林の中に植えているというもの。乙女の子宮ではぐくまれた聖なる樹、というイメージは大変ファンタジックなのだが、当の少女が股ぐらに手を突っ込んで苗を取り出すシーンで台無し。7時半朝食、焼きカボチャと キャベツ、缶詰のアスパラガスのポタージュ。
8時15分のバス、盆でしかも土曜で道がガラ空き、バス待ち客もほとんど居ず、バスがあまりに早く進みすぎるので、所々で時間調節。去年のお盆はあまりこういうゴーストタウン的な状態にはならず、まあ里帰りなんて習慣も廃れたのかな、と思っていたのだが、今年は飛行機も新幹線も凄まじい混み様だったらしい。やはり、景気 がやや回復したためであろうか、あるいは暑い夏であったためか?
昨日のうわの空に来ていただいた私の日記読者の方から、“芝居にはどうしても苦手意識があったのですが、うわの空を観てそんなものは吹き飛びました。芝居とは、こんなに面白いものだったのですね”という賛辞をいただく。これからこの人はうわの空の追っかけになるという。日記でさんざん脅迫したかいがあった、と秘かに嬉しく思う。普通の演劇に対し、苦手意識を持っている人ほど、うわの空はハマるんじゃなかろうか。逆に、ちょいとした小劇団のマニア、を標榜しているような人は拒否反応を起こすかもしれない。拒否反応を起こすからと言ってその人がモノをわかっていないとは思わない。うわの空はムチャクチャに面白いし、他の小劇団の持つクサミは希薄なところだが、そのクサミを愛する人も世の中にはいるだろうし、若い生意気ざかりの頃に初めて出会ったら、やはり“もう少し高踏的な内容でないと”などと思ったことだろうから。しかし、戻りガツオではないが、いろんなものを見回って、心に脂が乗ったあたりで見ると、ここの芝居は本当にしみじみ、肩の力が抜けて観られていい。
昨日のパンフレットのツチダマさん・画の村木座長と私の顔を並べて、ロフトプラスワン用のチラシを作る。コミケ撒き用。それと、昨日松竹のIさんがいくつか選んでくれた朗読ライブ会場のうち、島さんのスケジュールが合うものが決定したので、それも日時と場所のみ、チラシの末尾に載せておく。11月13(土)、14(日) の両日、中野区新井のスタジオtwlにて。
腰が、というより左側の尻が痛む。筋肉痛らしいが、運動らしい運動を最近していないのでちょっと原因がわからない。ギックリでもあるまい、と思うが、用心のためかがむときなどはユックリユックリと行う。昼に外出し、久しぶりに兆楽で昼食、ただしあっさりとつけめん。土曜にかかわらずギッシリで、見ると近くの路上で水道関 係工事をやっている人たち。相席になった人が、ここの厨房の水回りを見て、
「あそこの配置がいまいちよくないね」
「あそこのダクト、水もれしているけど、××タイプの不良かな」
などと、つい専門家の目で見てしまっているのが可笑しい。
タントンマッサージで45分、揉んでもらう。帰宅してFRIDAY原稿。7時少し過ぎに家を出て、有楽町電気ビル一階の『ローズ&クラウン』。開田さんの打ち上げ、と学会の壮行会、それと神戸からの金成由美さんの歓迎会。行くついでにSFマガジン用の図版ブツを近くのコンビニで出そうと思い、周囲を探すが、さすがと言っていいのか、有楽町近辺ではなかなかコンビニなるものを発見できない。
すでに金成さんと、本日参加した開田さんたちのグループは全員揃い、明日参加のと学会関係、裏モノ関係のメンバーが三々五々、到着している状況。ここは予約の7時ジャストにならないとビールも出ないので、みんなジレているようだ。やっとビー ルが回り、私が一応乾杯の挨拶。
