6日
土曜日
らんぷ亭ダンプティ
王様の牛と家来がみんな病気になっても/らんぷ亭ダンプティから牛丼をなくすことは出来なかった。朝、7時30分起床。やはりやや、二日酔い気味。朝食はソバ粉焼き。ネギがこっちの台所にすでにないのだが、昨日、母の台所から少し貰っておいたのである。すでにこちらの居間はK子が荷造りしたダンボール箱でぎっしり。その荷造りの過程で、本の山に埋もれていた、かなり大事な資料本が出てきたのが、この 引っ越しの余得。
アスペクト『社会派くんがゆく! 死闘編』、ネット書店ではサブカル系でなく、人文系で売れているらしい。アマゾンでは在庫完売だそうな。書泉ブックマートでは相変わらず、『蛇にピアス』『蹴りたい背中』の隣だという。どういう売り方なのだ ろうか? まあ、有り難いことは有り難い。
1時、家を出て半蔵門線で神保町。古書会館紙魚の会。今日は手持ちの現金も少ないのであまり買うまい、と思っていたが、特価で江戸随筆関係の揃いがあったので、それを買ってしまい、財布の中がほとんど空っぽになる。他に杉山吉良『裸婦の寫し方』(昭和25年、大泉書店)。クラシカルなヌード写真だが、今のヌードにない心 のトキメキを感じるのは何故か。
古書センター『ボンデイ』でチキンカレー食って昼食。金がなくなったので他には一切寄らずに帰宅。しばらく横になって休む。旧知のN氏よりひさしぶりに電話。昨日SF大賞受賞式で会ったというA氏の噂ばなし。なにか、会話の最中に突如わめき出したり、ちょっと人が意に染まぬことを言うと露骨にソッポを向いてしまったり、酔っぱらっていたとはいえ精神状態がかなり不安定のように見えた由。また、A氏の評論本に関して、N氏が“そこらを語るなら○○という作品を見ておいた方がいいですよ”と言ったら、“見る必要はない、批評は二次情報だけで十分に出来る”とノタマッた由。N氏はA氏にはかなり目をかけていたし、いろいろ協力もしていたので、彼の評論者としての自殺に等しいこの言にはショックを受けて、私に電話してきたらしい。私にとってはA氏がまっとうな人物でないことはずっと前から承知のことであるし、彼が別にオカシクなろうとすさもうとどうでもいいのだが、ちょうど、A氏の著作を太田出版の『トンデモ本の世界S』で取り上げ、その原稿に手を入れているところだったので、西手新九郎に驚く。
しばらくN氏の話につきあう。それから、前々から植木不等式氏などを通じてN氏にお願いしている某件につき、こちらからも再度お願いする。最初は家族に病人がいるし、とか言って渋っていたが、重ねて頼むと、“ま、確かに見回すと、ワタシくらいしか出来る者はいないよなあ”と、まんざらでもなさそうな感触だったので、まず これでヨシと心の内でほくそ笑む。
明後日は引っ越しなので、締切にはまだ数日余裕はあるが、『Memo男の部屋』の原稿を書き上げてしまう。K子にメールしようとしたが、サーバーがどうも不具合らしく、送れず。ちょっとイラつく。仕方なく諦めて、タクシーで新中野へ。母が例によって料理の仕込み中。今日は談之助さん夫妻がお客。電話で呼びつけたらしい。呼ばれる方も災難である。彼らしく珍しいビールをいくつも買ってきてくれた。ベル ギーの『アダムとイブ』ビール、なんてのもある。
なにしろ相手が談之助だから、話もはずむし、酒もすすむ。快楽亭のネパール旅行の話から人の好き嫌い(せっかく買ってきた『アダムとイブ』ビールに、談之助の敵薬たるコリアンダーが入っていた)の話、と学会東京大会の前夜寄席の企画の話などなど。供された料理はカツオのカルパッチョに手製のアスピック、カブと豚肉のポトフ、焼き鳥などなど。最後は昔夜食によく作ってもらった唐沢家風の焼きそば。大変にうまいが、毎晩、こうご馳走づくめでは胃がたまらないのではないか。たまには、 鰺の干物に味噌汁が欲しい気もしてきた。