裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

金曜日

真珠入れる者はきたれ

 ただいまイボつけ割引中、組員の方優遇! 朝8時半起床。朝食は特製ダイエットサラダ。ジャガイモを糸のような繊切りにしてひと晩水につけ、デンプンを抜いたもの。これにキュウリやニンジンの繊切りを合わせ、ゴマのノンオイルドレッシングをかけて食べる。それと半熟卵。エッグスタンドに立てた卵に、新兵器の卵割りを用いて殻の上を切る。鉄製のカップに板バネ式のハンマーが付随している器具で、カップ部分を卵の上にかぶせて、そのカップのてっぺんをハンマーでカン、と叩く。するとあら不思議や、カップの縁の線にあわせ、きれいに卵の殻が切断されるのである(別にカップの縁が刃物になっているというわけでもない)。母のパソコンで検索してみたら、これはエッグハンマータッチという製品であった。くわしく知りたい方は
www.tigercrown.co.jp/amenity/catalog/pdf/2275.pdf
 でご覧を。

 元旦二日と好天であったが、昼過ぎから曇り始めてきた。東京は大雪らしい。曇りの分、寒気はおだやかっぽい。昨日は出かけるとき、靴をはいたら“ヒャッ”と驚いたほど冷えきっていた。NHKの新春コンサートのウィーンフィルを聞きながら原稿用のメモつけなどする。世間から隔離されたような気分である。ネットをのぞくが天下太平という感じ。

 昼は中国製の緑色の乾麺を使ったスープめん。ザーサイとネギのみじん切り、蒸し鶏などが入る。食ってK子はまた買い物(昨日のスクラップブックがまだ足りない)に出る。私は残って二階の本・ビデオの整理などをする。『日記読んでますメール』そろそろ〆切。今のところダジャレタイトルでは“半島にあった怖い話”がダントツの人気のようである。この日記タイトルも今月半ばでもう始めて3年目。果たしてどこまで続くか。

 3時過ぎに、母の従姉妹が来る。唐沢系の親戚ではないので私はあまり知らない。養護学校の教師をしているという人。食事をしながら雑談。ほとんどが親戚の話、昔話だが、教育者だけにいろいろ面白い話も聞ける。言葉使いの話から“最近の若い子は「猫にえさをあげる」「花に水をあげる」という”という話になり、そこからペット論議になる。優しさと親しみの現れとしての“あげる”という言葉使いは一見しては問題ないように思えるが、そこから人間と動物の境界線の線引きが出来なくなり、それが進むと動物を擬人化して、自分の勝手な感情をものの言えない動物に投影させて安易な自己満足にひたるようになる。この傾向をペットばかりでなく人間に適用させると、思い込みでストーカーになったり、向こうがこちらの愛に応えないとすぐに“裏切られた!”とキレる溺愛と憎悪のシーソー的関係になったりする、というような話。あれだけ動物を愛したコンラート・ローレンツが、動物と人間を同一視することを徹底していましめた理由を、もう少し考えるべきであろう。その従姉妹さんは、以前ペット霊園なるところに迷い込み、山のように備えられたオモチャやメッセージの絵馬やお菓子やの山に、何か異様なものを感じてゾッとした経験があるそうな。

 話がいろいろはずんで、食事はあっと言う間に終わる(ホタテのクレープ包みグラタン、フレッシュフォアグラ乗せステーキ)が、その後アイスクリームでコーヒーを飲みながらいろいろ話す。従姉妹さんの家庭は81歳のお祖母さんがおり、その上にさらに103歳のひいお祖母さん(お祖母さんの死んだ亭主の母親)がいて、この二人が極めて元気、103歳の方も椅子に上がって棚の上のものをとったりしているという。81でいまだ嫁、という立場のお祖母さんはやはりいろいろストレスがたまるらしく、孫とカラオケなどに行ってウサをはらしてくるという。想像するだに凄い。また、娘たちがこのお祖母さんのファンで、“好きに使って”と200万円をポイとお小遣いであげたりする(決して大金持ちというような家ではない)のだという。どうもこちらの常識が狂うような感覚に陥る。

 10時過ぎ、そろそろお暇を、というので外を見ると豪雪。彼女は自動車で来ている(家は石狩)ので、大丈夫かと心配になるが、慣れているようで平気々々と帰っていく。石狩だと一時間かかるか二時間かかるか、などと思っていたが、何のことはない三十分ほどで無事帰宅の電話。母が持たせた黒豆の煮物が大変おいしかった、と、その81媼からメッセージが。無事ついたという電話の前にもう黒豆を食べると言うのも変わった家ねえ、と母が言っていた。

 また酒など飲みながら三人で雑談。直系の孫がいないというのもなんだから、俊一はどこかに女を作らないかい、などと母が言う。日本酒のつまみに中華風チマキなどをつつきつつ。12時、ユダヤ関係の文書など読みながら就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa