裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

金曜日

カヒミ・カリィあれと言いたまいければ

 タイトルに意味はない。朝6時半起き。ゆうべ、昼寝もだいぶしたし眠れないといけないので、と十数年前に出してもらった睡眠薬を薬箱から引っ張り出してのんで寝たが、おかげで朝までグッスリ。朝食、またヘリングサンド、バナナとイチゴ。日記つけて、8時半に東京医大病院。K先生、気になっているのかイの一番に診察してくれて、傷の状態を見、外科部のえらい先生をよんできて見せる。“ああ、よくなったね、心配してたんだけどね”心配されるような状態だったのか。あと一度、来月末にレントゲンとって、今回の骨折治療はオーラス。
「あのビスはこないだ原稿のネタに使わせていただきました」
「唐沢さんなら使うだろうと思ってました」
 使わいでか。

 帰りのタクシーの運転手が、顔といい話し方といい、左談次そっくり。“バブルのときなんかぁは・いっつも遠距離のお客さぁまなんかの名前がっ、無線で入りますてえと・あたくしどもは無線への応答のことを・「吠える」って申しますがぁ、もう、みんな即座に吠えまくりましてぇ、きゃんきゃんきゃんきゃん、スピッツか・てぇくらいのもンでありましてぇ・・・・・・”骨格と話し方には相関性があるのか?

 マンション廊下、壁のペンキ塗り替えで今までのを全部はがし、廃ビルの様相。各出版社から電話。学陽書房、大和書房、メディアワークス。進んでいるものあり進んでないものあり。鶴岡から電話。長谷邦夫氏から掲示板に書き込みがあり、おったまげたとか。私もおったまげた。12時、別口の用事で新宿へ行き、アルタ裏のレストランアカシアでロールキャベツシチューとオイル焼き。思えば二十数年前、初めてこのロールキャベツシチュー定食を食べたとき、奇妙な食い物だなあ! と驚いた記憶がある。それ以来、数カ月に一度はこれを食べ続けてきているが、このウドン粉を溶いたような、おかったるい味のシチューがなぜ、クセになるのか。純洋風の作りの店内でなぜロールキャベツにどんぶり飯なのか。オイル焼きだって、豚ロースの焼いたのに醤油とマヨネーズという下品な味つけで、どうして食後、しゃれたものを食ったような気になるのか。どうにも不思議で仕方がない。帰りに、通りの中古ビデオ屋でモンドもの数本。15000円。

 講談社から立川志加吾『風とマンダラ』が届く。先月、中野の楽屋でこの初版部数を聞いてぶったまげた。以前、講談社の便所虫とウチでは呼んでいる編集のW(渡辺協である)から、“ウチのコミックスは最低でも部数が×万部ですから”とイミなくいばられたことがあったが、その四半分にもいかないぞ。不景気なんだねえ。なんとか売れて、落語会に客を引き込んでもらいたいものである。談之助から(立川流デーか)6月の談之助ブラック二人会にゲスト出演依頼。了解しました。詳細はまた後ほどイベント欄で。

 仕事すすまず体調すぐれず、予定すべて放棄してまたまた新宿へ出、マッサージ&サウナ。右足をリハビリ的にやってもらう。ここでも、“痩せましたねえ”と驚かれる。たった1キロなのに。

 7時半、K子と待ち合わせて新宿高島屋14階の八百善でメシ。八百善てえからどんなにスゴいかと思ったが大したことなし。まあ、一人××円程度のコースだったしな。ただ、最後のご飯、普通こういう懐石コースのご飯というのはメシに香の物、味噌汁くらいで、“焼き物のときの魚がここにあれば!”と思うことが多いが、ここのはカツオの刺身、それも江戸風に溶きカラシ添えでおまんまがいただける。これは結構だった。

 八百善と言えば必然的に思い浮かぶのが蜀山人の“詩は詩仏、書は米庵に狂歌俺、芸者小まんに料理八百善”というやつだが、当時の第一人者を並べた中にさりげなく“俺”と入れているあたり実にいい気分だったろうと思わせる。これをサブカル業界でやってみるとどうか。まああくまでお遊びであるが
「オタ岡田、レトロ串間にカルト俺、マンガ鶴岡料理八百善」
 うーん、本当にいい気分だぞ。もちろん“デリダ俺”でも“ショタは俺”でも、各人自分で好きに入れ替えればOK。官能倶楽部でやると
「フェチ睦月、ギャグは安達に母乳みか、縛り風間であやはコスプレ」
 と学会の得意分野では
「偽史永瀬、メイソン皆神ノス会長、UFO志水にひえだお守り」

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