裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

木曜日

親のシニフィエに会えぬ

 タイトルに意味はない。親が入院しているときにこういうシャレは不謹慎だと言わるかもしれないが、思いついたんだから仕方がない。昔、潮健児さんにショッカー大野が交通事故で脾臓破裂になったらしい、と電話したときの第一声が“それはヒゾウ事態だ”というもので、思わず“うまいっ!”と叫んだものだ。・・・・・・ところで、毎日駄ジャレでタイトルつくるなどというバカをやっているなどというのは私くらいかと思ったら、毎日回文でタイトルつくっている日記サイトがあった。“この事大人気ないならいらない、投げな、と男の子”“痛い反省会、海戦敗退”などはなかなかいい。朝7時半起き。寝坊したのはゆうべのジンマシンのせいと雨のせいか。朝食、ヘリングサンドと果物。

 薬局新聞一本。10分で書ける仕事だが最近、荷になってきた。二○○回まで、という約束で現在一八一回だからあと十九週、てことは残り五カ月辛抱してやらねばならん。1時に内装工事が入るので、早めに昼食を取る。カレーたぬき。昨日から必要あってロッパ昭和日記を頭から読み返しているんだが、朝にハムエッグトーストとミニッツステーキ、昼にフレンチオードブルとポタージュ、メンチボールなどという無茶苦茶な食生活をしている。読むとうまそうだが長生きは出来ない。この本、警句に面白いのが多々あり。楽屋に大金持の息子で大学の先生という人物があらわれ、そのあまりのバカさ加減にあきれて曰く“金持の罰にこんな子が出来る”。自分の食い物の趣味が変わったのを“腹境の変化”。新派の梅島昇のセリフで“金をとろうと思ったら、サラッとしてないで、臭いことをやるんだね”等々。・・・・・・そう言えば潮さんのシャレ癖はロッパ師匠からのものだったな。

 1時、内装工事入る。今日は先月壁を破って穴をブチあけて古い配管をはずした所をブロックでふさぐ工事。作業そのものは三十分ほどで済んだが、後かたづけになかなか来ないので外出も出来ず。一日雨もよいで眠い眠い。なをきから電話。親父のこと、仕事のこと。卯月妙子スゴいねえ、という話になる。“あれが出たあとは実体験マンガというのもちょっと頭打ちにならざるを得ないなあ”“しかし、あの亭主というのは、死んでよかったよね”“家族のためにも、日本のためにもね”。4時半、工事終わり。トイレはブロックがまだムキ出しになっているが、壁板を貼る部分との間にスキ間がある。ここに猫を塗り込めることも出来るな。

 工事のため、壁の前に山積していた切抜き資料を移動させたら、日付不明だが読売新聞の人生相談の記事が出ていた。30歳代の小学校教師からの相談。ある児童がいじめられていたのをやめさせたところ、その子の父親が喜んで、衣類をお礼にと送ってきたのだそうだ。
「私は“当然の行為なので贈答は困る”と断りました。すると、“私の感謝の気持ちがわからないのか。先生のことが好きだ”との手紙が来ました。公務員として困るときっぱり言っても、果物などが届けられ、“息子さんがゲーム機で遊んでいるのを見た”と専用ソフトまで送られてきました。どこで、家族のことまで調べたのか、精神的に参っています(中略)。市の悩みごと相談コーナーでは、“そのままでいいのでは”程度の返事でした。家族に何かされても困るし、どう対応すべきでしょうか」
 まるでスティーヴン・キングのホラーみたいだぞ。

 6時までベッドで読書、と言えば聞こえはいいがほとんど寝ている。寝入りばなは変なイメージがいくつもいくつも頭に浮かび、ハッとして目が覚める。四角い花束をもらうとか、何かそういうシュールなもの。7時、いろいろ出版企画などヒネって時間つぶす。9時に焼鳥屋ママズアンドパパサン。手羽、レバ、ナンコツなど。ジャガバタに自家製シオカラをつけて食べるともう絶品。隣のソバ屋でさらに野沢菜で酒、モリ一枚食って帰る。

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