8日
土曜日
おフォークロアの味
この煮物についてはちょっと面白い話があってね。朝4時半ころ、足(特に左足)のふくらはぎあたりがひどい筋肉痛になって目が覚める。別にゆうべ歩き回ったわけではないのに、どうしたのか? 痛み止めをのむと一日ボーッとしてしまうので、居間でコンドロイチン硫酸錠とアリナミンをのむ。いわゆるアリコン療法というやつだが、驚いたことに、のんで三十分もしないうちに痛みが消えた。何たるドラスティックな効果。そのまま8時半まで就寝。ただし、原因のみはいまだわからず。朝食、イチジクとヨーグルト、豆のスープ。
原稿書き。サンマークの最後のをアゲてメール。台風が近付いてきているらしく、体がもうセメントで固められた感じ。階段を上がり降りするたびに内股がひきつる。体調不良によるストレスで全身の筋肉が萎縮しているようである。マッサージを久しぶりに予約する。昼は参宮橋の道楽でノリラーメン。
帰ってまた原稿。やらねばならぬことは山積なのに、体が動かないつらさよ。それでもなんとか一本(7枚弱)、アゲる。二ツ、仕事をやっただけで全身綿のようにクタクタとなる。ベッドに横になって、昨日引っ張りだした『滑稽新聞』を読む。やはり雑学系の記事が私にはオモシロイ。雌雄同体の生物とか鉄砲魚についてなどの科学的読物もあり、かなりバラエティに富んだ総合雑誌であったのだ。
これは詐欺告発記事であるが、延原某という男が高尾山に人工降雨機を設置して、五万ボルトの電気を空中に放電せしめて雨を降らせると称して実験を行っていたという記事がある。そこは明治のことで発電機もモーターでなく、七八人の人足を雇ってかわるがわるウィンサルスト式の発電機四台を人力で回させていたらしい。延原はフロックコートにパナマ帽という姿で、見学者にこの降雨の理論をもっともらしく説明していたらしいが、記者はハッキリ“こんな製電機四台で五万ボルトもの電気を作り得るはずがない”と詐欺を見破っている。明治版ドクター中松といったところか。
5時半、新宿へ出て、サウナに入る。汗をしぼった後、マッサージ。今日は女性のマッサージ師で、力は強くないかわりに、指が細いから指圧がかなり効く。ここに通い出してから回復した尾てい骨の上あたりのハレ(左右の足の長さが違うので体がゆがみ、ここがいつも腫れたようになっている)も復活していた。マッサージは習慣になっているだけで、リラックスする以外そんなに効果がないものと思っていたが、やはり私の体には通っていた方がいいようである。休息室のテレビでCNNを見ていたら、ラリー・キングのインタビュー番組のゲストにシド・シーザーが出ていた。日本では『おかしなおかしなおかしな世界』とか『サイレント・ムービー』くらいしか顔が知られていないが、あちらでは一種のカリスマ的なコメディアンである。スマートでいかにも頭のよさそうな老人になっていた。ジョーク連発で同時通訳の女性が惨澹 たる有り様。
そこからタクシーで下北沢。『虎の子』でK子と。鯛のカルパッチョが、切り身を厚く切ってドレッシングをかけ、山椒のツクダニを添えている。これが絶品。ローストビーフはいっぺん蒸して脂を落としているそうで、お菓子みたい。今日は珍しく暇になり、萩原夫妻と飲みながらしばらくダベる。久しぶりに入った黒龍が口になずんでスイスイと入り、ちょっとやり過ぎの感。