裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

水曜日

ミニスカストーリー

 これっきりですか(スカートの丈が)。朝7時15分、起床。寝覚めだけはいい男である。朝食、シーフードサラダ、二十世紀。新聞は小泉首相とブッシュ大統領の会談の記事で、サウジもタリバンと絶縁、日本もイージス艦をすでに出航させた模様。いよいよビンラディン狩りに入るかとイサマしい。あちこちの文化人知識人とかのサイトを回ると、何かこう言わないと文化人のコケンにかかわる、という感じで、平和を唱え、アメリカ支援に反対しているところが多い。中には報復反対表明のチェーンメールに加わった、と発表してそのメールを公開し、それがインチキメールなのではないかと指摘されてあわててひっこめる、というようなドタバタぶりを示していたところもあった。笑ってしまうのは、その後のそこでの御当人の文章で、日本を含め世界中が戦争にアツくなりすぎている、少しクールになるべきである、などと興奮して語っていることだ。戦争賛成と騒ぐばかりがアツいのではない、戦争反対々々と声高 に言い立てる行動だって十分にヒートしているんじゃないのか?

 その騒ぎの陰でひっそりと中岡俊哉氏の死亡記事。74歳。作家、とのみの記載であり、心霊研究家としての肩書には触れていなかった。初代桃中軒雲右衛門の孫、ということにも当然ながら触れておらず(もっとも雲右衛門は中岡氏の生まれる十年前に四十三歳で死んでいる)。心霊研究家としては必ずしも評判のいい人ではなく、売らんかなでコメントをコロコロ変えたりして、とかくの批判があったのは確かだが、とはいえ彼の執筆になる膨大な量のオバケ関係記事、なかんずく心霊写真という現象をマスコミの夏の定番記事として定着させた実績がなければ、私やと学会の連中が心霊などに興味を持つことも、ひょっとしてなかったかもしれない。オカルトを大衆文化として根付かせた功績は大いに認めねばならないだろう。ちなみにホームページは ここ。http://www.nakaoka-toshiya.com/booklist_vtr.html

 母から電話。ゆうべ、私の出演した『トゥナイト2』を見たとのこと。まったく、テレビというのはみんな、見る。本を何十冊出すより、一回テレビに出た方が知名度は高まる。一般人にモノカキだなどと言ってもふうん、てなもんであるが、テレビに出た、と言うと、いきなり尊敬されたりする。本なんてものは誰にでも出せる、と世 間は考えているのだろう。親からしてこうである。

 Web現代、推敲してメール。1時、家を出て渋谷駅に行き、銀行などに寄り雑用をすませ、江戸一で回転寿司。サーモン、エンガワ等。フカヒレというのをココロミてみるが、ちょっとアンモニアくさい。タクシーで芝パークスタジオ、『コンテンツファンド』録り。今日はこのパークスタジオ馬鹿混みで、西山さんと相部屋になる。もっとも、私・西山・鈴木のブレーン三人はいつも待合いロビーで雑談しており、控室はほとんど使わない。今回は鈴木さん休みでトイザらスの服部さん。

 会議室も埋まっており、そのロビーでビデオ見ながら打ち合わせ。今回もユニークな個性のクリエイターがそろっているが、やや小粒という感じかなという風。FABのTさんに訊いたら、この番組、×××かと思ったらまだ××××××、ただししばらくは××××中心になるという。岡田さんの到着遅れで少し押す。ここでもみんな に“トゥナイト見ましたよ”と言われる。

 一回目はブラックなイラストの遠藤伸明さん、チクビキャラという大変なものを考案してきた黒田基介さん、黒い野生動物をモチーフにしたデザイナーの吉田静佳さんの三人。遠藤さんのセンス、私は好きだしテクニックもいいものを持っていると思うのだが、反応は悪し。やはり“商品化”ということになると、バイヤーはブラックなものは嫌う傾向にある。黒田さんは電車の中でよく痴漢(男の)に会うそうだ。ノンケ好みのゲイに寄ってこられるタイプかもしれない。おとなしそうで、声とかたてないだろうとふまれるのである。これも、もっといろんなところが飛びつくかと思ったのであるが。西山さんと、“最近、バイヤーさんシブいですねえ”と話す。不景気で すかねえ。

 休息時間の弁当が極めて質素になった。予算削られたか、とみんなで話す。後半、入った内藤陽子ちゃんに、司会の勝村サンがやたら突っ込む。陽子ちゃんピリピリしていて詳しくは話してくれなかったが、金曜のフライデーに何か載るらしい。凄い。フライデーにスクープされた女優と一緒の番組に出たぞ、と自慢ができる。出場クリエイターは音の出る人形のきたゆきさん、11年間のサラリーマン生活(ゲーム関連業界)をやめて36歳でフリーイラストレーターを目指す伊藤広之さん、九州から上京して自分の絵を売って生活しているというはげみほさん。きたさんはまあ順当にいくだろうが、伊藤さんは笑われてオワリ、はげみほさんはキツいなあ、というイメージだったが、今回は三人とも、案外評価され、全員に黄色ランプがついた。まあ、シブいことには変わりないが。それにしても、最近、ブレーン側の評価とバイヤー側の 評価がまた分かれ始めてきている。

 サクサク進み、なんと7時にアガった。第一回にくらべると5時間の短縮である。今日は西山さんもまた事務所に帰るというので、K子と携帯で打ち合わせし、くりくりで待ち合わせしよう、とタクシーを参宮橋に向けたら、途中で電話あり、絵里さんが骨折(犬に飛びつかれた)したので今日は休み、ということ。急遽、虎の子に行き先を変更してもらう。青山近辺を通るとき、年配の運転手さん、“ここらへんの洋品店さんはあまり客も入ってないようですが、中の商品は買い取りなんですかね?”というので、ここらの店はみんなメーカーの直営店であり、自分のところのステイタスのために青山に店を構えているだけだから、ここでは売れなくてもいいのだと説明して、永年の疑問が氷解しました、と感謝される。それにしても、“洋品店”はよかった。もっと古くなると“唐物屋”であるが、さすがにそう呼ぶ世代はもう生き残って おるまい。

 虎の子、いつもの定席(つまり、一番奥の席)。会社名を例によっていろいろ考えるが、『東京文化研究所』(略称東文研)で取りあえず、申請することにする。あとはまた替え歌の話、人のうわさばなし。酔鯨と黒龍でいい気持。K子が後頭部に頭痛がするというのでちょっと心配。

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