裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

水曜日

イマジン怒る

 子供たちの涙で埴輪の顔がジョン・レノンに。朝4時起き。最近早起きだが、これはすがすがしく目覚めるというものでなく、仕方なく起きてしまう、という老人特有の早起きである。ダイエットしてると酒に弱くなるので、飲むとすぐ寝てしまう、という理由もある。ネットしてまた寝て、入浴して朝食、7時半。クロマメとコーン。

 新聞の天気予報では東京地方快晴なのに、外はドンヨリと厚い雲。バスに乗っていたら窓にボツ、ボツと大粒の雨。運転席で業務放送が“六本木近辺大雨のため、路上がすべりやすくなっておりますので各位運転に注意してください……”というような放送あり。しかし、渋谷(放送センター前)に到着したときにはあがっており、その 後も大雨になることはなし。

 日記急いでつけ、原稿にかかる。メール、いくつか。こないだ、名古屋在住のファンの人から“食料品を送りました”というメールと共に、名古屋オリジナルのインスタント食品などを送ってもらった中に、サボテンが入っていた。大根みたいに一本、 工具かなにかのボール紙の箱に詰められて。K子と
「ははあ、食用サボテンなんだねえ」
「どうやって料理するのかしら」
「炒めるのかねえ、やはり」
 とか話し、とりあえず送ってくれたYさんに料理法を尋ねるメールを打ったら、返事に曰く、あれは食用ではなく観賞用で、土に刺しておけばすぐ根がつく種類なので 鉢もつけずそのまま送ったのだそうな。食わないでよかった。

 昼飯はオニギリ(高菜の)。2時、時間割にて打ち合わせ。東武ホテルで白夜書房Mさんと落ち合い、そのまま時間割へ。時間割で待っていたミリオンYさんに、図版資料の本を手渡し、打ち合わせはMさんと。雑学コミックの監修とコラム執筆の話。このコミックを描いているのが、旭堂南湖さんのチラシイラストをいつも描いている 藤本和也さん。これまた西手新九郎。世間はどうしてこう狭いのか。

 電話いろいろ。デマ交換いろいろ。『トンデモ本男の世界』打ち上げの件もあり。原稿書きのあいまに『ひょっこりひょうたん島 ヒットソングコレクション』聞くが聞かなければよかった。いや、もう涙なしでは聞けない懐かしソングのてんこ盛りなのだが、それだけに、『みんなのうた』の時と同じで、“なんでこれが残ってないんだ!”というもどかしさで、変な話、地団駄を踏みたくなる。グッバイジョーのテーマ(左とん平)はあるが、それを追っかけるパット・ロール(三遊亭歌奴)やシャッキンバード(市村俊幸)のテーマは入ってないし、海賊たちのテーマは『お化けこないでちょうだいな』と『プカプカ波にさらわれて』だけで『ナゾナゾソング』や『トドダド』が入ってない。カンカン王国編でサンチョ・パンサ(関敬六)の『故郷遠く離れて』はあるが、ドン・キホーテ(谷幹一)のテーマはなし。ポストリアのところでは柳沢眞一の歌うポストリア国歌がないじゃないか! ……いや、なまじちょっとだけ音源が残っているからこんなじれったい気持ちになるんだ、いっそ全部消えてくれてしまった方がスッキリする、などとヤケになるくらい、残っている曲が素晴らし いのである。

 9時半、タクシーで下北沢、『すし好』でK子と母と。カツオ刺身で黒ビール飲んで、あとは鯛、煮はま、コハダなど握ってもらう。後ろの座敷席で、“馬場が……”“シンが”“ダスティ・ローデスの……”といった名が飛び交う、レトロプロレスばなししている一巻きあり。世界はそういうもので構成されており、自分がその世界を生きたということは、そういう“名前の羅列”によって語られ、記憶される。“こうあるべき”世界しか語れぬ人間の不幸を思う。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa