裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

金曜日

雪の降るマッチョ

 寒中ボディビルダー大会。朝7時半起床。朝食、ソーセージに胚芽パン。例の女児誘拐、ヒロインが欲しかったとかいうのは言い訳で、実は金目当てではなかったかという疑いが出てきたそうな。うーん、ロリと言った方が罪が軽くなるのか? 一方、いしだ壱成はLSD所持疑惑で再逮捕。報道で彼のマンションから“LSD一枚”が発見されたと書いてあった(読売)のはペーパーLSDのことだろうが、LSDは形状がどうであれ“一錠、二錠”で数える(一回使用分を一錠とする)のが決まりではなかったっけ。

 K子からヤイノと催促のあるサンマーク、今日じゅうにカタをつける気で取りかかるが、最初の宮武外骨からやたらつっかかる。どこをどう取り上げればいいか、そのネタが多すぎるからでもあるが、調べていくだに興味深い。反骨精神ばかりを喧伝されているおもむきがあるが、私はこの人は基本的に雑学オタクである、と思う。明治時代の文献が関東大震災で多く焼失したことに衝撃を受け、当時の新聞雑誌類を蒐集しだし、その量があまりに膨大になったため、東京中央図書館に引き取ってもらおうとしたが、当時の中央図書館長は、これを断った。外骨の集めた資料が雑本、雑紙中心で価値がないと判断したことと、その蒐集したものの中に猥褻にあたるものも多くあったからだという(結局東大法学部がこれを引き取り、外骨を主任として雇い入れた)。反権力雑誌として有名な『滑稽新聞』も、実際に目を通してみれば、記事の多くが隠語や流行語の収集記事、それに情死や泥棒の研究などといった雑知識コラムであることがわかる。さまざまな雑誌や新聞から拾ってきた珍記事などの紹介もあり、今読んで面白いのはむしろそちらの方ではないのか。雑学や、中心を外れたデータにこそ時代を読むカギがある、という彼の考えが私のしゅっちゅう主張していることとほとんど同じであることに、非常に力づけられるものを感じる。

 2時、とりあえず一本アゲてメール。それから駅の方へ出て、『江戸一』で昼食。エンガワ、サーモン、ビントロなど。エンガワの甘味が抜群で、四皿食べる。そこから井の頭線で西永福に出て、佐々木歯科。途中で駅の手洗いに行き、歯を磨く。今日は奥歯の型どり。先生、ここの日記を読んでいるそうで、“もう少しフィクションを入れて、私をオソロシゲな悪人に書いてください”などと言う。こういう人も珍しいのではないか。それにしても歯医者さんというところ、行くたびに、何か新式の道具のようなものが出てくる。

 治療終わり、渋谷から六本木に出て買い物。銀行に立ち寄り、それから明治屋で買い物をして帰宅。すぐサンマークの残りにかかる。K子から電話で、8時半にまさ吉とのこと。馬力をアゲて残り一本を完成させ、メール。タクシーに乗って荒木町まで到着して、ちょうど8時半。井上くんと飲む。彼も夏じゅう働きづめで、いささかバテたような顔。後ろの席に座った中年男性四人が、砕石現場ででも働いているのか、というようなバカでかい声でわめくように話し、手を打って笑う。こちらの話が聞こえないほどの大声。これほど声がでかい人たちというのも初めて見た。井上くんキレそうになり、あわててまさ吉のお母さんが注意に入った。

 飲んでいたら、手塚さんがゴキゲンで来る。いままで、青林工藝舎の入っているビルの大家さんと、井上くんのところのAちゃん借りてカラオケだったそうな。まだ歌い足りないというので、みんなでセイフーの上のカラオケボックスに繰り出す。手塚さんムード歌謡、K子が70年代アイドル、井上くんが怨歌系フォーク中心。私はズビズバーから三味線ブギまで、デタラメな選曲。なんと1時まで歌った。

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