「えー、今日開田さんのところでも折り込んでいただきましたうわの空・藤志郎一座の女優のおぐりゆかさんが、コミケ初日に出かけてみたそうで、その感想が“なんでみなさん、同じ格好なんですかねー”というものでした。聞いたときには、そんなことはないよ、と返事しておいたのですが、今日、おそろいの皆さんをこうやって見渡しますと、みなさん、ほぼ同じ格好をなさっておいでです。つくづくオタクの業の濃さを感じてしまいました。……明日、また同じ格好の皆さんに会いに行きましょう。 乾杯」
この店を予約してくれたのは予約番長のIPPANさんだが、なかなかこういう上品ぽい店にしては食べられる料理を出す(やはり場所なりのお値段だが)。追加注文がきくのも結構。IPPANさんと『バジリスクばなし』をしたり、藤倉さんに熊本大SF研OBの作った同人誌(こないだのと学会東京大会と、その前週祭までの、おそろしく詳細で良質なレポートが載っている)を見せて貰ったりして盛り上がっていると、裏モノ常連のG氏がやってきて、あの、もう一人追加ダメですか、と例のニコニコした表情で言う。一応、当日参加が認められていないのだが、ちょうど一名、ドタキャンがあったとIPPANさん言うので、いいけど誰ですと言うと、これがこの3月、と学会に“貴重な独身女性(しかもメガネっ娘)会員”という鳴り物入りで、 稗田さん、志水さん等の大推薦を受け入会した、Iさん。
「実はボクたち、結婚しますんで」
一瞬、ふざけているのかと思ったが、どうやらマジっぽい。知り合い同志が結婚するというのも、会社勤めならぬフリーの身の上では珍しいことに属する上に、その組み合わせが、どんな馬券師でも見逃していたろう複勝大穴。どひゃーっと驚き、急いで立ち上がって“えー、急遽、この場をG氏とIさんの婚約発表会場に変更させていただきます”と宣言。開田あやさんが“ひえーっ”と奇声を上げ、亭主の開田さんはすぐさまデジカメを手に、“婚約指輪を掲げてくださーい!”“お二人のツーショットお願いしまーす!”と取材カメラマン化する。しかも、Gさんが婚約指輪を掲げると、そっとIさんがそれに手を添える、ツーショットの時には、頭一つ半身長差があるカップルなので、Iさんがひょい、と小首を傾げてGさんの胸のあたりに凭れかかる、という感じで、さすがの開田さんも撮影しながらアテられて呆れかえっていた。
「カラサワさん、見ましたか、GさんのTシャツに“虎視眈々”って書いてあります よ、やはりIさんを前々から狙ってたんですよ」
と。
K子も大はしゃぎしていたが、と学会の独身会員、裏モノの独身メンバーどもの、 やっかみもまたスゴイものがあり、
「志水さんは通信教育で魔導師の資格を持っているんだから呪い殺されるぞ」
などと騒ぐ。中でも裏モノのGHOSTさんはやたら激高状態で、
「コイツ糖尿病ですよ、来月には目に来て脳に来て手足腐って死ぬんですよ、なんでそんなのと結婚するんですか」
などと、間断なく鬼畜なツッコミを入れ続けて、全員大笑い。9時、てんやわんやのうちに解散、地下鉄で新中野まで。偶然新宿までG&Iのカップルと一緒で、ナレソメだのなんだのをいろいろ聞く。と、いうか、聞かされる。いいトシした男がここまで徹底してノロケるのはどう考えてもバカなのだが、しかしこのバカになり、バカをやり、バカなことを話す行為が心底楽しいんだろうなあ、幸せなんだろうなあ、ウン、と 微笑ましく思う。
新中野駅で降りてマンションに入る路地で、旅行から帰ったばかりらしい(まだバンからお父さんが荷物を降ろしていた)一家の、小学生の男の子が懐中電灯を照らして、そこらを走り回っていた。K子が“またカメが逃げたのよ”とささやく。旅行中にに逃げたミドリガメを探して夜中じゅう走り回る、これもまた思い出の夏休みの夜かもしれない。K子、パソコンを立ち上げてすぐさまと学会MLにG&Iの結婚のことをUP。