27日
木曜日
カッシーニはかかわりのねえこってござんす
アンゴルモアとか言われても。朝7時起き。昨日惣菜屋で買ったエビカツをパンにはさんで朝食。コーヒー、缶開けたてで粉の香りが高く、うまい。薬局新聞、今日は案外気楽に一本。学陽書房から電話。今回の『創』とのトラブルは結局、三方一両損という感じの結末であった。釈然とせぬ部分があるが、まあ人生、あまり釈然としてばかりはいられない。ほどよくいい加減で行こう。
K子が私を着付けの練習台にしているので、昨日から午前中は和服で過ごしてる。昔はガリガリで、浴衣すら形が決まらない男だったのだが、最近は腹が出てきたので帯がピタリと決まるのが情けない。しかし、帯をピシッと締めると、出腹がそれなりに映えるのが着物のよさだろう。“男はここだい!”と帯の上を叩いてみせると、相手が“胃弱かい?”とまぬけに応える、二代目春風亭柳橋のよく使っていたクスグリがなんとなく好きだったが、あれを思い出す。
K子の弁当作り。牛肉のバタ焼き。埼玉の古書店Sから注文した本、届く。8割の当選で十万ちょっと。少女小説、猟奇犯罪記録集、芸能史ものなどなどなど。すぐに銀行へ行き、金降ろして郵便局で代金払い込む。こういうもの、タイミング逃すとつい、払うのが遅れてしまう。金出ていくなあ、と思いつつ帰ったら早川書房から電話あり、『とても変なまんが』増刷決定、まずめでたし。これでまた古本が買えます。・・・・・・いや、それよりあの本、“僕”と“私”表記の混在だとか、元原稿フロッピー消失による不備がいろいろあるので、それ全部直さなければならんと思っていた。書店並びから2週間、早めの増刷で手直しが出来るのは結構。
銀行、連休前で混んでいた。ついでに駅前の焼肉屋で味噌タンランチ。ジァンジァンはすでに取り壊し作業が始まっていた。パルコのハンズ通りの壁にイエロー・モンキーの新譜広告が永井豪・画でデカく描かれているが、このイラストのインパクトにはまいった。永井豪をキッチュととらえるセンスはたぶん、若い人のものだろう。すでに二十年くらい前から、永井豪の絵はゆがみはじめ、最近はいしかわじゅんが“代筆させている”と発言して問題になったくらいヒドいものになっている、というのがマンガ読みの常識だったが、それはわれわれの世代が、昔の抜群の画力を誇っていたころの永井豪をなまじ知っているからであった。すでに最近の若い世代にとっては、永井豪は初めて見たときから、“ヘンな絵を描くひと”であったのだろう。そして、例えば私が好美のぼるや池川伸治にひッくりかえったように、永井豪の持つキッチュさを、オモシロイもの、イエモン(本人たちはこの表記嫌がるらしい)の持っている毒を表現し得るもの、として起用するだけのセンスを、この広告代理店の担当者は所持していたのだろう。われわれの基準だと、永井豪チックな絵は女の子が完全に昆虫に変形してしまってからの方なのだが、こっちでなく、あの、バランスの妙にゆがんだ変形前の方をメインにしたセンスがなによりすばらしい。
6時半、時間割で海拓舎。『B級学都市編』、そろそろウリを考える段階に入る。連休ちゅう芝崎くんに来て構成手伝ってもらい、6日に打ち合わせ。出て、K子と8時待合せなので時間つぶしにパルコブックセンターの洋書ロゴス。タトゥー関係の写真集をながめていたら、『THE JAPANESE TATOO』という彫りものの写真集があった。中に、腹に蛇の胴を彫り、そのままペニスにつながって、亀頭部分に蛇の顔が彫られている写真がある。無修正でこれを見たのは初めてで、大喜びしてさっそく購入。しかしこれで大喜びする自分も。
8時、K子と豆腐料理屋『二合目』に入ろうとしたら満員で断られる。仕方なく姉妹店のおでん屋『一合目』。新しい板長さんが、東京医大のK先生に兄弟ではないかと思うくらいウリフタツ。最近、誰かのそっくりさんというのが妙に気にかかるし、またよく出会う。この奇妙な感覚を筆に表せられれば、ドッペルゲンガー的世界観の幻想小説が書けるかもしれない。イナダ刺身、竹の子ワカメ煮、おでん、最後に焼きおにぎりのスープ茶漬けというやつ。このメニューを近頃よく見かける。誰が流行らせたのかね。日本酒冷やで二ハイ。さすがに三日連続日本酒はこたえる。