裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

日曜日

あそこが何か痒いカンジダ。

 それですよ、まさに。朝7時半起き。さわやかな秋空。朝食、ピタパンに明治屋で買ったスモークト・エッグをはさんで。これがおいしかった(昨日の日記に書き忘れたが、昼は六本木に出て書評用の本を買い、ついでになんとかいうソバ屋の昼定食で海鮮丼を食べた)。日記をつけていたらパソコンがフリーズ、半日分の記述が消えてしまい、クサる。

 母から電話。宗教がらみでちょっとイッてるお客さんがいて、それが母をいたく気に入り、大戦末期に皇室が日本再興のための資金として海外に隠した金が、いろいろあってやっと日本に帰ることになり、来月あたりから毎月20億円(毎月、ですよ)が自分のところに入ってくる、と言っているという(なんでその人のもとに入ってくるのかは知らない)。で、母にそのうち2億円をくれるんだそうだ。今、日本銀行の地下金庫に眠っているその金は、三人の人間が持っているカギがそろわねば開かず、その三人が一同に会することを、右翼や敵対する宗教団体がなんとか阻止しようと動いているものでなかなか難しかったのだとやら。そのお客は“カラサワさん、だけどね、そんな大金が入ったからといって、世の為人の為に使おうなどとしちゃダメですよ。お金というのは自分のために使うもので、それがやがてめぐりめぐって世の為になるんです”などと真理(?)みたいなことを言っているという。豪貴は“母さん、2億入ったらスシ御馳走してくれ”と言っているらしいが、私もそうなったら前もって遺産分けしてもらって、ひとつ高い古本でも買いましょうか。

 こういう話を口にする人間なんてのはマンガの中にしかいないと思うかもしれないが、バブルの頃、芸能プロダクションなどにいた経験から言うと、そこらにゴロゴロという感じで存在するものである。まったくあの時分はしょっちゅう聞いたもんである。伯父がスペインから絵を買いつけるという妄想話にとらわれたときは、ある晩電話がかかってきて、“俊ちゃん、出資元が見つかったんだが、それがわけありの金なもんで、銀行に入れられないから、家に預からなくちゃいけないらしいんだ。17億という金は俺の部屋におさまるものかな?”と、マジ声で訊かれたものだし、そのすぐ後には、例の山上というオカルトゴロに、K会という宗教団体の運営資金を預かっているのをアナタにお預けする、これはアナタを信頼するからで、私が首を縦にふれば、明日にでもアナタの口座に振り込まれる、ただし問題は小額では動かせないことで、最低でも10億になる、などと面と向かって言われたものだ。もちろんのこと、伯父の場合もY上の場合も、金は1円たりと入ってこなかった。と、いうか、ソンナ話を信じる方がバカだと思うのだが、人間というのは、精神のバランスが崩れると、こういう話をフと間に受けてしまう動物らしいのである。

 昼はパルコで本を買い、東武ホテルの中華料理屋でランチ(牛肉の醤油炒め)。あまりうまくなかったが、デザートの杏仁豆腐は濃厚でおいしかった。原稿チェック二ツほど。3時、家を出て後楽園。今日はトゥナイト2の取材が入る。展示物をさらに二個ほど追加する。これでかなり形が整った。ひさしぶりの北野誠氏と会場を回り、B級グッズの解説、それから奇食屋台で試食。

 終わって会場に帰るとあやさん、談之助師匠到着。今日はドームでSMAPのコンサートもあり、後楽園はえらい人出。会場もかなりのにぎわいで、子供たちが展示物にむらがってヨロコんでいる。開田さんのゴジラの絵に親の方が喜んで、子供に“ホラ、ゴジラだよ、凄いねえ、裏の方も見てみよう!”と裏の方に回るとあやさんのヌードの絵などが飾ってあって“あ、まあ、こっちはホラ、あれだから向こう行こう”とあわてる図あり。

 長い出待ちが控室であり、やっと7時、開演。ビデオの調子が悪くて少しノビる。今日は照明などを変更(要するに暗くしないでと頼んだだけ)、出し物も視覚中心にしたので成功。立ち見が出て、談之助さんのスーパーヒーロー、大ウケであった。後のトークでも、あやさんとミッキーマウスの悪口など言ったら、後楽園のスタッフが爆笑していた。客席、と学会の奥平くんやSくん、裏モノのGさんなど。

 終わって参宮橋のくりくりでK子と合流しようと総武線で新宿。タクシーでそこから、というときにK子から携帯で、くりくりは今日、祝日なので休み、とのこと。ではそこの近くの韓国料理屋にしようと、そこで待ち合わせるがそこも全部休み、なら幡ヶ谷のチャイナハウスで、と電話するがやはり祝日で早じまい。アホらしくもまた新宿へ戻り、紅房子へ。東口にこっちが出たあたりでGさんから“いま参宮橋につきました……”という電話。悪いが彼にも引っ返して新宿へ来てもらう。もっとも、紅房子(談話室滝沢の角を右にまがってすぐ)は味に関しては安心。こないだFKJ氏も、アニドウの連中を連れていって(私の日記でここらにあると知っていたので)好評を博したそうである。雑談、例により例のごとし。疲れた体に紹興酒が心地よく染みる。体というより、どうにかトラッシュポップ、無惨な結果にはならずに済みそうというココロの方に安堵感と共に染みていったのかもしれない。料理の最後に杏仁豆腐が出る。昼と連チャンになったが、これも違った濃厚さでおいしかった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa