10日
水曜日
オリゴサーティーン
悪玉菌スナイパー。朝、6時に目が覚めて、ベッドで『半七捕物帖』など再読。いや再々々々読くらいか。7時半に食堂(これから母の部屋のリビングはこう呼び、ウチの方のリビングと区別する)に行ったら、母は時間をカン違いしていたらしく、まだ風呂を使っていた。まだ互いの朝の時間の予定が飲み込めてない。まあ、すぐ慣れ るであろう。
食事を作る間、こちらの風呂を使わせてもらう。あがってすぐ朝食、クルミパンとサラダ、タンカンにリンゴ。弁当を貰い、支度して出たのが、8時半。半のバスを逃したかと思った(昨日書き留めておいた)が、いい具合に遅れたらしく32分くらいに来たのに乗れた。20分かけて新宿西口ターミナルへ。そのターミナルの同じ並びの乗り場で、渋谷駅行きに乗り換える。ダイヤがちょうど入れ違いになっているらしく、すでに出かかるところを、走って追いかけたらギリギリで乗れた。15分で放送センター前。そこから歩いて5分で仕事場に到着、9時。総通勤時間40分。しかしこれはバスの連絡が今日は偶然うまくいったからであり、待ち時間があった場合1時 間かかるかも知れぬ。
日記つけ、多々あるメールをチェック。数が多いのは、そろそろと学会東京大会のスタッフ募集などをMLで行っているためでもあるが、また、スパムぽいメールも最近また増えてきた。どんどん削除。快楽亭からちゃんこツアーの件で電話。
書き下ろし原稿用のメモと資料への付箋をバリバリ。あと、次回と学会例会での発表ブツも整理。何か、これまでの住居兼用より、同じ場所でも“仕事場”として通勤していると、はかどるような気分になるのは面白い。あくまで“気分”だが。
昨日の日記につけ落としていたが、新宿駅までタクシーに乗ったら、運転手さんに“毎度ありがとうございます”と言われた。つい先日、同じ場所で新中野まで乗ったと言われる。“エッ、いつでした?”と訊いたら、“なんでもお酒を持って乗ってこられた”という。6日のことか。時間も違うし、その運転手さんも別にこの辺中心に 流しているわけではないとのこと。なかなかの偶然である。
12時半、弁当を使う。今日は昨日のフライの残りを詰めただけの簡単なものであるが、ご飯に鰹節と海苔が敷き詰めてある。これに醤油が絶妙に染みて、うまい。不思議なことに、牛丼やラーメンを外で食べたときより腹持ちがいい。おこわを食べたような感じである。ジム・ハイマン『アメリカン・アドバタイジング 40s』(タシュケン)をパラパラめくっていたら、1941年度の映画『帰ってきたトッパー』(TOPPER RETURNS)のポスターがあった。これはケーリー・グラント主演の映画『天国漫歩』(TOPPER 37)でタイトル・ロールの頑固親父トッパー氏を演じたローランド・ヤングが人気があったので、彼の主演でスピンアウトされて制作されたコメディ・シリーズの第三作だが、今回は幽霊屋敷で起こった殺人事件の解決にトッパー氏が乗り出すというストーリィで、ポスターでは彼がシャーロック・ホームズよろしくディアストーカー帽をかぶり、パイプを銜えている。これを見て、思わずウケてしまった。……これでウケる人物が日本に何人いるかしらないが、ローランド・ヤングといえば以前、この日記で映画『そして誰もいなくなった』の間抜けな探偵役を演じていたと紹介した人物。そして、彼はその以前にジョン・バリモア演のホームズ映画でワトソンを演じていたから、こういう役は持ち役でお手の物なのだ、と書いた。この映画でのホームズのパロディ(実際に映画の中でこんな格好をしたかどうかは不明だが)は、あきらかにワトソン役者のヤングに合わせてのお遊びだったろう。『そして誰も……』の間抜けな探偵のイメージは、ワトソンより、このトッパーのイメージを受けてのキャスティングかも(『そして誰も……』は45年制作)、と思ったりもして、しばらくの間、いろいろ想像をめぐらせて楽しむ。
2時、時間割でこのあいだアニドウ上映会で会ったばかりの朝日新聞社Oさん。ゴジラ引退宣言についてインタビュー受ける。いろいろとヨタを話す。もっと会社とスタッフとの確執とかというウチワ話を期待されたのかも知れないが、カルスタ的な分析で、なぜゴジラがいま、ウケないかという話をする。自分的には満足な内容。Oさん的にはさて、どうか。どこまで紙面に載るかわからないが、基本はいつもこの日記に書いているようなことである(掲載されたらそれを敷衍した自説をちょっと書き込 む予定)。
終わって東急ハンズに寄り、ウォーキング・クローゼット内に取り付けるフックの類などを買う。あと、髭剃り。どっちで風呂に入ってもいいように、母の部屋の方にも置いておくやつ。帰宅してまた原稿。札幌の豪貴にお薬注文。単行本は出ません、と言い切られたハズのワールドフォトプレス社から、本を出します、という話が突然来た。出ないというから、いくつか他社に持ちかけていたものもあるのだが。第一、すでに単行本三冊くらいの分量がたまっている。分冊で出すのか、より抜きで行くのかも決めないといけない。とりあえず打ち合わせをすることに。なをきにもその件で 電話。
いろいろと雑用でメールなどしているうちに、7時半を過ぎてしまう。急いで新宿までタクシー、そこから丸の内線。新中野駅近くの書店に初めて立ち寄ってみる。渋谷だと、一番近くの書店でパルコブックセンターかブックファーストなので、こういう小規模書店(それでもいわゆる町の本屋さんよりは広い)というのは実にひさしぶ りである。岩波文庫がちゃんと置いてあるのに感心。
8時10分に帰宅。今日もわれわれだけ。K子のリクエストにより鍋。と、いっても一切材料を買わず、冷蔵庫にあるものだけで。鶏、レタス、油揚げと葛切だけの、いたってシンプルな鍋と、ニンジンと桜エビの掻き揚げ。ビール少しと、マオタイ酒二杯。食い終わってもまだ9時半である。寝室に引き上げるが、まだこちらの部屋にはテレビもビデオも買っておらず、本も(出来るだけこちらには本は持ってこないことに決めているので)半七捕物帖と蕪村句集くらいしかない。蕪村句集読みながら、ベッドに寝転がるうちにグーと寝てしまう。