5日
水曜日
誰か故郷をコノハザル
東南アジア全域に生息。朝6時までぐっすり。一度目を覚ましてまた眠り、7時半起き。朝食、フランクフルトソーセージに黒パン一切。例の少女誘拐犯、取調べに対し“アニメの主人公になりたかった。ヒロインが欲しかった”と述べているそうである。これでまたオタクへの風当たりが強くなるかというと、そうでもない気がする。この事件の犯人たちには宮崎勤に見られたような、世間の常識ではかれない類の“不気味さ”がない。単なる馬鹿である。少なくとも新聞はこういう連中にはあまり反応しない。雑誌はいろいろ騒ぐやもしれぬ。犯人のロリマンガサイトについて、アエラで斎藤環氏が“オタクの風上にも置けない”と言っていたが、よきオタクに犯罪者はいない、などとオタクを特化して語るとやっぱり無理が出てくるのではないか。オタクにだって犯罪に走るものはいくらもいる。そんな連中のやったことでオタクみんなが連体責任を感じる必要はどこにもない。しかも、実際に犯罪に走ったとして、犯罪遂行に必要な世間知を、オタクは持っていないのがほとんどなのである。それはこの連中がいい証明になったではないか。
気圧高く空は快晴。昨日とは打ってかわった好調ぶりで、午前中にフィギュア王原稿10枚半、イッキ書き。それから昼食前に日経DIの書評原稿1枚半を書き上げてしまう。まるで別人の如しである。Aくんから電話。やっとトラブル、解決したようである。何はともあれ、ホッとする。昼は1時ジャストに冷凍のウドンを温め、オデンだしと昨日のカレーの残りでカレーうどんにして一杯、食べる。
食べ終わってすぐ、時間割に向かい、SFマガジンS編集長と打ち合わせ。『妄想通』、あと一回で終わりと思っていたら、今月と来月と、あと二回あると聞いてあわてる。まあ、何とかなるだろう。間を置かず次の新連載、ヘンな科学、ヘンな新技術がテーマのエッセイと決定。ネタを最初に数回分はためておくべし。その他雑談いろいろ。ハリー・ポッターシリーズはなぜ売れてるのかとか、深堀骨氏の単行本を何とか出せないかとかいうこととか。ちょっと“エッセイばかりでなく、たまには小説も書かせてくれませんか”とフッたら、“じゃあ、11月〆切で一本いいですか”と、いきなりフリ返されて、ちょっと驚く。
帰宅して2時ちょっと過ぎ。そこらから空模様怪しくなり、また体調乱れはじめてクラクラしてくる。自分の汗のニオイがミルクのように甘ったるく感じられ、まるで内部から腐敗しているが如くである。すぐ、横になって目をつぶり、ひたすらオソレ入っている。最近はこういう体調をやり過ごす術をマスターした。4時過ぎになり、やっと回復。週刊読書人用マンガコラム一本。安田弘之『紺野さんと遊ぼう』。そう言えば私はこの人の『ショムニ』をまだ一回も読んでいない。
6時15分過ぎ、植木不等式氏から電話、来宅。NHK『いきいきホットライン』に生出演だった由。テーマは“数学教育は必要か”で、そこにサラリーマン評論家が出演依頼されたのは、名前が不等式だから、というのが何ともな人選。“笑うかどにはフラクタル”などカマしてきたとか。ハローミュージックAくん来て、展示について打ち合わせ。虫食い、ゲテ食写真集など何冊か資料に貸す。
K子と待ち合わせ、植木氏と三人、道玄坂の中華レストラン『山珍海味』。なかなか見つからず、あったと思ったら店名が『台湾市場』に変わっている。ここはアリ料理や蛇料理などを食べさせる店、というので植木氏が探してきた店なのだが、味は残念ながらそれほどでもなし。アリ入り卵焼きはゴマみたいなアリがプチプチ口の中でつぶれるだけで味はないし、白蛇の空揚げは干物みたい。このスープがあると聞くと坊さんも垣根を飛び越して食べにくるという“仏跳牆”があった(イッパイ2990円!)ので頼むが、うーん、高級であることはわかるが、という味。そもそも、ナマコ、貝柱、干蝦、干アワビ、干茸、フカヒレ、鶏のハツなど、こうもいろんなものを煮込んで、それらの味が完全に融合して絶妙なものになるか、というと、首をかしげざるを得ない。いたずらに複雑で味わいにくくなるだけではないか? これは要するに中華料理の真髄みたいなもののアピールのため、素材の多彩さを誇るためのみに考案された料理ではないかと思う。内田百鬼園が自分の故郷岡山の“祭り寿司”を評して、“こんなに具が多くてうまくなるわけもないのだが、とにかく贅沢な食い物を作るという目的だけのために、ありとあらゆる具をそこに交ぜ込む”と言っていたが、似たようなコンセプトの料理ではないかと思う。店員さんたち(台湾人)がかわるがわる“これ、おいしいでしょー!”と言ってくるので、一応オイシイと答えておくがまあ、これ以上何かとる気にもならず、そこを出る。
それから、道玄坂小路並びの雑居ビル中のベトナム料理店、『ミス・サイゴン』に行く。店名はイカニモだが、ここはおいしかった。満席なのでカウンターに三人で座る。ベトナムの“333(バーバーバー)ビール”。ライスペーパーの生春巻、豚耳とキクラゲのパテ、それとウナギのココナツミルク煮。食いながら四方山八方山十六方山話。話し足りずにスタバに行き、なんだかんだ話す。ただし内容はほとんど覚えておらず。12時過ぎ、帰宅。今日は徹頭徹尾ビールだけ飲んでいたので、変な酔い 方。